室内に置かれた幾枚かの変形のパネル。
グレーの奇妙な流れの色面に付着した鈴(世間一般の怒り・噂・流布≒意見/声)、雲の浮かぶ青空(自然)、緑の樹木・林(平和)、そして、それぞれに付着した暗黒画面のパネル。
これらは何を意味するのだろう。
パネルは、それぞれ壁面に影を映している。
しかし、よく見ると左から二番目のパネルの影は壁や隣接の青空のパネルの淵にはかかっているものの、青空そのものの画面には反映していない。
青空はパネルの中の画像ではなく、突き抜けて見える青空ではないか。
グレーの画面や緑の画面も、パネルの影は壁やパネルの隣接にはかかっているが、中のグレーの画面や緑の画面にはかかっていない。暗黒の画面は影に同化するから不明であるけれど、同じ類と捉えてもいいかもしれないし、違うかもしれない。曖昧な領域である。
これは何を意味するのだろう。
宮殿というにはあまりに簡素な設えである。
しかし、Curtain/遮るものという解釈であれば、これら《グレーの画面における怒り・噂・流布≒意見/声》《青空の大いなる自由》《緑の安らぎ=平和》を遮っている大きな建物(帝国・社会)を指しているのではないか。
それぞれのパネルの圧迫を受けたような変形と傍らに付着した暗黒パネルは、まさに民衆の声・自由・平和を遮るCurtainであるが、安定的に置かれた様子(社会)は動かし難い。
社会の要望/声・自由・平和を遮る圧政(宮殿)に、沈黙の抗議をしているのではないか・・・黙した過激である。
(写真は国立新美術館『マグリット』展・図録より)