続・浜田節子の記録

書いておくべきことをひたすら書いていく小さなわたしの記録。

マグリット『冒険の衣服』

2015-10-28 06:06:30 | 美術ノート

 裸身の女が仰向けに横たわっている。白い布を頭から被り膝下までを被っているが、身体の前部は開いているので裸身であることがわかる。
 彼女に接するかにオサガメが泳いでいるということは、ここは《海中/水底》であるらしい。

 水の底…彼女の下には積み重ねられた地層(年月)が見える。
 女は、オサガメを拒否しているようでも、迎えようとしているようでもあり、捉えようとしているとも思える。
 裸身の女を描いて、「冒険の衣服」という意味は何だろう。白い布にくるまれた女は、すでに死んでいるのかもしれない。とすると、オサガメは霊界の使者なのだろうか。海の底、水底に沈み込んだ女の願い。

 この両手を上げるポーズというのは何を示唆しているのだろう。女は眼を閉じ、夢想している。
 一億年も前から生息しているというオサガメには甲羅がなく、堅い革のような皮膚に覆われているらしい。太古の夢に女は誘われている。

 女の着衣は白い死に装束である。死を決意した人の着衣である白い布を羽織った女の切なる願いは億年の夢幻への逃避行だろうか。
 両手をあげた無防備な女の肢体は、この世(現世)への執着を棄て生身のまま太古の夢を見ているのかもしれない。
 地層深く沈み込んだ水の底には幸せな眠りが約束されていると信じたい。

 『冒険の衣服』とは、大胆な企てである死を覚悟した人の装束ではないか。胸に痛い作品である。


(写真は国立新美術館『マグリット』展・図録より)


『銀河鉄道の夜』122。

2015-10-28 05:53:34 | 宮沢賢治

「あゝしまった。ぼく、水筒を忘れてきた。スケッチ帳も忘れてきた。けれど構わない。もうぢき白鳥の停車場だから。ぼく、白鳥を見るなら、ほんたうにすきだ。川の遠くを飛んでゐたって、ぼくはきっと見える。」


☆推しはかる答えの某(なにがし)は、懲(過ちを繰り返さないようにこらしめる)謀(はかりごと/計画)の講(はなし)であると吐く。重なる態(ありさま)は常であると吐く。重ねて現れる千(たくさん)の縁(かかわりあい)は秘(人に見せないように隠す)件(ことがら)である。


『城」2127。

2015-10-28 05:41:15 | カフカ覚書

「あるいはね」と、オルガは言った。「もちろん、あなたがどういう意味でおっしゃっているのか、わたしにはわかりかねますけれど。もしかしたら、ほめて言っていらっしゃるのかもしれませんね。だけど、官服のことですが、これこそ、バルナバスの心配の種のひとつなのです。そして、わたしたちは心配ごとをともにしていますから、わたしの心配の種でもあるのです。


☆「もしかすると」とオルガ(機関・仲介者)は言った。もちろん、なたがどういう意味で言っているのか知りません。もしかしたら、それどころか、ほめているのかもしれません。だけど、虚報の力のことですが、これこそバルナバス(北極星/生死の転換点)の先祖の心配なのです。そしてわたしたち共有の心配なのです。