続・浜田節子の記録

書いておくべきことをひたすら書いていく小さなわたしの記録。

M『困難な航海』

2021-09-27 06:48:54 | 美術ノート

   『困難な航海』

 航海というのはAからBへ航るということである。
 雨風嵐・落雷の窓外、猛威、生き死にを賭けた航海。船の傾斜には鬼気迫るものがある。

 暗い海に比して、手前の部屋の明るさは不気味でもある。立てかけられた平板な板は開口の仕切り板だったろうか…人為的に刻まれた四角な切り口がそれぞれの板にいくつも見える。
 AからBを覗く、B(海上)からは決して見えないAの光景。
 Aは来世、Bは現世の想像は容易につく。BからAへの道はない、BからAへは必至の道が用意されている。

 現世の荒波を見つめる眼はある、木製のビルボケは肉体を失った死者の魂に違いない。傍らの卓には白い手に抑えられた赤い鳩、鳩は『大家族』に見る鳩かもしれず、こちら(来世)でも大家族を阻止している。卓の足も微妙に脆弱であり、ビルボケの立ち姿も微妙に傾いでいる。吹き込む風はカーテンを巻き上げているにもかかわらず・・・。

 困難な航海、来世への航海はたしかに困難であるに違いない。

 写真は『マグリット』展・図録より


『水仙月の四日』14。

2021-09-27 06:17:42 | 宮沢賢治

 雪婆んごは、遠くへ出かけて居りました。(略)雲を越えて、遠くへでかけてゐたのです。(略)
 お日さまは、空のずうつと遠くのすきとほつたつめたいとこ・・・。

 続いてカシオピイアやアンドロメダの歌で天球を仰ぎ、物語の領域を宇宙、あるいは仮想の世界へと誘っている。

雪狼のうしろから・・・雪童子がゆつくりあるいてきました。雪童子はまつ青なそらをみあげて見えない星に叫びました。その空からは青びかりが波になつてわくわくと降り、雪狼どもはずうつと遠くで・・・。

 雪狼のうしろにいたはずの雪童子が「しゆ、戻れつたら、しゆ、」と𠮟ると、雪童子の影法師は、ぎらつと白いひかりに変り狼どもは耳をたてて一さんに戻って来るという位置関係。

☆これは今現代のアニメの手法である。時空をいとも簡単に有無を言わせず飛んで跳ねる、しかも距離間はとてつもなく離れ、変幻自在な時間と空間を設定した物語である。


『飯島晴子』(私的解釈)夏暁の。

2021-09-26 06:10:45 | 飯島晴子

   夏暁のみにくき人を憶ひけり

 夏暁はカ・ギョウと読んで、化、業。
 みにくき(見難)はケン・ナンと読んで、験、軟。
 人を憶ひけりはジン・オクと読んで、訊、臆。
☆化(形、性質を掛けて別のものになる)業(努力してする仕事)を験(調べる)。
 軟(しなやか)に訊(問いただし)臆(推しはかる)。

 夏暁はゲ・ギョウと読んで、解、形。
 みにくき(見難)はケン・ナンと読んで、兼、何。
 人を憶ひけりはニン・オクと読んで、認、億。
☆解(バラバラに離れる)形を兼ねる。
 何かを認(見分け)億(思いを巡らす)。

 夏暁はカ・ギョウと読んで、荷、仰。
 みにくき(見難)はケン・ナンと読んで、検、納。
 人を憶ひけりはニン・オクと読んで、任、措く。
☆荷を仰ぎ検(調べ)納める任(務め)を措く(動作、状態を継続させる)。

※夏暁、夏の夜明けは早い。夜遅くまで熱中して仕事に励んでいるあなたは恐らく、この夜明けの清々しさを知らないのではないか。そんなあなたのことを憶っている。


『飯島晴子』(私的解釈)音もなく。

2021-09-25 06:57:07 | 飯島晴子

   音もなく山を走れり星まつり

 音もなく(音無)はイン・ブと読んで、殷、舞。
 山を走れり(山走)はセン・ソウと読んで、鮮、装。
 星まつり(星祭)はショウ・サイと読んで、象・彩。
☆殷(さかん)に舞う鮮(あざやかな)装いの象(すがた)の彩(美しい色どり)。

 音もなく(音無)はイン・ブと読んで、隠、部。
 山を走れり(山走)はセン・ソウと読んで、千、層。
 星まつり(星祭)はショウ・サイと読んで、章、細。
☆隠して部(区分けしている)。
 千(たくさん)の層(幾重にも重なる)章の細(細密)がある。

 音もなく(音無)はイン・ブと読んで、韻、捕。
 山を走れりはセン・ソウと読んで、選、創。
 星まつり(星祭)はショウ・サイと読んで、照、再。
☆韻(韻)を捕(とらえて)選(多くの中からえらぶ)。
 創(作って)照(見比べ)再(繰り返し見る)。


『飯島晴子』(私的解釈)贅肉を。

2021-09-24 07:30:01 | 飯島晴子

   贅肉を炙れば青き芒たつ

 贅肉はゼイ・ニクと読んで、脆、難。
 炙れば青きはシャ・ショウと読んで、視野、章。
 芒たつ(芒立)はボウ・リツと読んで、防、立。
☆脆(壊れやすく)難(困難な)視野(思考・見解)の章である。
 防(あらかじめ用心し)立(成り立たせている)。

 贅肉はゼイ・ニクと読んで、贅、肉。
 炙れば青きはシャ・ショウと読んで、捨、象。
 芒たつ(芒立)はボウ・リュウと読んで、芒、留。
☆贅(よけいな)肉を捨てると、象(すがた)は芒に留まる。

 贅肉はゼイ・ニクと読んで、脆、肉。
 炙れば青きはシャ・ショウと読んで、捨、承。
 芒たつ(芒立)はボウ・リツと読んで、望、律。
☆脆(もろい)肉(血縁)は捨(ほおっておく)。
 承(相手の意を受け)望む律(きまり)がある。


M『桟敷席』2.

2021-09-24 07:00:43 | 美術ノート

 双頭の人は画面の前を向き、窓から劇場をのぞく少女は背中を見せている。この桟敷席は途方もなく続く広がりがあるのではないか。いわば、来世、冥府の広がりであり、桟敷席は現世と結ぶ接点、隔てると言った方がいいかもしれない。

 少女の髪の毛は腰まで伸びている。時間、ずっと長い時間現世(劇場)を見つめている、現世への執着に思える。
 一方、双頭の人物は男女の境を消失していく様ではないか。人間としての姿かたちを変形させていく時間の流れ…ここは相当に長い時間がゆっくり流れている。

 敢えて一つの案をいうならば、少女はマグリットの母であり、双頭の人物は彼女の父母(先祖)、現世に未練を残す少女は先に逝った父母に見守られているという図ではないか。天国へ行った母を一人にさせないマグリットの心情のような気がしてならない。

 そして常に母(少女)に見守られている自分であると。母は女であってはならず神聖なる少女のままの守り神であってほしいというマグリットの願いだと憶う。


 写真は『マグリット』展・図録より


『水仙月の四日』13。

2021-09-24 06:26:43 | 宮沢賢治

 雪童子は、風のやうに象の丘にのぼりました。

 雪婆んごは(略)ちぢれたぎらぎらの雲を越えて、遠くへでかけてゐたのです。

 雪狼は(略)空をかけまはりもするのです。

 雪童子、雪婆んご、雪狼は重力に無関係に流動する気体(目に見えないもの)であり、子供(死の境界を彷徨するもの)をめぐり、現世と来世を行ったり来たりする神的存在である。

 二疋の雪狼は(略)象の頭のかたちをした、雪丘の上の方をあるいてゐました。
 雪童子は、風のやうに象の丘にのぼしました。

 象はショウと読んで、招(手招き)、あの世へ招く入り口ではないか。

※すべて二重の風景である賢治の作品、現世における救済、来世からの救済の二つが重なり合う構成だと思う。


『飯島晴子』(私的解釈)谷抜ける。

2021-09-23 07:10:53 | 飯島晴子

   谷抜ける著莪のかたむき忘れしよ

 谷抜けるはコク・バツと読んで、克、伐。
 著莪はチョ・ガと読んで、儲、臥。
 かたむき忘れしよ(傾忘)はケイ・ボウと読んで、計、謀。
☆克(力を尽くして)で伐(木を切る)。と読んで
 儲(取って置き)臥(横にする)計算(見積もる)謀(計画)がある。

 谷抜けるはコク・バツと読んで、穀、抜。
 著莪はチョ・ガと読んで、貯、餓。
 かたむき忘れしよ(傾忘)はケイ・ボウと読んで、警、防。
☆穀(穀物)を伐(引いて取り出し)貯(たくわえる)。
 餓(食が足りなくて生命を維持できなくなる)の警(守り)と防(備え)である。

 谷抜けるはコク・バツと読んで、谷・跋。
 著莪はチョ・ガと読んで、猪、芽。
 かたむき忘れしよ(傾忘)はケイ・ボウと読んで、渓、防。
☆谷を跋(歩き回る)と、猪の芽(兆し/気配)がある。
 渓谷(谷間)には防(あらかじめ用心する)。

※谷を抜けるように咲く著莪(胡蝶花)の景色を忘れないという感慨。


『飯島晴子』(私的解釈)花茣蓙の。

2021-09-23 06:33:29 | 飯島晴子

   花茣蓙のをばはけむりをあげて燃ゆ

 花茣蓙はカ・ゴ・ザと読んで、靴、後、挫。
 をばはけむりを(伯母煙)はハク・ボ・エンと読んで、剥、模、怨。
 あげて燃ゆ(上燃)はジョウ・ネンと読んで、常、捻。
☆靴の後ろを挫いて剥(むけた)模(ありさま)を怨(恨めしく思う)。
 常(いつも)捻ってしまう。

 花茣蓙はカ・ゴ・ザと読んで、夏、娯、座。
 をばはけむりを(伯母煙)はハク・ボ・エンと読んで、博、暮、掩。
 あげて燃ゆ(上燃)はショウ・ネンと読んで、星、然。
☆夏の娯(楽しさ)座(星の集まり)は博(大きく広がっている)。
 暮(日が暮れる)と、掩(隠れていた)星が然(そのとおり)になる。

 花茣蓙はカ・ゴ・ハクと読んで、歌、語、座。
 をばはけむりを(伯母煙)はハク・ボ・エンと読んで、迫、簿、縁。
 あげて燃え(上燃)はジョウ・ネンと読んで、常、念。
☆歌の語(言葉)の座りに迫る。
 簿(ノート)で縁(関わり合い)を常に念(考えている)。

 花茣蓙はカ・ゴ・ザと読んで、加、護、座。
☆加護(神仏が助け守ること)の座(場所)で伯母は〈けむりをあげて燃ゆ〉姿かたちを昇華し、成仏いたしました。


『飯島晴子』(私的解釈)わが土鳩。

2021-09-22 07:40:15 | 飯島晴子

   わが土鳩鳴く七月の火星かな

 わが土鳩(我土鳩)はガ・ド・キュウと読んで、牙、怒、泣。
 鳴く七ウ月はメイ・シツ・ガツと読んで、冥、悉、合。
 火星はカ・セイと読んで、和、正。
☆牙(きばをむき)怒(いかり)泣くのは冥(おろか)である。
 悉(すべて)合わせて和(争いを納める)のは正(道徳的に正しいこと)である。

 わが土鳩(我土鳩)はガ・ト・キュウと読んで、我、図、求。
 鳴く七月はメイ・シツ・ガツと読んで、命、質、合。
 火星はカ・ショウと読んで、加、章。
☆我(わたくし)は図(はかりごと)を求める。
 命(めぐりあわせ)の質(内容)を合わせて加える章がある。

 わが土鳩(我土鳩)はガ・ト・キュウと読んで、臥、徒、究。
 鳴く七月はメイ・シツ・ゴウと読んで、瞑、質、合。
 火星はカセイと読んで、火星。
☆臥(伏せる)徒(無駄)を究(つき詰め)瞑(目を閉じる)。
 質(内容)は合(太陽と及んで惑星が同一方向にある状態)の火星である。
※有るが無いも同じである状態であるが、確かに有り、確かに見えない(無い)。

 わが土鳩(我土鳩)はガ・ド・キュウと読んで、我、ド、級。
 鳴く七月はメイ・シツ・ゴウと読んで、迷、悉、合。
 火星はカ・ショウと読んで、化、章。
☆我がド級の迷い、悉(すべて)合(一つにあわせると)化(形、性質を変えて別のものになる)の章がある。