夕方から読み始めたのは「世紀末美術」(高階秀爾、ちくま学芸文庫)。「万葉読本Ⅱ」はこの書物を読んでからにする。やはり美術関係の本を読まないとちょっと落ち着かない。
本日は著者の「新装版あとがき」と「文庫版あとがき」、鶴岡真弓の「解説」、そして著書の「結び」から読み始めた。この書物は1963年に発刊したとのこと。高階秀爾31歳のときである。構想は23~24歳ということだから、学生時代直後には構想していたようだ。
「(十九)世紀末の西欧世界は、ルネッサンスに開けた実り多き一日の黄昏を迎えようとしていた。ルネッサンスとともに「現実的なものにひそむ詩情」を見出した人間は、その後四世紀にわたって、その詩情を歌い続け、その芳醇な香りに陶酔していた。しかし、今やその明るい歌声も、‥世紀末の夕暮れとともに消え去ろうといていた。‥人間はようやく、その公開の華やかで多彩な成果にもかかわらず、ふたたび自己自身に対する疑惑と不信とに直面しようとしていた。二十世紀芸術に大きな意味を持つようになるさまざまの問題は、すべて十九世紀から二十世紀へのこの転換期に提出され、新しい発展を約束されていた。その意味でこの世紀末の時代は、十五世紀のルネッサンスによって幕を開けた西洋近世の終焉を告げるとともに、新しい時代の出現を予告する第二のルネッサンスの始まりでもあった。‥第二のルネッサンスが、第一のルネッサンスに比肩し得る豊かな成果を誇り得るか否かは、われわれ自身に課せられている‥」(「結び」)