どうぶつ番外物語

手垢のつかないコトバと切り口で展開する短編小説、ポエム、コラム等を中心にブログ開設20年目を疾走中。

どうぶつ・ティータイム(8)

2007-07-27 00:06:38 | 植物

     初物

 モロッコいんげんの初物を今日収穫した。
 種豆さえ蒔いておけば誰にでもできる丈夫な作物だから、不精な男でも毎年欠かさずつくっている。

 五月に蒔いて、二ヶ月半でもう食べられる。
 輪作に気をつけることと、蔓を這わせるサオを立ててやるぐらいで、ほとんど手間がかからないから続けられる。

 五つばかり採って、味噌汁の具にした。
 豆がまだ膨らむ前の柔らかい莢が歯にあたる。筋もなく、口の中でとろっと溶けるようだ。

 この時期だけの特別の計らいにちがいない。
 誰の計らいとは言い切れないが、自然の仕組みを作り維持してきたたくさんの参加者の総意だろう。

 雨、霜、霧、風、雷、そして太陽。やはり太陽が親分にちがいない。
 それに人の営みが加わる。専業の農業従事者だけでなく、にわか畑作人にもちゃんと分け前をくれる。

 同じ日、10キロほど離れた村落の山道をクルマで走っていたら、目の前の道路をニホンカモシカが横切っていった。
 右手の急斜面の森から、左手のなだらかな林に向けて。
 一瞬立ち止まったので、こちらもクルマを停めたが、振り返りつつ悠然と下草の陰に消えた。

 林に続く畑には、玉蜀黍と花豆が栽培されていた。
 カモシカの狙いは、おそらくこのあたりだろう。
 待ちきれないのか、偵察に来たのか。収穫の時期にはまだ早い気がするのだが・・・・。

 すぐにクルマを発進させたので、ニホンカモシカが初物にありついたかどうかは分からない。

 

 

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2 コメント

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美しい自然生活! (知恵熱おやじ)
2007-07-27 15:15:58

モロッコさやいんげん・・・美味しそう!


目の前を横切る鹿・・・会ってみたーい!


いまの時代には贅沢な生活していますね。
当地埼玉は今日33度。アチー。

知恵熱おやじ

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ささやかな悦び (丑の戯言)
2007-07-31 15:47:06
ほんとにほんとに少しの収穫。それがいいんですねえ。そこにこそ、ささやかな悦びが。
そんな田舎暮らしが偲ばれます。
しかも、モロッコいんげんとは! ルーツは北アフリカでしょうか。先日、スーパーで「伊元」を見つけました。なんだ、いんげんのことか。でも、この書き方、どこか凝ってるようでした。本来は「隠元豆」でしょうに。
「どうぶつ物語」としては、そこにニホンカモシカを噛ませたのも、おつです。筆者の目線がやさしいそうです。
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