経済なんでも研究会

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101兆円予算の とらえ方

2018-12-27 08:31:13 | 予算
◇ 補正を含めて比べてみると = 来年度予算案が出来上がった。一般会計の総額は101兆4564億円で、前年度比3.8%の増加となっている。当初予算としては初めて100兆円を超えたために、新聞紙面では「100兆円超」という見出しが大きく踊った。だが庶民にとっては、どうもピンとこない金額である。ちなみに国民1人当たりにしたら100万円弱。そう考えると、とんでもなく膨大なおカネであることが判るだろう。

最も大きな歳出項目は、やはり社会福祉関連で34兆1000億円。次いで国債費が23兆5000億円。この2項目だけで、予算の半分以上を占めている。また公共事業費は6兆9000億円、防衛費は5兆2000億円など。それに消費増税による景気の落ち込みを防ぐ対策として、約2兆円がこの予算案に組み込まれた。

当初予算が100兆円を超えたのは初めてだが、実は補正予算を含めると18年度も予算総額は100兆円を超えている。18年度の当初予算は97兆7000億円だった。ところが年度中に2度の補正予算を編成。1次補正は9300億円、2次補正は2兆7000億円だったので、これらを合計すると18年度の予算総額は101兆円を超えている。だから来年度の予算規模が100兆円を超えたことに、あまり大きな意味はない。

一般に前年度に比べた予算規模の増加率が大きければ大きいほど、景気の浮揚効果は増大する。その観点からみると、来年度予算が101兆円になっても、前年度と規模は同じだから景気浮揚効果はほとんどない。政府が「消費増税対策に万全を期している」と強調しても、過大な期待は禁物だろう。19年度も補正予算が組まれる公算は大きい。
 
       ≪26日の日経平均 = 上げ +171.32円≫

       ≪27日の日経平均は? 予想 = 上げ≫

タガがはずれる? 来年度予算 (下)

2018-09-07 06:38:41 | 予算
◇ 110兆円に近づく恐れ = 実は19年度予算案が100兆円を超えたとしても、そんなに驚くには当たらない。当初予算としては初めて100兆円を突破するが、補正予算を加えた現実の財政支出は、16年度にも100兆円を上回っているからだ。このとき補正予算を含めた支出は100兆8000億円。熊本地震の復旧費などを補正で追加したため、わずかながら100兆円を超えた。

しかし今回は「わずかながら」というわけにはいかないだろう。かつて安倍内閣は消費税を5%から8%に引き上げた際、5兆5000億円の景気対策費を計上した。だが効果はなく、景気は大幅に落ち込んだという苦い経験をしている。このため今回は10兆円規模の対策費が必要だという声が、自民党内では強まってきている。

仮にそうなれば、19年度予算案は110兆円に近づくかもしれない。財政再建は、さらに遠のいてしまうだろう。だから自民党内にも慎重論は少なくない。しかし財政再建の旗振り役となるべき財務省は、複雑な心境である。十分な対策費を確保しないと、安倍首相はまたまた消費税引き上げを延期するかもしれない。すると財務省の悲願は達成できなくなる。

これから年末にかけての編成作業で、財務省は103兆円にのぼる各省庁の概算要求をどこまで切り込めるか。また消費税対策として自動車や住宅に対する減税措置、あるいは低所得層に対する現金給付などの政策手段をどこまで認めるか。それによって来年度予算案の規模が決まる。だが参院選を前にして、財政のタガが抜ける危険性は大きい。

       ≪6日の日経平均 = 下げ -92.89円≫

       ≪7日の日経平均は? 予想 = 下げ


タガがはずれる? 来年度予算 (上)

2018-09-06 07:09:19 | 予算
◇ 消費税対策も計上する方針 = 財務省は8月末で各省庁が提出する概算要求を締め切り、19年度予算案の本格的な編成作業を開始した。概算要求では、社会福祉、教育、防災、防衛費などの増額要求が目白押し。総額は103兆円近くに達した模様。財務省はこれから査定で要求額をカットして100兆円未満に抑えたい意向だが、場合によっては100兆円を突破する可能性もある。

社会福祉費は高齢化の進展で、年金や医療費が確実に増えてしまう。いわば自然増であり、政府もすでに閣議で6000億円までの増額はやむをえないと認めている。また教育関係費は、教育費の無償化や教室のエアコン整備、ブロック塀の改修など。防災費は地震や台風の被害を軽減するためのインフラ工事。さらに防衛費は、国際緊張に備えた陸上イージスの導入など。財務省としても、なかなか切りにくい項目が並んでいる。

このほか閣議では、成長分野に対して重点的に配分する特別ワク4兆4000億円を、すでに了承している。AI(人工知能)やロボットの開発に向けられる予算で、18年度より4000億円増額した。こうした状況から判断すると、来年度予算案が100兆円を下回ることは至難の業。当初予算として初めて100兆円に載せる公算が大きい。

加えて安倍首相は、来年10月に予定する消費税の引き上げで景気が落ち込むことを防ぐための対策費も、19年度当初予算案に組み込む方針。通常なら本予算が成立したあと補正予算で処理するが、安倍首相は来年の参院選も考慮して、早めの対策に固執しているようだ。そうなれば、予算案の規模は100兆円どころではなくなる。

                            (続きは明日)

       ≪5日の日経平均 = 下げ -116.07円≫

       ≪6日の日経平均は? 予想 = 上げ≫

来年度予算案は 100兆4000億円

2017-12-29 08:41:29 | 予算
◇ 補正予算は誤魔化しの手段 = 政府が閣議決定した18年度予算案をみると、総額は97兆7128億円で前年度の当初予算比では0.3%しか増えていない。高齢化の進展による社会保障費の増大、やむを得ない防衛費の積み増しなどを考慮すると、予算規模の拡大は最小限度に抑えられたかのようにみえる。また新規国債の発行額も、前年度より2%減らすことができた。

ところが政府は全く同じ日の閣議で、17年度の補正予算も決定している。総額は2兆7073億円。公共事業費や農業対策、防衛費が主な項目だ。公共事業費の財源として、新規の建設国債も1兆1848億円発行することにしている。本来、補正予算というのは景気の急速な悪化や自然災害の復旧に必要な費用を、緊急に支出するために編成されるもの。しかし今回の補正予算には、何の緊急性も見当たらない。

この補正予算は来年の通常国会に提出され、18年度の本予算と同じ時期に審議される。公共事業費や防衛費などは両方の予算案に組み込まれているが、国会は別々に議論するのだろうか。国民にとっても、きわめて判りにくい。政府はなぜ、こんな厄介な予算の組み立てをしたのだろう。

もし18年度予算案と17年度補正予算案を一体化したら、総額は100兆4201億円となり、初めて100兆円を超えてしまう。また国債の発行額も、前年度を超えてしまう。これでは「使いすぎ」の批判に晒されるかもしれない。そこで補正予算を“隠れ蓑”に使った。だが新聞やテレビなどのマスコミで、この点を追及した報道や解説は見当たらない。

      ≪28日の日経平均 = 下げ -127.23円≫

      ≪29日の日経平均は? 予想 = 上げ


補正予算は 騙しのテクニック

2017-11-10 07:34:24 | 予算
◇ 本予算の規模を小さくみせる手法に = 安倍首相は1日の初閣議で「17年度の補正予算編成」を関係閣僚に指示した。人づくり革命に向けた保育園の建設促進、貿易自由化に備えるための農林水産業対策、中小企業の生産性を向上するためのIT投資支援などが、予算に盛り込まれる見込み。予算の規模は2-3兆円になるとみられている。年内に編成作業を終え、来年の通常国会に提出する予定だ。

必要な施策に予算を付けるのはいい。だが、なぜ補正予算を組まなければならないのか。もともと補正予算というのは、年度の途中で災害など想定外の事態が生じた場合に編成するもの。たとえば東日本大震災や熊本地震のときには、復旧費として数兆円の補正予算を組んでいる。だが今回は、そういう突発的な事件は起こっていない。

政府はいま18年度の予算編成作業も行っている。一般会計の規模は98兆円前後。17年度の当初予算に比べると、社会保障の自然増加分5000億円程度の増加になる見込み。政府は、社会保障以外の予算を17年度並みに据え置く方針。こうして財政再建にも努力していることを、内外に示そうとしているわけだ。

そのために保育園の増設費などは、本予算から切り離して補正予算で処理してしまう。仮にこれらの費目を本予算に入れれば、規模が100兆円を超えてしまう。それを隠すためのテクニックとして、補正予算が利用されるようになった。だが財政的には、全く意味がない。こんな手法で国民を騙すのは、止めた方がいい。

      ≪9日の日経平均 = 下げ -45.11円≫

      ≪10日の日経平均は? 予想 = 下げ


Zenback

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