荒涼とした連峰、四角な木箱の中には成長を抑えらた樹があり、箱の内部には微妙に圧縮された感があるものの、等分に並んだ点描が描かれている。
ただ、画面左上からの光の陰影のようであるけれど、箱の内部である左側が右の面に見られる陰影に比して明るいのはなぜか。不条理がまかり通る空間である暗示だろうか。
そして白い点描は穴なのだろうか。右の外面は穴のないフラットな板であるが、内部は垣間見ることはできない。箱の奥は影が差している(暗い)のに、点描は白い(明るい)ということは、やはり穴である可能性が強い。通風というより外部との連絡穴であるような気がしなくもない。端的に言えば監視である。
左側の地底から突き出たような管は裂け目があり、管としての機能は十分ではない。情報漏洩、伝達の不行き届き、下からの声は届くようでいて届かない。
木箱の背後にはホッチキスの針を巨大にしたような白い角柱の物、円柱でできた物がそれぞれ後続している。その中間に天にも届くかと思うほどに伸びている円柱も在る。
空は黄緑色という見たことのない彩色、不気味である。
これらの条件が導きだす時空とは何だろう。
黒い山、すなわち荒野である。手前の赤い地面にも草木は見えない。しかし、その上にある木箱には今しも伸びようとする樹が見えるが、箱の中で圧迫され成長を阻止されている。箱の内部の等しく並んだ点描は、見せかけの平等の暗示ではないか。
下の方から延びている管は《声》を盗聴しようとする不完全な器具のように見える。
箱に後続する白いコの字型の物は抑え/圧迫、あるいは拘束のように見える。
点をも突き刺すような円管は揺るぎない力を示唆する、背後に隠れているが、左右にぶれることのない直立は最強ではないか。
不気味な空の色は自然を否定している。
ここに描かれている線描は樹を覗けばすべて直線で形成されているものばかりである。直線というものは自然界にはない。因って、人為の世界を具現化していると思われる。
ハゲタカは動物の死体を餌食にする強欲な鳥である。何もかも食い尽くした後の荒涼、新しく出てくる樹/勢力は何が何でも抑え込み、背後には予備の拘束が待っているという状況。
『ハゲタカの公園』が意味するものは、恐ろしい末世、荒廃の圧政を揶揄したものではないか。
不毛の地に伸びた樹(自然/条理)は囲まれた閉塞の中で抑えられている。
作家自身は決して語らず、ただ静かに提示して見せた世界である。
(写真は国立新美術館『マグリット』展・図録より)