ベートーヴェンのビアノソナタ第30から32番を聴いている。2021年の4月にこの曲の感想を3回に分けて記載していた。
素人の感想なので時間がたってから読むと赤面するが、図々しくもう一度アップしてみる。この時は楽譜を手にじっくりと聴いていた。
この時と変わらず、なぜか32番には馴染めない。しかし30番、31番は実に心地よく聞こえる。
★ベートーヴェン「ピアノソナタ第30番」
ルドルフ・ゼルキンの演奏のベートーヴェンのビアノソナタ第30番を聴いている。
第1楽章全体と第3楽章の主題が私にはとても印象的で、頭から離れない。どのように記譜されているのか、気になっていた。
弦楽器の楽譜とは違い、ピアノの譜面は右手と左手、両方にまたがって旋律が記されるので、ピアノの譜面を見てもなかなか旋律が頭の中に浮かんでこない。しかし曲を聴きながら旋律を追う楽しみがある。管弦楽曲のスコアよりも私に追いにくい。
しかし美しいと思った旋律がこのように記されているのか、という発見はうれしいものである。例えば第1楽章のA部分、右手の旋律だけが耳には聴こえてくる。しかし楽譜を見ると左でが16分音符を鳴らしている。これに気が付くと旋律に厚みを持たしていることがわかる。
同時にB部分の装飾音が印象に残る部分である。ベートーヴェンの装飾音というと第4番のシンフォニーを思い出してしまい、その執拗な繰り返しに私は閉口してしまうのだが、この曲では実に効果的で心地よい。
さらに第3楽章は主題と変奏であるが、主題と第1変奏、第4変奏が私好みの曲である。
主題の5小節目と6小節目にあらわれる装飾音の転がるような響きがこの曲全体を軽やかなものにしている。
その気分が第1変奏では、3小節目の転がるような5連部やそれぞれの小節に頻繁に表れる短い装飾音に引き継がれる。
こういう譜面を見ると、曲全体の美しさが譜面にあらわれていると感じる。
★ベートーヴェン「ピアノソナタ第31番」
この曲のもっとも気に入っているのは、第3楽章のフーガの前段に置かれた、アダージオ・マ・ノン・トロッポの部分。耳に心地よいのだが、楽譜を見ると、転調や複雑な速度表示などに惑わされるほど自在な変化が見られる。楽曲の形式にとらわれようとしないベートーヴェンの意志を強く感じる。
後半の8小節から26小節までは「嘆きの歌(Klagender Gesang)」と譜面に記されている。とても印象的である。バッハのヨハネ受難曲との関連があるというが、私はヨハネ受難曲を知らないのでなんとも言えない。この部分を聴くだけでも、満足しそうな気分になる。
★ベートーヴェン「ピアノソナタ第32番」
ベートーヴェンのビアノソナタ第32番を、楽譜を追いながら聴いている。しかしなかなか私にはなじめない曲である。
ゼルキンのCDを購入して、聴くのは何回目だろうか。動機や主題の執拗な繰り返しに耳が拒否反応を起こしてしまう。もう少し素直に聴けないのか、と自分にイライラしつつもどこか生理的に受け付けてくれない。
この曲になじむためにはもう少し時間がかかりそうである。無理をしてもたのしくないので、本日は2回だけにして、あきらめた。