続・浜田節子の記録

書いておくべきことをひたすら書いていく小さなわたしの記録。

マグリット《海から来た男》

2015-10-01 07:16:17 | 美術ノート
 奇怪な絵であり、不条理に満ちている。
 暗雲漂う不吉な海、しかし、男の立つ砂浜には陽の光が射している。
 男は黒尽くめである、それが着衣なのか単に黒の彩色なのかは不明であり、海から来たと言っているので生きているという印象を持つが、物体である可能性も否定できない。
 男は取っ手を握り、今しも下そうとしている。下に引けば何かを起動する装置のように見える。
 顔の部分は謎の符号(左右対称)が描かれた平板な板であり、彼の表情は隠蔽されている。

 男の立ち位置は二つのプレートにそれぞれ跨っている。今は正常に立っているが、プレートは移動する可能性がある。つまり安定に見えて、きわめて不安定な立ち位置なのであり、危機を内包している。

 もしかして椅子、もしかして飾り棚…屋外ではなく室内の設えの部分がある。プレートも板状であり、もしかして男は海岸ではなく室内にいるのではないかという憶測がちらつく。(ちなみに地球のプレートも最大10cmほど動いている)

 屋外と屋内、安定と不安定、重力と無重力状態、暗雲と光射す影・・・すべてが矛盾している光景。
 男はどこから見ても人類であるらしい。
 生命の誕生は海からであれば、生物はすべて海から来たということであることに間違いないが、ここに描かれた対象物に古めかしい太古を思わせるものはなく、すべて近代の産物である。


 『海から来た男』という作品は《存在における矛盾》を衝いている。

 生命誕生から現在に至るまでの膨大な時間の溝を隠しており、ガタッと取っ手を引けば、劇的変化が見られるような予兆がある。
 存在の不条理を鑑賞者に向かって問い、返事(答え)を求めているのかもしれない。


(写真は『マグリット』㈱東京美術より)

『銀河鉄道の夜』95。

2015-10-01 06:42:42 | 宮沢賢治
    五、天気輪の柱

 牧場のうしろはゆるい丘になって、その黒い平らな頂上は、北の大熊星の下に、ぼんやりふだんよりも低く連なって見えました。


☆展(ひろがる)記は、輪(順番に回り)註(意味を解き明かす)
 僕(わたくし)は、常に杞憂していると、告げる。
 閉(隠している)懲(過ちを繰り返さないようにこらしめる)の渉(文章)は、北(逃げる)代わりに、幽(死者の世界)で償う科(とが)の定(きまり)を聯(並べてつなげ)兼ねている。

『城』2100。

2015-10-01 06:33:43 | カフカ覚書
「そんなにいきまかないでちょうだい」と、アマーリアは言った。「わたしはちっとも知らないんです。教えてもらいたいという気になることもありません。あなたのことを考えても、そんな気にはなりません。あなたのためなら、いろんなことをしてあげたいところなんですけれどね。なにしろ、いまもおっしゃったように、これでもなかなか気だてがやさしいほうですからね。


☆「冷静になってください」と、アマーリア(作り話/マリア)は言った。先祖の神聖さではありません。考えたこともありません。先祖の神聖さを失ってまで尊敬するあなたの先祖の汚点を考慮することは出来ません。色々なことをしてあげたいのですが、どうしたらわたしたちが善良であることを言えるのでしょう。