経済なんでも研究会

激動する経済を斬新な視点で斬るブログ。学生さんの就職準備に最適、若手の営業マンが読めば、周囲の人と差が付きます。

お次は 第3次補正予算 (下)

2020-10-09 07:48:22 | 予算
◇ “二兎”を追うことの危うさ = 政府がいま最も不安視しているのは、このコロナ不況がいつ終わるのか見当が付かないことである。緊急事態宣言を発令した4-6月期のGDPは、年率27.8%も縮小した。規制を解除した7-9月期には、縮小幅が半分以下になるかもしれない。しかし10月以降の回復は遅々として進まず、GDPがコロナ前の水準を取り戻すのには2年もかかりそうだというのが、一般的な見方となっている。

たとえば先日発表された9月の日銀短観。大企業・製造業の業況判断指数はマイナス27で、3か月前より7ポイント改善した。しかし3か月後の予測は、まだマイナス17にとどまっている。景気の回復に時間がかかれば、企業は設備投資や人員を増やさない。だから製造業の受注が減ったり、失業者が増加する。この状態を打破するためには、政府が財政支出を増やして景気を刺激するしかない。

そこで政府はGO TO トラベルに東京都を加えたり、GO TO イベント、GO TO イートなど、立て続けに刺激策を打ち出した。だが予算を使い切ってしまえば、計画は終わりになる。それでは困るので、第3次補正予算を組むことになった。あとは21年度予算につなげ、それでも足りなくなればまた補正予算ということになるだろう。

そこには何としても「日本経済をコロナ前の状態に早く戻したい」という政府の強い願望が表われている。したがって、年内の解散はできない。しかし規制の緩和によって、コロナが再び蔓延する危険性は残る。コロナ終息と経済再生の両立と口で言うのは簡単だが、二兎を追うものが一兎をも得られないリスクはいぜんとして付きまとう。

       ≪8日の日経平均 = 上げ +224.25円≫

       ≪9日の日経平均は? 予想 = 下げ≫

お次は 第3次補正予算 (上)

2020-10-08 08:04:26 | 予算
◇ 景気・コロナ対策を急ぐ菅内閣 = 霞が関では、いま21年度予算案づくりの真っ最中。ところが政府は、その前に20年度の第3次補正予算を作成する方針だ。年末までに編成し、来年1月の通常国会に提出。年度内に執行する。そうしないと、コロナ不況に対する財政支出が途切れてしまう危険があるからだ。しかし、これによって財政支出の規模は異常に膨れ上がり、それを賄うための国債発行額も急増する。

20年度予算の規模は102兆6580億円。ところがコロナの発生で、すでに補正予算を2度にわたって編成した。第1次補正予算は25兆6914億円、第2次補正予算は31兆9114億円と、いずれも巨額。この2回の補正予算で、本予算の半分を超すという異常な状態だ。しかも財源のすべてを国債発行で賄っている。それでも足りずに、第3次補正となるわけだ。

第3次補正の規模は、5-10兆円程度とみられる。4月になれば21年度の本予算が使えるようになるから、この程度で済むだろう。使途は中小企業や生活困窮者への支援が中心になるとみられる。仮に10兆円とすると、20年度は補正予算だけで67兆6000億円。本予算と合わせると170兆円に達する計算になる。

21年度予算の概算要求は、9月30日に締め切った。その総額は105兆円を超えている。しかもコロナの展望が不明なため、金額を明示できなかった項目も多い。したがって、予算の規模は110兆円にのぼるかもしれない。景気が悪いために21年度は税収も振るわないだろう。そこでも国債の発行額は増えることになる。

                              (続きは明日)

       ≪7日の日経平均 = 下げ -10.91円≫

       ≪8日の日経平均は? 予想 = 上げ≫

≪事業規模≫は 政府の誇大広告

2020-06-02 08:10:43 | 予算
◇ 大きいことはいいことなのか = 政府は先週27日の閣議で、20年度の第2次補正予算案を決定した。一般会計の歳出額は31兆9114億円で、補正予算としては最大。また事業規模は117兆1000億円にのぼると発表した。すでに成立した第1次補正予算と合わせると、事業規模の総額は233兆9000億円に達する。GDPの約4割にも当たる金額で、安倍首相は「空前絶後の対策だ」と胸を張った。

では、この「事業規模」というのは何だろう。一般会計の歳出は、政府が国債発行で調達したカネを政策・行政費として使い切る。だから判りやすい。これに財政投融資による資金の支出、民間金融機関の協調融資、さらには納税猶予の想定分などを加えた金額を、事業規模と呼んでいる。法的な定義はなく、歴代の政府が勝手に算出しているのが現状だ。

財政投融資による支出はすべて貸し金だから、いずれ回収される。また民間金融機関による協調融資などは、あくまで想定するだけ。実際に実行されるかどうかは不明だ。こうして不明なものまでブチ込んで、全体を大きく見せようとする。政府の誇大広告である。歴史は古く、1986年には日米交渉で事業規模を持ち出し、アメリカ側から強く批判されたという。

今回のコロナ不況に際して、アメリカやヨーロッパ主要国はみな巨額の対策費を計上した。安倍首相の心のなかには、負けられないという競争心があったのだろう。また対策費を大きく見せた方が、支持率の上昇にもつながると考えたのかもしれない。しかし効果が不確かなものまでカキ集めて全体を大きく見せる手段は、どう考えてもいいとは思えない。

       ≪1日の日経平均 = 上げ +184.50円≫

       ≪2日の日経平均は? 予想 = 上げ≫

増えない 財政支出 : 20年度

2019-12-24 08:11:28 | 予算
◇ 景気を押し上げる力なし = 政府は20日の閣議で、20年度の予算案を最終決定した。一般会計の総額は102兆6580億円で、前年度比1.2%の増加となっている。最大の支出項目は社会保障費で35兆8608億円、前年度比5.1%も増加した。公共事業費は6兆8671億円で、500億円ほど減っている。また消費増税後の景気テコ入れに、1兆7788億円を投入したことが大きな特徴だ。

新聞やテレビは「2年連続で100兆円を突破」とか「過去最大の規模」と報道した。だが、この捉え方には何となく違和感がある。というのも、政府はこのところ必ず年度末に補正予算を編成しているからだ。今回も19年度の補正予算として、3兆1946億円を計上した。この支出は大半が20年度に実施されるから、20年度中の財政支出は両方の合計額と考えるのが正しいだろう。

この観点でみると、財政支出額はすでに18年度に100兆円を突破している。また19年度は合計105兆1000億円だった。政府が組み上げた20年度予算と19年度補正予算の合計額は、105兆8500億円。すると20年度の財政支出は、ほとんど増えていないことが判明する。景気を押し上げる力は、全くないといえるだろう。

本予算であれ補正予算であれ、財源はどこからか捻り出さなければならない。したがって財政の将来に対する影響度は、補正予算を含めて考えることになる。また政府の公的な支出が景気に与える影響も、同様だろう。政府は財政再建の見地から本予算を小さく見せることばかり考えているが、これではコトの本質を見失う恐れがある。新聞やテレビも反省すべきだ。

       ≪23日の日経平均 = 上げ +4.48円≫

       ≪24日の日経平均は? 予想 = 上げ≫

補正予算は 防災に限るべし

2019-11-15 08:50:50 | 予算
◇ 本予算との区別を明確に = 安倍首相は先週8日の閣議で「新しい経済対策の策定と19年度補正予算の作成」を指示した。経済対策は世界経済が下降局面に入ったことを踏まえて、オリンピック後の景気下支えまでを念頭に置いた政策。また補正予算は、台風などの災害復旧とインフラの強化に使われる。関係省庁が12月上旬までに、内容を詰めることになっている。

世界経済には、冷たい風が吹き始めた。元凶となっている米中経済戦争が終息するまでには、相当な時間がかかりそうだ。中国やヨーロッパの景気も下向いている。そんな環境のなかで、日本も消費増税の影響、オリンピック需要の反動を乗り切らなければならない。そこで新しい経済対策を策定することは、必要不可欠だ。

台風など自然災害の被害も大きかった。その復興補助としては、すでに19年度予算の予備費から1300億円を捻出した。しかしダムや堤防など、インフラの補強も緊急の課題となっている。そのために補正予算を組むことも、やむを得ない。ただ補正予算の組み方には問題がある。本来ならば本予算に計上すべき支出を、補正予算に紛れ込ませる傾向が強まっているからだ。

たとえば18年度の第2次補正予算は、総額2兆7000億円。このうち3000億円は農業補助、2000億円は中小企業支援、その他にも4600億円が使われている。防災には1兆円しか充てられていない。これは政府が、本予算の規模をできるだけ増やさないための方策だと考えられる。しかし、そんな姑息な手段を続けていると、補正予算に対する世間の風当たりも強まるだろう。補正は防災関係に限ってもらいたい。

       ≪14日の日経平均 = 下げ -178.32円≫

       ≪15日の日経平均は? 予想 = 下げ≫

Zenback

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