最近知ったのだが、地上波から時代劇が消滅しているそうである。わたくしの妹2などは幼少より時代劇がすきで(たぶん)、彼女の現在の日本好きに影響しているのかもしれない。時代劇は、日本の文化や歴史への入門として機能していた面があるのである。水戸光圀や吉宗がそこらへんを歩いたり白い馬で駆けたり、真っ昼間から桜吹雪のある白い肌をいきなりちらりと見せたり、命よりも大事なお金を投げて悪人を倒すなど、あり得ない展開はまあよいではないか。面白いから。ドラゴンボールと一緒です。最近30年ぐらい、これらを見ていないから、もしかしたら、時代劇は恐ろしく劣化してしまったのかもしれない。わたくしなぞ、水戸黄門といえば東野英治郎の顔しか浮かばない。逍遙がたしか言ったように、問題は勧善懲悪を模倣した劣化版である。
が……、わたくし思うに、小物の権力は絶対腐敗する、資本主義では商人のために権力が動いてる、庶民はあり得ないほど無力である、日本人は人間ではなく紋所や桜吹雪に恐怖する、正義は勝つべし、など、宗教なき日本人にとって、最低限の権力に対する智慧とモラルを教えていたような気がしないでもないのだ。無論、悪を庶民が自分で倒せない点や、警察的なものがヒーローになるのは、近代革命の観点からするとダメなのであろうが、まあ、我々の社会の革命は水戸黄門や暴れん坊将軍みたいな愛嬌あるキャラクターをシンボルにすべし、ということで「ええじゃないか」(ええわけないじゃないか)。これも30年ぐらい見ていないが、NHKの大河ドラマの時代劇は、ほぼ教養小説になってしまっているからあかん。ほっとくとどんどん善悪の彼岸へロマンチックに展開してしまうであろう。昼ドラみたいに(見たこと無いけど)。わたくしが大河ドラマでまともにみたものは「山河燃ゆ」である、林光のオープニングはまだ鼻歌で歌えるね。これが唯一最後のものであった。「時代」劇である。ただし、第二次世界大戦の。いまは何やってるか知らない。