少女は5才のとき 人形を与えられ
グラウンドを白馬のように
駆け回ることをあきらめた
肉体はふくらみ 血は流れ
精神は体の中に閉じ込められ
彼女は全然満足じゃなかった
少女は18のとき
ファッション雑誌を真似て着飾った
彼女の行くところ
男たちのぶしつけな視線がそそがれ
親もテレビも口をそろえてこう言った
「さっさといい男を手に入れな」
意思とは無関係に
肉体は合図を送りつづける
「これを犯し、征服しなさい」
彼女は全然満足じゃなかった
少女は20歳になり
翻訳家になる夢をあきらめて
ステキな王子さまと
ステキな結婚式を挙げた
「きみはボクが一生守り、養ってあげるよ」
毎朝、夫の背を見送るとき
彼女は指輪を眺めて夕暮れを待った
少女は女になり、子どもを産んだ
テレビは相変わらず「子を抱く母」の
映像を讃えて、彼女は信じた
どこへ行っても
5kgの子どもを抱えて 買い物に出かける
彼女の姿を見つけることができる
子どもは大人になり、母を忘れて家から去った
バッグに低俗な芸能誌を持ち歩き
時間を費やす理由を探して
床にひとかたまりの塵を見つけた
もう若くも魅力もなくなった鏡をのぞいて
彼女はつぶやく
私はいままで誰だったのかしら
いつからボールを蹴らなくなったのかしら
風と一体になって
グラウンドを駆け回り
息を荒らげ
シャツを汗でびっしょり濡らすのさえいとわない
手足を無造作に伸ばして
一歩跳び超えようとする
私の危険と自由と責任を
一体誰が
さえぎったのか
自分と現実を真っ直ぐ見つめる眼をふさぎ
周囲すべてのもの
自分自身に対してさえ
無感動で無関心になっていった
目覚めるなら
今、目覚めなければならない
巨大な不安の渦巻く暗闇のなかで
どれだけ長いあいだ重い鎖を引きずって
無感覚に耐えてきたのか
気づかなければならない
私が「女」である前に
1個の自由な意識であることを
何人にも縛られ
定義されることのない
1人の尊厳ある人間であることを
今こそ総決算するときが来た
1度きりの生きるチャンスに
今まで何を賭け
意味のある何がどれだけ
手元に残っているのかを
人生のあらゆる輝きが消えるころ
ようやく女は思い出す
人形を与えられた5才の少女と
これからなお続く 数十年という空虚な時間を
フェミニズム的考え方に1番かぶれていた頃のシリーズ。
参政権の獲得なんてどうでもいい。
ほんとうの解放とは、自分の中にあるあらゆる制限からの解放なんだ。
グラウンドを白馬のように
駆け回ることをあきらめた
肉体はふくらみ 血は流れ
精神は体の中に閉じ込められ
彼女は全然満足じゃなかった
少女は18のとき
ファッション雑誌を真似て着飾った
彼女の行くところ
男たちのぶしつけな視線がそそがれ
親もテレビも口をそろえてこう言った
「さっさといい男を手に入れな」
意思とは無関係に
肉体は合図を送りつづける
「これを犯し、征服しなさい」
彼女は全然満足じゃなかった
少女は20歳になり
翻訳家になる夢をあきらめて
ステキな王子さまと
ステキな結婚式を挙げた
「きみはボクが一生守り、養ってあげるよ」
毎朝、夫の背を見送るとき
彼女は指輪を眺めて夕暮れを待った
少女は女になり、子どもを産んだ
テレビは相変わらず「子を抱く母」の
映像を讃えて、彼女は信じた
どこへ行っても
5kgの子どもを抱えて 買い物に出かける
彼女の姿を見つけることができる
子どもは大人になり、母を忘れて家から去った
バッグに低俗な芸能誌を持ち歩き
時間を費やす理由を探して
床にひとかたまりの塵を見つけた
もう若くも魅力もなくなった鏡をのぞいて
彼女はつぶやく
私はいままで誰だったのかしら
いつからボールを蹴らなくなったのかしら
風と一体になって
グラウンドを駆け回り
息を荒らげ
シャツを汗でびっしょり濡らすのさえいとわない
手足を無造作に伸ばして
一歩跳び超えようとする
私の危険と自由と責任を
一体誰が
さえぎったのか
自分と現実を真っ直ぐ見つめる眼をふさぎ
周囲すべてのもの
自分自身に対してさえ
無感動で無関心になっていった
目覚めるなら
今、目覚めなければならない
巨大な不安の渦巻く暗闇のなかで
どれだけ長いあいだ重い鎖を引きずって
無感覚に耐えてきたのか
気づかなければならない
私が「女」である前に
1個の自由な意識であることを
何人にも縛られ
定義されることのない
1人の尊厳ある人間であることを
今こそ総決算するときが来た
1度きりの生きるチャンスに
今まで何を賭け
意味のある何がどれだけ
手元に残っているのかを
人生のあらゆる輝きが消えるころ
ようやく女は思い出す
人形を与えられた5才の少女と
これからなお続く 数十年という空虚な時間を
フェミニズム的考え方に1番かぶれていた頃のシリーズ。
参政権の獲得なんてどうでもいい。
ほんとうの解放とは、自分の中にあるあらゆる制限からの解放なんだ。