三菱自動車の初めての量産EV(電気自動車)「i-MiEV(アイ・ミーブ)」の販売が予定通り始まりました。ニュースでは早速エネルギー関連の関西電力や自治体が啓発普及の意味で導入を考えているそうです。コストダウンや開発期間のことも含め、街乗り小型車「i(アイ)」の車体を利用していることで、デザイン的にはややユニークなフォルムのものになり、ハイブリッド車のプリウスやインサイトのようなノーマルで本格的な感じとはやや異なりますが‥‥。
世界不況での販売不振と将来的なガソリン高騰含み、そして各国の次世代環境規制(CO2)の厳しさを背景に、電気自動車への風向きが大きくなってきているように想います。環境対応型ディーゼル・エンジンに注力してきたヨーロッパ勢も、ハイブリッド車やプラグイン・ハイブリッド車(家庭充電可能)への移行を明確にしてきています。ただ量産化を通じて10年以上のコストダウンの技術蓄積のある日本勢には、正面から対抗することはできず、こちらは先ずは高級車からということになりそうです。
一方、原子力発電が進んでいるフランスでは、ルノー・プジョー&シトロエン両陣営共に、EV(電気自動車)の方向へインフラ整備も含め一気に舵を切りそうです。ルノーとの提携関係にある日産自動車も、今後はその方向でトヨタ・ホンダに立ち向かうのでしょうか。
トヨタのプリウスも次のプラグイン・ハイブリッド車の技術的な延長上にはEV(電気自動車)を見据え、そのアドバンテージを活かした量産コストダウンを目差し、新・創業家社長のもと伝統の“カイゼン”を繰り返し、盤石な未来戦略を描いている感じがします。
アメリカ・ビッグ3も資金援助を仰ぐオバマ政府の要請で、EV(電気自動車)開発への意欲を見せていますが、電池その他の基本技術では日本メーカーの協力無しでは進められず、投入される税金が日本へとかなり流れてくることになりそうです。
ご紹介するこの新書は2007年の連載記事に今年4月の時点で加筆をした構成ですが、その加筆された章末コラムを読むと、その短い間における状況の劇的な変化が窺えて大変面白かったです。著者グループが2008年のサミットに向けたデモンストレーションで、東京から北海道の洞爺湖までEV(電気自動車)で走った時の電気代がわずか500円だったというのには、エコドライブを心がけ深夜電気料金を利用してのこととしても大きな驚きです。
民主党政権になり高速道路が無料化されれば、日本のモータリゼーションも再活性化し、地方の観光ビジネスなども勢いづくのではないかと想われます。折しも世界不況の急激な悪影響に対する景気刺激のための財政出動が期待され、頻発する交通渋滞の解消への公共事業も必要視されているようですが、次世代モータリゼーションの再活性化と同調させた施策が求められると思います。
【追記】日産が27日発表した10年発売予定のEV(電気自動車)は、充電1回で160キロを走行し、急速充電器なら30分で8割充電できるようです。急速充電器のインフラが整えば十分に実用的になってきています。後は量産価格ですが、フランスのようにEV(電気自動車)を逸早く普及させ、経済を活性化させる国家的な政策・戦略もありそうです。
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