続・浜田節子の記録

書いておくべきことをひたすら書いていく小さなわたしの記録。

マグリット『オルメイヤーの阿房宮』

2015-07-07 06:51:46 | 美術ノート
 阿房宮と名付けた樹木の根を持った廃墟の建造物には背景が描かれていない。つまりは、暗黙の約束としての時空・・・超未来、億年の彼方の設定と見るのが妥当と思われる。

 注目すべきは根の張り具合である。上の建造物は廃墟であるのに、その根だけは衰えを知らない頑健さ、ゆるぎない根幹。

 これは何か・・・言葉による建造物と言えば、バベルの塔をおいて他にないのではないか。世紀を超えて今も語り続けられるバベルの塔。


「さあ、町と塔とを建てて、その頂を天に届かせよう。そしてわれわれは名を上げて、全地のおもてに散るのを免れよう」。時に主は下って、人の子たちの建てる町と塔とを見て、言われた。(略)そこで彼らの言葉を乱し、互に言葉が通じないようにしよう」。こうして主が彼らをそこから全地のおもてに散らされたので、彼らは町を建てるのをやめた。これによってその町はバベルと呼ばれた。(創世記より)


 れんがを得、しっくいの代りに、アスファルトを得たシナルの人たちの英知に主は異を唱えたという逸話。真意を解釈するのは困難である、このバベルの塔。建設を中途で止めざるを得なかったこの逸話に関しては、絵画作品にも多く描かれている。それほどに衝撃的であり、言葉の根幹を揺るがす事件でもある。

 この架空の建造物は長く語り伝えられ今日に至っているが、《億年を超え遥かな未来にまで存続するかもしれない》とマグリットは夢想する。過去の遺産としての寓話の滑稽、戯言。超未来人にとっては永遠の謎になるかもしれないこの遺物。
 時空さえも軽々と越えていく言語の魔力。

 マグリットの夢想(イメージ)は宇宙の中で浮遊する。

(写真は国立新美術館『マグリット展』図録より)

『銀河鉄道の夜』9。

2015-07-07 06:42:41 | 宮沢賢治
 やっぱり星だとジョバンニは思ひましたがこんどもすぐに答へることができませんでした。
 先生はしばらく困ったやうすでしたが、眼をカンパネルラの方へ向けて、


☆逝(人が死ぬ)の至(最後に行きつく状態)を問う(真偽や価値を問題にする)遷(移りかわる)章(文章)が混ぜてある。
 願(望み)の法(仏の教え・真理)の講(はなし)である。

『城』204。

2015-07-07 06:26:56 | カフカ覚書
男の教師は、いつも自分のクラスの文までふたりにやらせるのだった。まだ明るかったあいだは、ふたりが窓ぎわの小さな机に向かって、頭と頭を寄せあい、身じろぎもしないで仕事をしているところが見えていたが、いまは、窓ぎわの二本のろうそくがゆらいでいるのが見えるだけだった。


☆空虚は常に自身も同様にまだ抑圧が食(死の入り口)にいた。現場不明者がひしめき合って立っているのを見たが、いまも来世には強制的な束縛があるだけだった。