続・浜田節子の記録

書いておくべきことをひたすら書いていく小さなわたしの記録。

マグリット『無題』

2015-10-21 10:58:27 | 美術ノート

 女と男を思わせる図である。
 女を想起させる方は立体であり、男の方は平面である。
 女の方が男の方よりはるかに大きい。
 女に見える方には樹の枝が伸び葉が繁っている。
 双方には楽譜が描かれている。
 床面はコンクリートのような人工的な仕上げであり、洒落たフェンスで外界と区切られているが、影が切断されているということは、この床面が高い位置にあることを思わせる。
 遠景は空白であるが、上方に黄色が認められる。

 条件はこれだけである。
 そして『無題』 Untitled

 これは何を意味しているのだろう。
 位置(高さや場所)を想定できない領域、わずかに黄色に染められた怪しい天空から推して、現世ではない。この空漠は、すでにこの世(現実)の光景とは思われない。

 一つの劇中劇…豊かな女は、すでに再生の枝葉を伸ばし、描かれた音符はリズミカルで楽しげであるのに対し、薄っぺらな平面で直立する男の楽譜はひどく単調である。
 紳士(男)は女の豊満さにひどく萎縮している、凛と虚勢を張っているがその軽薄短小は明白である。

 Untitled・・・肩書も称号もない冥府(あるいは精神界)において、女の強さ逞しさは紳士(男)の比ではない。

 どことなくユーモラスな空想を誘う皮肉な作品である。


(写真は国立新美術館『マグリット』展・図録より)


『銀河鉄道の夜』115。

2015-10-21 10:44:03 | 宮沢賢治

 すぐ前の席に、ぬれたやうにまっ黒な上着を北、せいの高い子供が、窓から頭を出して外を見てゐるのに気が付きました。


☆全ての責(咎めるべき積み)を告げる。
 償いの鬼(死者の魂)を惹きつける考えである。
 総てを等しく推しはかる我意が現れる記は、腑(心の中)にある。


『城』2120。

2015-10-21 10:37:44 | カフカ覚書

 Kはうなずいた。いまではもう家へ帰ることは考えていなかった。「バルナバスは、自分だけのお仕着せももっていますね」
「ああ、あの上衣のことですか。いいえ、あれはね、あの子が使者になるよりまえに、アマーリアがこしらえてやったんです。


☆Kはうなずいた。いまではもう故郷(現世)へ帰ることを考えていなかった。「バルナバス(北極市/生死の転換点)は自分だけのお仕着せを持っていますね」「ああ、あの快走帆船のことですか。いいえ、彼がまだ小舟になる前のアマーリア(作り話/マリア)の駄作です。