『旅の思い出』〔Memory of Voyage〕
Voyageは航海、海の旅である。
しかしこの絵の中に海(水)はない。それどころか硬質に石化された対象物が配置された光景である。
(どういうことだろう)
描かれた室内の光景は日常の一コマのようにも見えるが、人間の傍らに百獣の王である恐ろしいライオンが大人しく座しているなど考えられない。人物(男)とライオンの眼差しの方向(視点)は逆である。
比喩…ライオンは権力、権勢を暗示しているかもしれない。額縁の中のバベルの塔に似た建屋は宗教(祈りの根源)であり、男の手に持つ本は人類の英知を象徴している。
しかし、無言であり不動の膠着した状態には時間がない。停止した時間はまるで魔法にかけられたように幻想的な空間を醸し出している。
すべてが無機質である石化は何を意味しているのだろう。
現代社会への沈黙の否定、抗議、体制(権力)への静かなる反抗。
「わたくしは黙るほか術を知らない」だから、解釈も拒むし真意を推しはかられても困惑するだけである。
海底から形成された地層の上の大陸(社会)、今再び海の底を旅し、静かに海底の岩石に戻ろう。
太古の昔に思いを馳せ、太古の昔に還ることを想定すれば、今わたしが置かれている現代社会も、きっと『旅の想い出』と化すに違いない。
マグリットのつぶやきが聞こえる。
(写真は国立新美術館『マグリット』展・図録より)
またすぐ眼の下のまちまでがやっぱりぼんやりしたたくさんの星の集まりか一つの大きなけむりかのやうに見えるやうに思ひました。
☆元(もと)を化(形、性質を変えて別のものになる)にした章(文章)は、周(あまねく)逸(かくした)他意を兼ねた旨(考え)である。
☆元(もと)を化(形、性質を変えて別のものになる)にした章(文章)は、周(あまねく)逸(かくした)他意を兼ねた旨(考え)である。
あの子にちっては、わたしたちは、あかの他人なのですわ。あなたは、世間のこともたくさんご存じですし、よその土地からいらっしゃった人です。そのあなたからごらんになっても、あの子は、特別に賢いように見えないでしょうか」
☆彼女にとって、わたしたちは異郷の人間なんです。あなたは死における人間としての尊厳を持っていらっしゃいます。異郷の地(現世)から来た人のように見えます。そのあなたから見て、彼女は特別利口だと思いませんか。
☆彼女にとって、わたしたちは異郷の人間なんです。あなたは死における人間としての尊厳を持っていらっしゃいます。異郷の地(現世)から来た人のように見えます。そのあなたから見て、彼女は特別利口だと思いませんか。