経済なんでも研究会

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どうする? 中国製EVの安売り (下)

2023-09-28 07:28:19 | 自動車
◇ EUは中国政府の補助金を調査へ = EUは9月13日「中国のEVが不当に安い価格で販売されている可能性がある」という理由で、中国政府による補助金を調査する方針だと発表した。EUはかなりEV化が進んでいるが、なかで中国製のEVは全体の8%を占めている。調査の結果「不当に安い価格」と認定されれば、EUは中国製EVに対する輸入関税を引き上げることになりそうだ。もちろん、中国政府は強く抗議している。

いま世界最大のEVメーカーはアメリカのテスラ、次は中国のBYDである。しかし国という単位からみると、中国が圧倒的に世界一だ。たとえば22年のEV販売台数は中国が453万台だったのに対して、EUが156万台、アメリカは80万台、日本は5万4000台に過ぎない。そして中国のEV化ガ急伸した大きな理由が、政府による製造・販売両面での減税・補助金だったことは周知の事実と言えるだろう。

EUはやっと、この点を問題視し始めたわけだ。ところがEVに対する手厚い支援は、アメリカ政府も実施している。しかも減税や補助金の対象は、部品などを北米で調達し、アメリカ国内で組み立てたEVに限るという厳しさ。中国の産業保護と比べても、どっちもどっちという感じ。もっともアメリカの場合は、海外メーカーでもこの条件を満たせば支援を受けられるが。

日本も立場としては、EUと同じ。だがコトを荒立てれば、日中関係がさらに悪化してしまう。したがって当面、政府は黙認することになるだろう。しかし仮にBYDが得意の安売り戦術で急速に販売を伸ばしたとき、どう対処するのか。政府は難しい判断を迫られることになりそうだ。

        ≪27日の日経平均 = 上げ +56.85円≫

        ≪28日の日経平均は? 予想 = 下げ≫

どうする? 中国製EVの安売り (上)

2023-09-27 07:22:57 | 自動車
◇ 中国BYDが日本市場に本格参入 = 中国のEV(電気自動車)メーカーBYD(比亜廸)は先週20日、コンパクトEVのドルフィンを日本で発売し始めた。試乗した専門家によると、急発進の防止装置もついており品質はいいという。その大きな特徴は、フル充電した場合の航続距離が400㌔㍍と長いこと。また価格が363万円からと安いことだ。日本政府や東京都の補助金を使えば230万円台で購入できることになる。

BYDは深圳市に本拠を構える中国のEV専業メーカー。アメリカのテスラに続く世界第2位の販売台数を誇っている。日本へはことし1月に上陸、スポーツ車を売っていた。それが今回は小型普通車で参入。日本市場の本格的な開拓を目指す。専売店も増やし、24年3月までに1100台を販売する方針だという。迎え撃つのは日本の各メーカーだが、どうも準備万端とはいっていない。

先進国のなかでも、日本のEV普及率は際立って低い。乗用車に占める割合は、まだ1.7%程度。日本のメーカーはガソリンと電気を併用するハイブリッド車の生産体制を確立したため、EV生産への移行が遅れてしまった。このため外国メーカーがどっと参入、たとえばことし1-7月では計1万0561台を販売。前年比90%の増加となった。モデル数をみても海外メーカーは計95に及ぶが、日本車はまだ10モデルに過ぎない。

これらの車種は、高級車と軽自動車に分かれていた。テスラやベンツやトヨタなどは500万円以上の高級車、日産などは200万円台の軽自動車。この間隙を突いて、BYDは小型の普通車を投入してきたわけだ。その戦略が功を奏するかどうかは不明。日本にはなじみの薄いメーカーだから、浸透は難しい。いや、安いからけっこう売れるなど、専門家の意見も割れている。そして見落とせないのは、この参入が大きな政治問題に発展する可能性を秘めていることだろう。

                      (続きは明日)

        ≪26日の日経平均 = 下げ -363.57円≫

        ≪27日の日経平均は? 予想 = 下げ≫
  

気が付けば 周回遅れ : 日本のEV (下)

2023-06-30 07:55:32 | 自動車
◇ 出遅れの挽回は至難の業 = 海外のEVメーカーが急成長を遂げた背景には、各国政府の並々ならぬ支援がある。生産や消費に対する補助金や減税。それに加えてEUは「35年には排気ガスを出さない車しか販売できない」点で合意。またアメリカも「30年には新車の50%をEVにする」方針を決めた。これらは地球温暖化ガスの削減を目標とした政策だが、日本のハイブリッド車対策と考えられないこともない。

日本は周回遅れを取り戻せるのだろうか。結論から言えば、相当に難しいのではないか。たとえばEVの普及には、給電施設が欠かせない。その施設と車を結ぶ給電コード。これだけみても、テスラやBYDの方式が世界標準になってしまう確率が、きわめて高い。日本のメーカーは輸出しようとすれば、これを取り入れなければならなくなる。

EVの命はバッテリーだ。各社はその性能向上にシノギを削っているが、これも売れ行きがよくなければ大量生産できず、単価を安くできない。全固定電池など画期的な発明があれば状況は変わるだろうが、そうでなければ後発組は頭を出せない。出遅れてしまったことのマイナス面は、見た目よりもずっと大きい。

トヨタ自動車もこのマイナス面に気が付き、EV重視に方針転換した。社長を交代し、アメリカへの投資を増やしている。だがハイブリッドを完全に捨てる決断は出来ない。経産省もEV販売に補助金は付けたが、状況を見守るばかり。日本は「EVで完全に出遅れた」ことを、まず自覚しよう。さらに「日本の自動車産業は存亡の危機にある」という緊張感も必要だ。

        ≪29日の日経平均 = 上げ +40.15円≫

        ≪30日の日経平均は? 予想 = 下げ≫

気が付けば 周回遅れ : 日本のEV (中)

2023-06-29 08:20:52 | 自動車
◇ ハイブリッド車への固執が敗因 = 日本の自動車メーカーは、世界に先駆けてハイブリッド車の製造技術を完成させた。ハイブリッド車というのは、ガソリン・エンジンと電気モーターの両方を搭載した車。当然ながら部品の数は多くなり、製造工程は複雑になる。日本の自動車業界はこれで世界の競争に勝てると確信し、経済産業省もこれを支援した。

EVの動力は、電気モーターだけ。部品の数は半分以下となり、製造工程もきわめて簡単になる。それならEVを造ってみよう。海外ではこう考える企業家が続々と現れた。最初に頭角を現したアメリカのテスラも、あとからこれに追い付いた中国のBYDも、もともとは自動車メーカーではなかった。それがいまは、それぞれ年間130万台、180万台を売り上げる巨大メーカーに成長している。

こうした動向をみて、日本のメーカーもEVへの関心を高めたことは確か。だが完全なEVを目指すと、せっかく手にしたハイブリッド技術が無駄になってしまう。またガソリン・エンジン部門がなくなると、多数の関連した下請け企業をどうするか。こうした問題もからんで日本の自動車メーカーは決断が遅れ、世界のEV競争では周回遅れとなってしまった。

GMやフォードといったアメリカの大メーカーも、EV化の波に乗り遅れた。主力製品が大型車で、電池の容量に不安があったためである。それでもハイブリッドでは日本に敵わないため、EVには早くから関心を寄せてきた。世界競争では、半周遅れというところか。いずれにしても、日本はどん尻。ここから巻き返せる可能性は、あるのだろうか。

                       (続きは明日)

        ≪28日の日経平均 = 上げ +655.66円≫

        ≪29日の日経平均は? 予想 = 下げ≫

気が付けば 周回遅れ : 日本のEV (上)

2023-06-28 07:52:45 | 自動車
◇ 日本市場は海外メーカーの草刈り場 = 新車販売台数のなかで、最もEV(電気自動車)の比率が小さい国はどこか? そう、答えは日本だ。まだEVは100台に2台しか売れていない。最も比率が大きいノルウェーは、なんと100台に88台。ヨーロッパ主要国は20-25台、中国11台、アメリカ6台に比べても、断トツで比率が低い。その日本市場が、ことしは海外メーカーの草刈り場となってきた。

業界団体の集計によると、22年度に国内で販売された乗用車部門のEVは7万7238台。前年の3.1倍に増加したが、乗用車全体に占める割合はまだ2.1%にとどまっている。このうち排気量660CC以上の普通車は3万5559台、軽自動車は4万1679台だった。車種では日産の軽EV「さくら」が1位、同じく日産の「リーフ」が2位で、日産勢が健闘した。

輸入車も、大きく増加した。1万6430台を売り、前年比で64%も増えている。アメリカのテスラ、中国のBYD(比亜迪)、ドイツのベンツなどが続々と参入。日本で売り出した海外EVのモデルは、前年度の20種から22年度は79種に拡大した。こうした海外メーカーは、販売価格の高い高級車に力を集中している点が特徴。現状は海外メーカーの高級車と、日産の軽EVの争いといった観を呈している。

これらの海外メーカーは、アメリカやヨーロッパ、中国といった大市場で熾烈な競争を演じてきた。いまや値引き競争の段階にまで達している。そこで目を付けたのが、出遅れた日本市場。たとえばBYDはことし中に3車種を投入、25年までに店舗を100か所に増やす方針だ。こうしたなかで、日本メーカーのEVはどうみても影が薄い。上海で4月に開かれた自動車ショーでも、日本製EVへの関心は集まらなかった。どうして、こんなことになってしまったのか。

                    (続きは明日)

        ≪27日の日経平均 = 下げ -160.48円≫

        ≪28日の日経平均は? 予想 = 上げ≫

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