(↑「読書ノート」にまとめました)
シャーロック・ホームズが好きな夫、
最近は青空文庫(アプリ)で、
江戸川乱歩の小説を読みまくったとか。
その話をしていて、
わたしの脳裏に浮かんだのは、
ポプラ社の少年探偵団シリーズ。
小学校4年生くらいから学校の図書館でどんどん借りて、
読んだ記憶。
その中で、最も印象に残っているのが、
『呪いの指紋』という本。
表紙の絵も、
そしてこの小説に出てきた「三重渦指紋」も
かなりしっかり記憶していて、
実はわたしが、
江戸川乱歩に出会った最初の本が
こちらの本だったのでした。
大人になって、
もう一度読みたいと思ったことが何度かありました。
けれどその時は手に入れられず、
よくよく調べてみたら
こちらの本は、
江戸川乱歩のそのままの小説ではなくて
子どもむけに書き直したリライト作品。
それも乱歩本人が書き直したわけではないようです。
なので、
今の江戸川乱歩シリーズには残っていないのです。
その話をしていたら、
夫がAmazonで早速見つけてくれました。
「欲しい?」と聞くので、
お願いして買ってもらいました。
あっという間に届いた本は、
昭和54年の第20刷。
古本にしては良い状態です。

でももちろん40年以上前のものですので、
古本独特のにおいがプーン。
「ああこれだった!」と表紙を見て納得。
記憶の通り!
気持ちの悪い男性の絵だなと思っていましたが、
この男性が誰かも今回わかりました。
手元に届いた本は一晩で読み終えました。
子供向けの本ですので、それほどの分量はありません。
リライト版だとは分かっていても、
乱歩を感じる丁寧な言葉遣い、文体、
展開の奇想天外さ、
スピーディさ、
スマートで洗練された雰囲気の明智小五郎、
その推理の安定感、
少年探偵団の面々の大人な感じ、格好よさなど、
そうそう、これこれ!
と思いながら最後まで。
今回何より心を打ったのは、
「はじめに」として書かれた江戸川乱歩の文。
この本は、わたしがまえに書いた『悪魔の紋章』という、
おとなの小説を、少年諸君の読みものとして書きなおしたものです。
これは、しゅうねんぶかい『かたきうち』のお話です。
大昔は『かたきうち』をすることを、ゆるされておりましたが、
いまはそれを法律できんじています。
ひとりが、じぶんのうらみをはらすために、
親のかたきをうてば、うたれたほうの子どもが、
またそのかたきをうつというように、
いつまでたっても、あらそいがたえません。
それでは、けんかばかりの世の中になって、
平和なくらしができませんので、
法律でそれをきんじたのです。
このお話の悪者は、
三重渦巻の怪指紋をつかって、
おそろしい『かたきうち』をたくらんだのですが、
でも、そんなことは世間がゆるしません。
ついには警察につかまってしまうのだということを、
小説として書きあらわしたのです。 江戸川乱歩
当時の言い方とはいえ、
作者が、子どもたちに「少年諸君」と呼びかけているところ、
残酷な殺人事件が続く内容ですが、
彼らにきちんと
どういう意図があってこれを書いたかを説明している点など、
子どもたちを対等な存在として見、
彼らにしっかり向き合った出版になっている点が
素晴らしいなと思いました。
とはいえ、
おどろおどろしさはやはり全開。
還暦になった今読んでも、
やはり怖いし気持ち悪い。
柳瀬茂氏の挿絵がますますその不気味さを盛り上げる。


読んだ夜は、やはり眠れない〜〜(笑)。
わたしの「怖いもの見たさ」癖は、
この江戸川乱歩シリーズから始まったのかもしれません。
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