経済なんでも研究会

激動する経済を斬新な視点で斬るブログ。学生さんの就職準備に最適、若手の営業マンが読めば、周囲の人と差が付きます。

軽減税率の 複雑怪異

2018-10-27 07:42:59 | 消費税
◇ 外食は贅沢なのか? = 消費税が来年10月、現行の8%から10%に引き上げられる。その際、政府は軽減税率制度を導入する方針だ。軽減税率というのは、生活必需品である食品と飲料については、税率を8%のままに据え置く仕組み。庶民にとっては、嬉しい政策である。ところが酒類と外食は“贅沢”だから、例外とすることになった。これで話はいっぺんに解りにくくなる。いったい、外食って何なんだろう。

国税庁によると、外食とは「飲食設備のある場所で、飲食料品を飲食させるサービスの提供」である。なるほどレストランや寿司屋やソバ屋が、これに該当することは理解できる。だが社員食堂や屋台のおでん屋も、この定義に当てはまるから消費税は10%になるという。どうして社員食堂や屋台のおでんやが、贅沢なのだろう。

コンビニには、店内にイートイン・スペースを設けているところが多い。弁当を買って持って帰れば税率は8%だが、イートインで食べれば10%になってしまう。お客が8%の税率で弁当を買い店内で食べたら、店員は「あと2%分の税金を払ってください」と請求するのだろうか。店の外にあるベンチで食べたら、店内で立ち食いしたら。疑問は尽きない。

寿司やソバを店内で食べたら10%、出前を取ったら8%。列車のなかで食堂車に行けば10%だが、座席でワゴン販売を買えば8%になる。ところが座席にメニューが置いてあり、それを注文すると10%になるというからご用心。たかが2%の差だと言うなかれ。積み重なれば、年に何万円にもなるかもしれない。

       ≪26日の日経平均 = 下げ -84.13円≫

       【今週の日経平均予想 = 3勝2敗】  

新アベノミックスの登場 (下)

2018-10-19 08:15:25 | 消費税
◇ 頼みの綱は財政支出だけ = 第1次補正予算の規模は9356億円。そのうちの7275億円を、地震・台風・豪雨などによる災害の復旧。残り1081億円は、公立小中学校のエアコン設置とブロック塀の改修に充てる。この使途なら野党の反対もなく、臨時国会ですぐ成立するだろう。さらに政府・与党は18年度の第2次補正予算を、次の通常国会に提出する方針。国土強靭化のためのインフラ投資が中心となる。

国土強靭化も、必要な事業には相違ない。だが、その内容は道路や橋梁、堤防などの公共事業だから、本来なら本予算に組み込むべきもの。国会での議論は長引くかもしれない。そこで政府は第1次補正と切り離して、通常国会へ提出することにした。規模も5兆円前後には膨らむだろう。というのも前回14年の増税前には、5兆5000億円の補正を組んでいた。1次と2次を合わせて、それを下回るわけにはいかない。

加えて19年度の本予算にも、消費増税対策が盛り込まれる。住宅や自動車に対する減税や補助金、中小小売り業の準備に対する支援、さらには低所得層への現金給付まで。その中身はまだ決まっていないが、ここでも5兆円以上は必要になってくるだろう。すると18年度の2つの補正予算と合わせて、財政支出は110兆円にも達する可能性が大きい。

景気が停滞してまたまた増税が出来なくなると、安倍首相の政治生命にもかかわってくる。だから安倍内閣は必死で景気を支えようとしているわけだ。しかし4年前に世間を驚かせたアベノミックスと違い、今回は金融が働けない。手段は財政支出だけとなった。それでも景気を支えるための安倍流経済政策、つまり新アベノミックスであることに違いはない。

       ≪18日の日経平均 = 下げ -182.96円≫

       ≪19日の日経平均は? 予想 = 下げ≫

新アベノミックスの登場 (上)

2018-10-18 07:47:26 | 消費税
◇ 消費増税に2つの景気リスク = 安倍首相は15日の臨時閣議で「消費税を来年10月、現行の8%から10%に引き上げること」を最終決定した。1年も前に決定したのは「準備に十分な時間をかけるため」と説明しているが、来年の地方統一選挙や参院選への影響を考慮した結果であることは明らかだ。また、この臨時閣議では18年度の第1次補正予算も了承した。消費増税とは無関係のように見えるが、実は重要な関連性がある。

消費税の引き上げには、全く性質の異なる2つの景気リスクがある。1つは増税前に駆け込み需要が起こり、増税後はその反動で消費が落ち込んでしまうことだ。この現象は過去の増税時に必ずみられたが、特に税率を5%から8%に引き上げた14年の場合は激しかった。消費の減退で景気が停滞、回復するまでに4年もかかっている。

この失敗を繰り返さないようにと、政府はいくつもの対策を講じる方針。たとえば酒類と外食を除く食品と飲料は、増税せず8%の税率に据え置く軽減税率。住宅や自動車については、増税後に減税や補助金で負担をなくす。また中小の小売り業に限り、現金を使わない消費者に2%分のポイントを供与、その分を政府が補てんする――などなど。こうした対策で、増税前後の消費をできるだけ平準化する。

もう1つの景気リスクは、増税そのものとは関係がない。日本の景気自体が、何らかの理由で下降してしまうことだ。仮にそんな状態になれば、増税などできるはずがない。それを防ぐためには、しっかり景気対策を講じておくこと。金融政策は限界にきているから、財政支出を増やすしか手段はない。その第1弾が、補正予算なのである。

                               (続きは明日)

       ≪17日の日経平均 = 上げ +291.88円≫

       ≪18日の日経平均は? 予想 = 下げ≫

消費増税に 3つの条件 (下)

2018-10-06 08:36:21 | 消費税
◇ 増税しても財政状態は悪化? = 消費税の税収は、急速に増大している。税率3%でスタートした89年度の税収は3兆3000億円だったが、18年度は17兆5000億円になる見込み。税収全体の約3割を占める。これを10%の税率に引き上げると、約5兆6000億円の増収に。しかし消費の反動減を抑え、景気を維持する対策には、合計10兆円もの費用がかかりそうだ。すると増税しても初年度は支出の増加で、財政はさらに悪化してしまう。

まず対策費の使い方に問題はないのだろうか。たとえば自動車税や燃費税を軽減して、消費増税分を相殺する案。駆け込みや反動減は抑えられるかもしれないが、自動車減税を永久に続けることはできない。すると自動車減税が終了する時点では、駆け込みや反動減が発生して、景気を不自然に変動させてしまう。

さらに増税によって生じる増収分の使い方。消費税収はもともと、社会保障費と財政再建にのみ使われると決められていた。それを安倍内閣は、大学生の教育無償化にまで使おうと考えている。「誰もが高等教育を受けられる社会の建設」と言ってしまえば、聞こえはいい。しかし雨後の筍のように出現した大学に、タダで学生を送り込むだけではないのか。巨費を投じて、若者を4年間遊ばせる結果にならないのだろうか。もっと検討する必要があると思う。

何がなんでも景気の好調を持続させ、来年10月には消費税を10%に引き上げる。どんな手を使っても、増税による景気の後退を防ぐ。安倍首相をはじめ政府・与党の考え方である。消費税の引き上げが必要なことは理解できるが、「引き上げてしまえばいい」というその姿勢には、どうも納得がいかない。

       ≪5日の日経平均 = 下げ -191.90円≫

       【今週の日経平均予想 = 3勝2敗】  

消費増税に 3つの条件 (中)

2018-10-05 05:36:24 | 消費税
◇ 消費の反動減をいかに抑えるか = 消費増税を実施すると、人々は増税前の駆け込み需要に走る。増税後はその反動で、需要が落ち込んでしまう。この現象は過去の増税時に必ず見られたが、特に税率を5%から8%に引き上げた前回14年のときは激しかった。14年4-6月期の個人消費額は実質で前年比17.2%も減少、増税前の水準に戻るまで4年もかかっている。これがデフレの長期化につながったことは間違いない。

そんなことが再現したら大変だ。そこで政府・与党は、いま衆知を集めて反動の抑制策作りに取り組んでいる。すでに決まっているのは、軽減税率の導入だけ。軽減税率というのは、食料品や飲料水など重要な生活必需品についての税率を8%のまま据え置くこと。その分だけ反動減を抑制できるほか、低所得層の負担を軽減できる。

消費増税の負担感は、所得の低い人ほど重くなる。そこで年間所得78万円以下の年金生活者に、一律6万円の現金を支給する案も浮上している。対象者は約800万人。財源をどうするかが課題だ。また住宅と自動車についても減税し、実質的に購入者の負担が増えないようにする案も有力。ただ地方の税収減をどう補うか。減税の終了時に駆け込みが起こらないかといった問題点も提起されている。

さらに小売店の売り方に対する指導も変える。これまでは「増税分を価格に上乗せするよう」指導してきたが、今回は「すぐに価格を上げる義務はない」という方針を周知させる。また自粛を要請してきた「消費税還元セール」も解禁する。これらの対策には法律や税制の改正を必要とするものもあるから、政府は遅くとも年末までには最終決定しなければならない。

                               (続きは明日)

       ≪4日の日経平均 = 下げ -135.34円≫

       ≪5日の日経平均は? 予想 = 下げ


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