トランプ米大統領がツイートを連発しているが「2020年米大統領選挙」という「篩」にかけると比較的分かりやすい。「篩」にかけると言われても今の若者の多くは「篩」(ふるい)そのものの存在を知らないかもしれない。「篩」をヤフーのブログで調べた。「円形・方形の枠の下に、網を張った道具。粒状大の物を入れて振って、網目を通る細かいものをより分ける。転じて、条件・基準に合わないものを除外する。」と出ている。古い話で恐縮だが、50年前の日米繊維戦争は1968年の米大統領選挙戦でニクソン候補が米繊維産業を地盤とするノースカロライナ州とサウスカロライナ州2州を抑え「僅差で」大統領になったことが事の始まりだ。自分が大統領になれば日本含む極東の香港、台湾、韓国からの化学繊維の輸入を規制する「約束」が存在した。「僅差で」勝利した大統領は「公約」に縛られる。トランプ米大統領が「公約」に固執するのは対抗馬クリントンに僅差で勝ったことと符合する。
今は知らないが当時、ATMI(米繊維製造業連盟)という屈強の繊維業界団体が存在していた。化繊協会の機関誌「化繊月報」の記者の資格でロスアンゼルスで開かれたATMI総会の一日にさる日本の新聞記者さんとご一緒したことが一度ある。彼らの極めつきの輸入規制のスローガンは「裸では戦争出来ない。裸足では戦争できない。」だった。ニクソン候補が繊維規制を約束していたことは知る由もなかったが ATMI総会会場には全く悲壮感が感じられず、勝利を既に確信していたかのような雰囲気で盛り上がっていた。事態はこじれる。今では佐藤首相・ニクソン米大統領間の「密約」は米公文書館で明らかだが、日本は一向に輸入規制に動かなかった。「約束」を実行しない佐藤首相に業を煮やしたニクソン大統領は佐藤首相が後に託した田中角栄首相との間で日米繊維戦争は終結したが米国の日本頭越し中国承認、円相場切り上げという二の矢、三の矢で日米外交史上に汚点を残したとされている。
余談だが米労働省で白人黒人別の繊維雇用統計を入手して日本へ送った資料が日米繊維交渉の口火を切った、俗にいう「高橋・ミッション」の場で披歴されたと後で知った。米国全体の繊維消費に占める日本からの輸入量は1%に満たない。黒人雇用に大きく依存していた米繊維産業は痛みが倍加される。被害には①キリで1点をつく痛みと②ドーンと分銅をぶつけられて生じる痛みと2分される。ベトナム戦争渦中にあったことで米国は前者の黒人雇用に与える被害を強調した可能性が高い。当時、駐米下田大使は「日本の繊維業界は土足で米国の床の間に踏み込んだ」とどこの国の大使かと耳を疑う発言もあったと伝えられる。
戦争と繊維輸入規制との関連では日本からのナイロン製のコンピューター印字用織物が米関税委員会からダンピング(廉売)提訴を受けた。先に触れたが当時、米国はベトナム戦争渦中にあった。パラシュート用相場に安値のコンピュータ―印字用織物が入れば米繊維産業に潜在的脅威と米政府は訴えた。日本のナイロン印字織物は被害ありと認定され敗訴した。1938年、「石炭、水、空気から生まれた」とナイロンの発明者、カローザスは語った。ナイロンは世界のパンティストッキング市場を制覇した。月日は流れ、今や昔の物語である。(了)
今は知らないが当時、ATMI(米繊維製造業連盟)という屈強の繊維業界団体が存在していた。化繊協会の機関誌「化繊月報」の記者の資格でロスアンゼルスで開かれたATMI総会の一日にさる日本の新聞記者さんとご一緒したことが一度ある。彼らの極めつきの輸入規制のスローガンは「裸では戦争出来ない。裸足では戦争できない。」だった。ニクソン候補が繊維規制を約束していたことは知る由もなかったが ATMI総会会場には全く悲壮感が感じられず、勝利を既に確信していたかのような雰囲気で盛り上がっていた。事態はこじれる。今では佐藤首相・ニクソン米大統領間の「密約」は米公文書館で明らかだが、日本は一向に輸入規制に動かなかった。「約束」を実行しない佐藤首相に業を煮やしたニクソン大統領は佐藤首相が後に託した田中角栄首相との間で日米繊維戦争は終結したが米国の日本頭越し中国承認、円相場切り上げという二の矢、三の矢で日米外交史上に汚点を残したとされている。
余談だが米労働省で白人黒人別の繊維雇用統計を入手して日本へ送った資料が日米繊維交渉の口火を切った、俗にいう「高橋・ミッション」の場で披歴されたと後で知った。米国全体の繊維消費に占める日本からの輸入量は1%に満たない。黒人雇用に大きく依存していた米繊維産業は痛みが倍加される。被害には①キリで1点をつく痛みと②ドーンと分銅をぶつけられて生じる痛みと2分される。ベトナム戦争渦中にあったことで米国は前者の黒人雇用に与える被害を強調した可能性が高い。当時、駐米下田大使は「日本の繊維業界は土足で米国の床の間に踏み込んだ」とどこの国の大使かと耳を疑う発言もあったと伝えられる。
戦争と繊維輸入規制との関連では日本からのナイロン製のコンピューター印字用織物が米関税委員会からダンピング(廉売)提訴を受けた。先に触れたが当時、米国はベトナム戦争渦中にあった。パラシュート用相場に安値のコンピュータ―印字用織物が入れば米繊維産業に潜在的脅威と米政府は訴えた。日本のナイロン印字織物は被害ありと認定され敗訴した。1938年、「石炭、水、空気から生まれた」とナイロンの発明者、カローザスは語った。ナイロンは世界のパンティストッキング市場を制覇した。月日は流れ、今や昔の物語である。(了)