続・浜田節子の記録

書いておくべきことをひたすら書いていく小さなわたしの記録。

大食。

2012-06-20 06:35:54 | 日常
 サークル帰りのバス停、三人がけのベンチをその巨漢と荷物で占領していた婦人に、「ちょっと」と声を掛け座らせてもらった。彼女はすぐさま(はいはい)という感じで荷物を脇に寄せ、自分自身も心持ち肩を狭めてくれたように見えた。
「今夜は台風ですね」と言うと、
「だからこんなに食糧を買い込んじゃって」と笑った。
「家に帰っても話し相手がいないんですよ」と、同年くらいのその彼女は言い、袋から今買ったばかりの今川焼きを取り出して(おひとついかが)という風に差し出してくれた。
 その好意だけを笑顔で返し「いえいえ」と手で遮った。彼女はむしゃむしゃと二口ほどかぶりついて残りは再び袋に収めた。自分が食べたいというより、話しかけたわたしに何かご馳走したいという感じだった。


「荷物重そうですね」というと、
「つい沢山買っちゃうんです。それで、ベンチやバスの中に置き忘れてしまうのです。さて、食べようとすると無いでしょう。昨日も夕飯の支度をしようとしてお豆腐も肉も無いことに気づいたんです。亭主には叱られるし・・・。この両手の荷物をもって二十五段の階段を登るのも大変なんです」と苦笑いをした。
「亭主は左官屋なんですけど、仕事は有ったり無かったりです。でも先月は某有名人の家の修理に出かけまして、帰りにはたいそうなお土産とTシャツを貰って来たんですよ」と嬉しそうに話した。(Tシャツはイベント使用の残りかもしれない)

「あらっ、あなた今のバスに乗れたのにいいんですか?」と聞くと
「いいんですよ、どのバスだって」と、のんびりした様子だった。


 YRP野比駅行きが来たので乗ろうとすると「じゃぁ、わたしも」と立ち上がった彼女、わたし以上に太っている。足を引きずり、膨らんだカートを引き、大きな袋を持ち上げて乗り込んだ。

 わたしはこの彼女をよく理解できる。わたしもまったく同じタイプだから・・・。自分を見るように彼女の降車する姿を見送ったわたし、なぜか胸にずんと来るものがあった。

『城』858。

2012-06-20 06:11:04 | カフカ覚書
「いやここでは、でたらめな事は、なにひとつおこなわれていません」村長は、そう言うなり、足の痛みも忘れて、上半身を起した。
「何ひとつないとおっしゃるのですか。それでは、わたしが当地に呼ばれた問題は、どういうことになるんですか」

 足の痛み/Fussschmerz→Hass schmerz/憎しみ、苦痛。
 上半身/aufrecht→auflichten/明らかになる。
 問題/verhalt→Verhaft/拘置する、留置する。

☆「ここでは無思考はありません」(死への)入門の伝説。それどころか憎しみの苦痛が明らかになるのです。「ない?それではわたしの招集は拘置なんですか」