メランコリア

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ここにあるのはわたしの心象スケッチです。

『男と女~un homme et une femme』

2007-09-17 19:32:35 | 映画
『男と女~un homme et une femme』(1966)フランス
監督・製作・撮影・脚本:クロード・ルルーシュ
音楽:フランシス・レイ
出演:アヌーク・エーメ、ジャンルイ・トランティニャン ほか

トランティニャンシリーズの在庫がとうとう尽きた感があるので、一応の締め括りとして
相応しい、彼の最も知られた代表作といっていいであろう今作を改めて観直してみた。
随分前観たと思うのだけれど、ん~やっぱり名作と呼ばれるだけの永遠に輝きが失せない感動作。
シンプルなタイトルに集約されている通り、撮影も3週間というスピーディなもので
「物語の時間の流れ」と「演じる役者の時間」のブレをなくすことでより新鮮でリアルな
リアクション、セリフを引き出す。それはときに俳優のアドリブだったという。
まあ、これはまたDVDの特典に入ってるドキュメンタリーでの監督のコメントであって、
後付けはあくまで知識でしかないんだけど/苦笑
それでも監督の言葉は面白い。「恋は外が寒いほど盛り上がるんだ」とか、
「年齢は35くらいに設定した。すでに人生経験があり、喜びも悲しみも知っていて、
また経験できる年だ」とか。

story
寄宿舎に子どもを預けている男と女。(こんな小さな子を預けるなんて!
電車に乗り遅れた彼女をパリの自宅まで送り届けるクルマの中で恋は生まれる。
美しい女に根ほり葉ほり聞く男。夫との生活が夢のように素晴らしいと話す女。
しかしその夫は仕事中の事故で亡くなったばかり(長いエピソードを印象的な数シーン
にまとめる手法も新鮮
一方、男もまたレーシング中の事故で重体になった時、ショックで妻が自殺していることを告げる。
モンテカルロ・ラリーを挟んで2人の気持ちは急激に近くなるが。。

ひとりより2人でいるほうがより孤独なときがある。大勢だとさらにその孤独感は高まる。
男とのデート中もはずさない結婚指輪のカットが寂しい。
それでもこんな大人の恋もいいものだ。片思いでもね。
実際カーレーシングにもやっているトランティニャンの本領発揮か。愛息と戯れてる
ときの屈託ない笑顔がまたたまらなく魅力的/溶

男がクルマを女のいるパリに走らせながら実際会うまでを丁寧にイメトレしていく
モノローグも面白い。
「あんな美人が電報をくれるなんてしあわせだ。勇気がいることだからな。
アパートに訪ねても何階か知らないぞ。大家に聞けば教えてくれるかも・・・」
夫を忘れられない女がパリに戻る列車が直通ではなく乗り換えなのも聞き忘れない
用意周到さ、ストレートさ、スピード感は職業病かw
「旦那はイカれた奴に違いない。そんな奴ほどモテるんだ」なんて。

シーンに心情を表す歌を乗せるのは「いかにも」て感じがしたけど、PVの先駆け
といえなくもないような新しさだったのかも。
限られた予算と時間の中で、監督の情熱でもって撮りあげたアイデアがたくさん詰まっているんだな。

冒頭の男が愛息と海岸を車で乗り回すシーンで泣いてしまった。
子どもの本当に楽しそうな笑い声はピュアそのもの。
老人と楽しそうに走る犬も。あのわんこはもうとっくにこの世界にはいないけれども
こうして映画の魔法でいつまでも楽しそうに海岸を駆け回っているのだから。




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