雨のにおいが好きだ
サビ臭いと言う人もいるけれど
私はその雨のにおいが好きだ
春
このひと言にして、あらゆることが物語られる春
だが、春の夜はハッキリせず 空気も薄い
刺激を求めて窓から乗り出すが
落ちたら危ないからすぐ座り込んだ
前の家の一階の電灯がまだ煌々とついている
なにをしているだろうと余計な思いが浮かんで消える
家は密集している
そして屋根は汚れて
すっかり湿っている
「人は自分が分からないまま死んでいく」
景色全体を圧迫して
霧が垂れ込めていて
山の外形さえつかめない
巨大なそれは餅のようにしっとりとして居る
その下の湖には ライ魚が棲んでいるだろうか
食用ガエルが棲んでいるだろうか
その食用ガエルを 食べる人間がいるだろうか
今夜は翔べない
ああ翔べないのだ
こんな重ったるい空の下では
こんな荒んだ呪われた町では
真横からゆるゆると這って来る風の中では
これでは決して二度と翼は上げられない
1986年~1988年.4.21
サビ臭いと言う人もいるけれど
私はその雨のにおいが好きだ
春
このひと言にして、あらゆることが物語られる春
だが、春の夜はハッキリせず 空気も薄い
刺激を求めて窓から乗り出すが
落ちたら危ないからすぐ座り込んだ
前の家の一階の電灯がまだ煌々とついている
なにをしているだろうと余計な思いが浮かんで消える
家は密集している
そして屋根は汚れて
すっかり湿っている
「人は自分が分からないまま死んでいく」
景色全体を圧迫して
霧が垂れ込めていて
山の外形さえつかめない
巨大なそれは餅のようにしっとりとして居る
その下の湖には ライ魚が棲んでいるだろうか
食用ガエルが棲んでいるだろうか
その食用ガエルを 食べる人間がいるだろうか
今夜は翔べない
ああ翔べないのだ
こんな重ったるい空の下では
こんな荒んだ呪われた町では
真横からゆるゆると這って来る風の中では
これでは決して二度と翼は上げられない
1986年~1988年.4.21