メランコリア

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オーギー・レンのクリスマス・ストーリー ポール・オースター/著 スイッチ・パブリッシング

2025-01-18 22:04:32 | 
2021年初版 柴田元幸/訳 タダジュン/絵

タダジュン
1971年生まれ 版画家、イラストレーター
作品集「Dear, THUMB BOOK PRESS」
『とるにたらないおとこの話』

個展かどこかで知ったタダジュンさんの版画が独特な魅力を放っている
正方形に近いかたち、粋なストーリーとピッタリ合っててカッコいい1冊
エドワード・ゴーリーを訳している柴田元幸さんの訳

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ポール・オースター


著者は去年亡くなったとウィキを見て知った
ニューヨーク3部作も読んでみたい

ウィキ参照
オーギー・レンのクリスマス・ストーリー」を読んだ映画監督ウェイン・ワンがオースターに連絡を取り、作品の映画化の話が進んだ。
オースターはワンと親交を深め、1995年の映画「スモーク」の脚本を書き下ろし、
ハーヴェイ・カイテルやフォレスト・ウィテカーなどのキャストの選定も行った。




【内容抜粋メモ】
私はこの話をオーギー・レンから聞いた
本当の名前を出さないよう頼まれている

オーギーと知り合って11年近くになる
ブルックリン繁華街にある葉巻店の主人で
たまたま読んだ書評で私の写真を見て
俺の写真を見てほしいと言われた







ライフワークだと言って見せてくれたのは、ある交差点の定点写真
毎朝、7時きっかりに写した写真は、最初、どれも同じに見えたが
ゆっくり見るよう言われて、注意して見ると
人々の区別、季節の移り変わりなどが見えてくる

オーギーは時間を撮っているのだ

シェイクスピア
明日、また明日、また明日
時はじわじわと1日1日を進んでいく



ニューヨーク・タイムズからクリスマスの朝刊に載せる短編を頼まれた
これまでに書かれたお涙頂戴の甘ったるいウソっぽいものが思い浮かぶ

オーギーに相談すると、お昼をおごるなら
最高のクリスマス・ストーリーを教えると言われる

1972年の夏
小僧が店に来て、ペーパーバックを数冊万引きしていった
途中まで追いかけて、諦め、財布を落としていったのを拾う

名前はロバート・グッドウィン
住所も書いてあり、警察に言うこともできたが
野球のユニフォームを着た少年時代の写真などを見たら、怒る気も失せた









クリスマス
なにも予定がなく、哀れになってきて、ふと財布を返しに行こうと決めた

団地の呼び鈴を押すと、盲目の年寄りの女が「お前かい、ロバート?」と言って
嬉しそうに出迎えたから、ロバートのふりをした
孫じゃないと分かってたはずだが、2人でゲームをやることに決めたようなものだ









葉巻店に勤めていて、今度結婚するんだとキレイごとを並べたら
老女:きっとうまくいくはずだって分かってたんだよ と喜ぶ

店でローストチキンやケーキを買って、ごちそうを食べ
トイレに行くと、カメラが箱に入ったまま積み上げてあるのを見つける

これまで写真を撮ったこともないし、盗んだこともないが
ごく自然に1つもらってきた









おばあさんは椅子に座ったまま眠っていて
そのまま部屋を出た

カメラを盗んだことがひっかかっていて、数か月後にまた行ったが
おばあさんはもういなくて、別の人が住んでいて、どこに行ったかも分からない

私:
たぶん亡くなったんだね
最後のクリスマスを過ごしていいことをしたじゃないか
カメラは盗品だったんだろう
あんたはカメラを有効に使ってる

オーギーの顔にいわくありげな笑みが広がるのを見て
全部でっち上げかとも思ったが
誰か1人でも信じる人間がいるかぎり、本当でない物語などありはしないのだ









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