気づかぬままに 秋の穴へと落ちてゆく
わたしを限りなく悲しませる秋の
目に見えない ひとつの穴
ここにいま ひとりの女が生きている
死にそうになって生きている
「なぜ生きるのか」
階段から転がり落ちても
鉢の底にへばりついても
なんの意味もなくても
大勢に笑われながらも
ここにたったいま 生きている女がいる
それはやっぱり わたしでしかありえない
世界には生きるチャンスをもらっても
意味を見出せないものがどれだけいるんだろう
かれらは、ほかの有望な連中といっしょに
朝は陽射しを眺め
喋ったり
笑ったり
夕方には飛んでゆく 雲を見つめたりする
有望な連中よ
わたしの腐った血族を絶やしてくれ
なめくじに塩をかけるように
蟻んこをつま先で踏み潰すように
捕らえたねずみを 河へ流すように
いい加減に
そして思い出してほしい
かつてそんなものが 生きていたってことを
メモの片隅に書き留めたりして
朱色の思いを馳せてくれ
けれども
ひとりの女は たぶんこれからも生きてゆくのだろう
気づかぬままに 秋の穴へと落ちてゆくだけ
1989.9.11作
わたしを限りなく悲しませる秋の
目に見えない ひとつの穴
ここにいま ひとりの女が生きている
死にそうになって生きている
「なぜ生きるのか」
階段から転がり落ちても
鉢の底にへばりついても
なんの意味もなくても
大勢に笑われながらも
ここにたったいま 生きている女がいる
それはやっぱり わたしでしかありえない
世界には生きるチャンスをもらっても
意味を見出せないものがどれだけいるんだろう
かれらは、ほかの有望な連中といっしょに
朝は陽射しを眺め
喋ったり
笑ったり
夕方には飛んでゆく 雲を見つめたりする
有望な連中よ
わたしの腐った血族を絶やしてくれ
なめくじに塩をかけるように
蟻んこをつま先で踏み潰すように
捕らえたねずみを 河へ流すように
いい加減に
そして思い出してほしい
かつてそんなものが 生きていたってことを
メモの片隅に書き留めたりして
朱色の思いを馳せてくれ
けれども
ひとりの女は たぶんこれからも生きてゆくのだろう
気づかぬままに 秋の穴へと落ちてゆくだけ
1989.9.11作