えげれすといえば、ベンジャミン・ブリテンのことも言っておかなくてはならない。比較的よく知られた「シンプルシンフォニー」もこれまたずんちゃ的な趣がある。また「青少年の為の管弦楽入門」という曲があるが、これは昔よく聴いた。小山田宗徳ナレーターの録音である。管弦楽のパート別の紹介している前半は、はいはい、という感じで、眠くなってくる。しかし、「最後にみんなでフーガを演奏します」というナレーターの一声とともに、天才的なフーガが始まり、おメメぱっちりにな……るのであるが、なぜかとても聴いていて恥ずかしい。印象としてはとにかく、高速の木曽踊りなのである。
ブリテンは、日本にも縁がある。「シンフォニア・ダ・レクイエム」は、例の、皇紀2600年奉祝曲の一つなのである。結局、いろいろ理由があって演奏拒否ということでお蔵入りとなった。早崎隆志氏によると「神武天皇ノ神霊ヲ讃フル奉祝楽曲ノ内容ヲ有セザル」(http://www.tcat.ne.jp/~eden/Music/dic/kouki2600.html)……とかいうことらしい。あのね、「西洋音楽」を各国に依頼しておいて、神武天皇ノ神霊も何もあったもんじゃなかろう……。ブリテンは、戦後、日本にやってきたときに、自分で日本初演をやって帰っていったらしい。いまこの曲を聴いて思うのだが、本当は演奏拒否ではなく、難しくて当時の日本人は演奏できなかったんじゃないのか? 他に各国から贈られた曲が4曲ほどあったような気がする。フランス代表のイベールの曲しか聴いたことがないが、ブリテンの曲は、このとき、日本に届いた曲の中で群を抜いた傑作である可能性が高い。
皇紀2600年奉祝曲をウィキペディアでしらべてみると、こんなことも書いてあった。
「作曲者に対する返礼 スタジオ録音されたSPレコード、印刷された楽譜とともに作曲者に送られた。また、織物なども贈ったようであるが、積んだ船が撃沈されたらしく、結局届かなかったという。リヒャルト・シュトラウスは当時寺の鐘を集めていて、作曲料の代わりにそれを送り、喜ばれた。」
……撃沈……鐘……
情けない……
ちなみに、ドイツ代表・リヒャルト・シュトラウスのその曲は、彼の曲の中でも最低ランクの曲とされ、お節介にも、N響の指揮者でもあったアシュケナージが録音しているけど、残念ながら私は聴いていない。シュトラウスが俗物でどうしようもやつだったという証拠にさえなっている曲であるが、いつか聴いてみたい。ちなみに構成はウィキペディアによると以下のようであるらしい。
1、海の情景(Meerszene)
2、桜祭り(Kirschblütenfest)
3、火山の噴火(Vulkanausbruch)
4、サムライの突撃(Angriff der Samurai)
5、天皇頌歌(Loblied auf den Kaiser)
……???
結論:日本はドイツじゃなくえげれすと組んどきゃよかった。
追記:以上を書いあと、ALTUSから5月に「皇紀二千六百年奉祝楽曲集」が発売決定ということを知った。なんと当時のSPの復刻である。最後に、ボーナストラックとして、陛下による玉音放送(日本終了のお知らせ)まで入っているらしい。この悪意丸出しのCDに期待である。さっそく注文した。