経済なんでも研究会

激動する経済を斬新な視点で斬るブログ。学生さんの就職準備に最適、若手の営業マンが読めば、周囲の人と差が付きます。

もう負けてる! 日本のEV (下)

2023-01-18 08:00:47 | 自動車
◇ 政府・与党には危機感なし = 日本のEVが立ち遅れてしまった原因は、いくつもある。まず給電設備の不足。いま日本国内にある給電設備は約4万基で、中国の135万基、アメリカの10万基に比べるとかなり少ない。政府は30年までに15万基に増やす計画だ。給電器には出力6㌔㍗の普通型と90㌔㍗の高速型があり、給電に要する時間は20倍も違う。海外では高速型が主流になりつつあるが、日本は30年になっても大半が普通型になる見込み。

次はHV(ハイブリッド車=ガソリンと電気の併用)の問題。日本のメーカーはHVの生産で、高い技術力を獲得した。このためHVからEVへの切り替えが遅れがち。またガソリン車の部品は3万点だが、EVの部品は半分程度。ガソリン・エンジンが無くなると、69万人もの労働者が職を失う。この系列企業の職種転換をどう進めるか。組み立てメーカーがEV専業化に踏み切れない大きな原因となっている。

EVの生産はガソリン車に比べると、技術的には非常に簡単だ。このため異業種からの参入も多く、新興国でも製造が始まった。その結果は競争が激化、世界では早くも価格の引き下げ競争が始まっている。たとえばインドのタタ自動車は135万円、中国の上海汽車集団は200万円のEVを売り出した。ことしに入っては、あのテスラも6-20%の値下げを断行している。

中国はもちろんだがアメリカもヨーロッパも、政府が補助金や減税によってEVの生産・販売を積極的に支援している。だが日本政府の対応は鈍い。ことしの税制改正では、EVに対する補助金の一部を削ったほど。給電設備の普及や車載電池の性能向上、さらには自動車関連企業の職種転換などなど、支援すべき事項はたくさんある。ここで政府・与党が目を覚まさないと、パソコン、スマホ、太陽光発電パネルに続いて、EVも世界の潮流からはじき出されてしまうだろう。

        ≪17日の日経平均 = 上げ +316.36円≫

        ≪18日の日経平均は? 予想 = 下げ≫

もう負けてる! 日本のEV (上)

2023-01-17 07:12:59 | 自動車
◇ 完全に立ち遅れた‟EV元年” = 自動車販売団体の集計によると、22年に日本国内で販売されたEV(電気自動車)は5万8813台。前年比では2.7倍に伸びた。このうち普通乗用車は3万1592台で、前年比1.5倍の増加。軽自動車は2万7221台で、なんと前年比49倍の増加だった。また輸入車は1万4348台、前年比1.7倍となっている。車種別にみると、首位は日産の軽自動車「サクラ」で、2万1887台を売って断トツだった。

これだけの数字をみると、日本のEVも健闘したように思われる。しかし、たとえばEV専業メーカーとして知られるアメリカのテスラ。22年の販売台数は前年比40%増の131万3851台だった。とにかく比較のしようもない。また昨年1-11月の統計でみると、新車販売全体に占めるEVの割合は、中国が21.1%、ヨーロッパが10.3%、アメリカが5.8%。これに対して、日本はわずかに1%台だ。

さらに、こんなデータもある。世界全体のEV販売台数に占める割合は、中国が約4割でトップ。次いでアメリカが約3割、ヨーロッパが約2割となっているが、日本はまだ5%にも達しない。中国はBYD(比亜迪)、アメリカはテスラ、ヨーロッパは独フォルクスワーゲンや仏ルノーがトップ・メーカーだ。

22年は‟EV元年”と言われ、世界のメーカーがこぞって生産・販売に力を傾注した。だが、このスタート段階で、日本のメーカーは早くも大きく出遅れてしまった。残念ながら、ことしも巻き返せるような勢いは見られない。その原因はいろいろ解明されているが、改善への動きは鈍い。このままではEVに関しても、日本は‟周回遅れ”になって行く危険性が大きい。

                      (続きは明日)

        ≪16日の日経平均 = 下げ -297.20円≫

        ≪17日の日経平均は? 予想 = 下げ≫

トヨタ・EV4兆円投資の 問題点

2021-12-16 08:35:16 | 自動車
◇ 政府の怠慢で日本経済は空洞化へ = トヨタ自動車は14日「30年にEV(電気自動車) の世界販売台数を350万台とする」と発表した。この目標を達成するため、バッテリーも含めて4兆円を投資する計画。最終的には計30車種のEVを製造する予定で、最初は新型bZ4Xを22年に世界で販売する。最近になく明るい話であり、「トヨタはEVに消極的だ」という関係者の見方も一挙に吹き飛ばした。

世界の自動車メーカーは、いまEV化を目指して一斉に走り出した。アメリカでは専業メーカーとして立ち上がったテスラはもちろん、GMやフォードもEVの増産を目指している。特にヨーロッパの動きは鮮烈だ。ベンツは30年、アウディは26年までに、すべての新車をEVにする。フォルクスワーゲンも、30年までに世界販売の5割をEVにする方針。これはEU当局が、きわめて熱心に脱炭素政策を推進しているためでもある。

すでにEUは「35年までにEVとFCV(水素燃料電池車)以外の販売を禁止」する政策を打ち出している。さらにEU委員会は「26年から国境炭素税を導入する」方針。これはCO₂排出規制の緩い国からの輸入品にかける税金で、当初は鉄鋼など5品目が対象だが、自動車は追加される可能性が高い。つまり日本のように火力発電の比重が高い電力を使って製造された自動車には、課税される危険がある。

またEVの製造にはバッテリーが欠かせず、リチウムやコバルトなどの希少金属が取り合いになることは必定。こういう情勢なのに日本政府は、電源構成に占める火力発電の比重を下げられず、また希少金属の獲得にも力を入れていない。これではトヨタの4兆円にのぼる投資も海外で使われ、日本経済は空洞化して行くだけだろう。

        ≪15日の日経平均 = 上げ +27.08円≫

        ≪16日の日経平均は? 予想 = 上げ≫

電気ショックの 自動車産業 (下)

2021-08-27 07:44:08 | 自動車
◇ 日本メーカーが抱える複雑な悩み = 日本政府は「35年までにすべてを電動車にする」と公約した。だが。この電動車にはEVだけでなく、HVも含まれている。日本メーカーはHVの製造技術に優れているから、これを外すわけにはいかない。だから35年になっても、国内ではHVが売れる。またアメリカと中国では、制限付きだが販売できる。東南アジアなどの新興国でも大丈夫だろう。しかしEUでは売れなくなる。したがって日本メーカーは、EVとHVの二通りの工場を動かし、開発投資もしなければならない。

現状でも、日本のEVは同等のガソリン車に比べて100万円ほど高い。これからEVとHVの二兎を追いながら、海外のEV専業メーカーと闘えるのだろうか。すでに中国製の小型EVは50万円という安さ。佐川急便が7200台の購入を決めるなど、国内での競合も始まっている。高級EVはテスラ、安価な小型EVは中国製という評価が定まりつつあるなかで、日本メーカーはどんなEVを目指そうとしているのだろうか。

いくらEVが普及しても、それを走らせる電気が汚ければ地球温暖化ガスは減らせない。この問題に対処するため、EUは「国境炭素税」の導入を検討している。たとえば鉄鋼やアルミなど、汚い電気で造られた製品の輸入に税金をかけるわけだ。日本は発電の大半を石炭火力によっているから、自動車もこれに引っかかる可能性が高い。政府の脱炭素政策が進展しないと、この問題は解決しない。

EVには蓄電池が欠かせない。いかに安価で効率のいい蓄電池を開発できるか。今後のEV競争は、ここに尽きると言えるだろう。日本の電池技術は世界のトップ・ランク。次世代電池の開発で常にトップを走るためには、産官学で構成する司令塔が必要ではないか。政府は電池関連産業を戦略産業と位置づけたが、何となく勢いが感じられない。危機感がないと、日本は自動車産業をも失いかねない。

       ≪26日の日経平均 = 上げ +17.49円≫

       ≪27日の日経平均は? 予想 = 下げ≫     

電気ショックの 自動車産業 (中)

2021-08-26 07:38:25 | 自動車
◇ 零細企業でもEVは造れる = 「いま世界にEVメーカーは何社あるの?」と聞かれても、答えられない。アメリカで早くからEV専業メーカーとなったテスラが、生産でも販売でも断トツ。GMやトヨタなどの大メーカーはもちろん、電気メーカーやIT企業、さらに町工場のような中小・零細企業に至るまでが参入しているからだ。ガソリン車の製造は高度の技術を必要とするから、誰にでも出来るわけではない。しかしEVは、カネさえあれば簡単に参入できる。

一般的に言って、ガソリン車の部品は約3万。これに対して、EVの部品は1万5000程度。さらにガソリン・エンジンは構造が複雑だが、電気モーターは簡単に組み立てられる。たとえば町工場がモーターを製造、ボディを外注すれば、EVをすぐに売り出せる。だからメーカーは激増し、競争は激化する。

大変なのは、ガソリン・エンジンのメーカーと下請けの部品会社である。ドイツのダイムラーとフォルクスワーゲン、アメリカのGMとフォードは、すでに大量の早期退職者を募集した。自動車の製造部門に携わる人員は、アメリカが90万人、ドイツが80万人。そのドイツでは、EV化によって39万人が職を失うという試算が発表されている。ちなみに日本の場合、製造関連の雇用者は91万人、そのうちの69万人が部品関連となっている。

IEA(国際エネルギー機関)の集計によると、20年のEV、PCV販売は世界で300万台。前年より41%増加した。このうちヨーロッパが140万台、中国が120万台。この両国で大半を占めている。メーカー別ではテスラが50万台で断トツ。あとはGMやワーゲンなど既存の大メーカーが上位を占めているが、日本のメーカーは上位10社に名を連ねてはいない。

                             (続きは明日)

        ≪25日の日経平均 = 下げ -7.30円≫

        ≪26日の日経平均は? 予想 = 上げ≫

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