続・浜田節子の記録

書いておくべきことをひたすら書いていく小さなわたしの記録。

マグリット『美しい虜』

2015-10-09 06:55:21 | 美術ノート
『美しい虜』つまり、『まことしやかな魅了』ということだと思う。

 確かに普通に鑑賞するというより、異なる意味での仕掛けに心を奪われてしまうという作品である。

 この風景画には巧みに隠蔽されたもう一つの空間(景色)が内在する。
 まず、平原の大木が避けようもなく存在し、視線を集中させる。強い線引きである黒く太い線はこの作品の、ある意味、意味のない対象物に見えるが、この線がキャンバスの描かれた不思議を弱めるという重要な働きをしている。もちろん問題の核はこの風景に同化したようなキャンバスの絵にあり、関心はそこに集中せざるを得ない。

 描かれた作品が描いている景色に合致するなどと言うことは現実にはありえない。しかし、作品においてはそれがあたかもそういう一致が真実であるかのような錯視を印象付けている。

 キャンバスに描かれた景色がキャンバスに隠れているか否かは不明である。あると思えばあるし、無いと思えば無いという不確実性を描き出し、幾重にもイメージを展開できる構成になっている。
 平原に見えるが、俯瞰の図であり、小高い位置から見下ろしている。

 この牧歌的な風景は、精神を奇妙にざわつかせる。この作品を受け入れながら、どこか違和感を拭えないという計算された『まことしやかな魅了』の結実である。


(写真は新国立美術館『マグリット展』図録より)

『銀河鉄道の夜』103。

2015-10-09 06:40:26 | 宮沢賢治
 そこから汽車の音が聞こえてきました。その小さな列車の窓は一列小さく赤く見え、その中にはたくさんの旅人が、苹果を剥いたり、わらったり、いろいろな風にしtゐると考へますと、ジョバンニは、もう何とも云へずかなしくなって、また眼をそらに挙げました。


☆記は赦(罪や過ちを許すが隠れている文である。
 章(文章)は裂(バラバラに離れ)遮(行く手を阻む)。
 捜(探し求める)逸(隠れた)烈(精神が強く正しい)の衝(重要なところ)の釈(意味を解き明かす)を現わす。
 註(意味を解き明かし)慮(あれこれ思いめぐらせる)図りごとを蔽(見えないようにしている)。
 過ちを吐く怖れは、恒(つね)に苛(むごさ)を運び、厳しさを許(認める)。

『城』2108。

2015-10-09 06:26:40 | カフカ覚書
「それは、ほんとうですわ」と、オルガは、まじめな口調になって、「あなたがおもっていらっしゃっるより以上にはほんとうですわ。アマーリアは、わたしより年下だし、バルナバスよりもまだ若いんです。だけど、良きにつけ悪しきにつけ、家族のなかで決定権をもっているのは、あの子なんです。もちろん、あの子は良いところも悪いところも、ほかの者よりたくさんもっていますわ」


☆「それは本当です」オルガ(機関/仲介者)はまじめに言った。アマーリア(作り話・マリア)は処女だし、バルナバス(北極星/死の入口)より新しいんです。
 一族のなかでは、良きにつけ悪しきにつけ彼女が決定するのです。もちろん、あの子は良いところも悪いところもありますが、すべての中で多くを支えているのです。