続・浜田節子の記録

書いておくべきことをひたすら書いていく小さなわたしの記録。

マグリット『美しい言葉』

2015-07-30 06:41:59 | 美術ノート
 一輪の薔薇その上に妖気漂う薔薇、副次的、幻想の薔薇である。
 そして、非現実の象徴である南中した三日月の現出。

 虚空間、幻の時空に咲いた大輪の薔薇。

『美しい言葉』に結びつくものは、薔薇の香気ある美しさ。それが言葉につながっていく要因はどこにあるのだろう。

 薔薇の特質は、一に美しく儚いことである。しかし、触れれば棘の凶器に傷つけられることもある。魅惑と拒否の両面性。もちろん薔薇は言葉を発しないが、比喩、隠喩は沈黙の効力を発揮する。

 言葉の特性は、一に伝達であり生活の要である、しかし傷つけられ、生命をも脅かす凶器にもなりうる。流通と遮断の両面性。もちろん言葉は姿を見せないが、比喩、暗喩は想像力をもって人を鼓舞する。


 男が女に送る薔薇には、美しい情熱が籠められている。美しい女を指して「薔薇のようだ!」と賛美する。薔薇は美しさの仲介であり、同質である。姿形美しく香しい薔薇という自然の産物には人心を酔わせる魔力が潜んでいる。


 しかし、美しい言葉の裏には嘘があり、凶器をも潜ませている可能性がある、その二面性。
 美しい薔薇から立ち上る妖気は掴みどころがなく捕えようとすれば逃げていく幻影である。


 そして、命あるものの定めとして、死を免れない。『美しい言葉』は永遠でないことの証明でもある。
 心を酔わせ、惑わせる美しい言葉の真偽。
 言葉は未来永劫語り伝えられていくと信じられているが、万年、億年先の未来に果たして残存しているだろうか。

 一輪の薔薇に差し替えた『美しい言葉』への深いため息である。


(写真は国立新美術館『マグリット展』図録より)

『銀河鉄道の夜』32。

2015-07-30 06:17:47 | 宮沢賢治
 ジョバンニはすぐ入口から三番目の高い卓子に座った人の所へ行っておじぎをしました。


☆新しい講(はなし)は、散(バラバラにして)番(組み合わせていること)を黙っている。
 考(思いめぐらし判断する)を託(たよりにしてまかせる)詞(言葉)の図りごとであり、緒(もろもろ)交(入り組んでいる)。

『城』2037。

2015-07-30 06:02:25 | カフカ覚書
おれが有能で信用できる男だということも、わかってもらえて、その噂が近所にひろまり、やがて下男としてどこかに住みこむこともできたかもしれない。


☆わたし自身が近隣の人として信用できるように思われ、おおかた下男として、どこか、先祖の宿ぐらいは見つけられたかもしれな
い。