メランコリア

メランコリアの国にようこそ。
ここにあるのはわたしの心象スケッチです。

『さがし絵で発見!世界の国ぐに8 ブータン』(あすなろ書房)

2014-12-20 15:10:53 | 
『さがし絵で発見!世界の国ぐに8 ブータン』(あすなろ書房)
池上彰/監修 稲葉茂勝/著 こどもくらぶ/編

以前読んだ本でGNH「国民総幸福量」が高い国と知って興味が湧いて借りてみた。

『本屋さんのすべてがわかる本4 もっと知りたい! 本屋さんの秘密』(ミネルヴァ書房)

国民の6割が農業で自給自足している、など、とてもうらやましいと思って読み進めたら、
近年は「観光」も取り入れたことによって、欧米文化がなだれこみ、格差がうまれ、文化が失われ、
都市に人が集まって宅地化が進み、農村地は過疎化が進んでいるとのこと。どこかの国と似てないかい?


【内容抜粋メモ】


ブータンは九州ほどの小さな国。北部は高山帯、南部な亜熱帯で、多種多様な生物が生息している。
GNH「国民総幸福量」という考え方で、世界中から注目されている。

「ブータンは、国中がテーマパークのようだ」という人がいる。
「暮らしは、昭和20年代の日本に似ている」という人もいる。
人々は外国人にも親しげだが、決して媚びない。占領下の日本人はそうではなかった。


滑走路も短いため、世界一着陸が難しいといわれる、唯一の国際空港


首都ティンプー

国内に信号機がひとつもないため、交差点では警察官が交通整理をする(スピード出さなくていいじゃんv

仏教国。どこからでも見える「チャンガンカ・ラカン」は、ティンプー守護寺として参拝者が途絶えない。
5階建て以上の建物がほとんどない
週末の「サブジ・バザール」は、観光客で賑わう。

 
動物園には「ターキン(国獣)」という珍しい動物がいる/ブルーポピー(国花)

動物園といっても、展示が目的ではなく、保護している(ステキ
他にもレッドパンダ、ワタリガラス(!)(国鳥)などがいる。

「ワタリガラス」

ブータンの守護神の化身とされ、王冠にもデザインされている(星野さんとリンクした/驚


独自の観光システム
豊かな自然、仏教遺産が多いため、外国人観光客に対して、滞在費用(宿泊、食事、国内移動、ガイド料など)として1日約200ドルの公定料金を定めている。


王国の始まり
現ブータンの国土は、17Cにチベットから来た仏教僧ンガワン・ナムゲルの布教活動が及んだ範囲。
1907年、有力者ウゲン・ワンチュクが国の基礎をつくって国王になった。
その後、欧米、日本(!)等の植民地支配、2度の世界大戦を潜り抜けるように、国家主権を守り、近代化を進めた。


「非同盟中立」
ブータンは、長い間、鎖国をしてきたが、1960年代、次第に国際関係を結んでいった。
1971年国連加盟、1980年代SAARCに参加、2012年EUと外交関係を樹立。
しかし、アメリカ、中国、ロシアなどとは「非同盟中立」にある。

「非同盟中立」
対立するいずれとも同盟を結ばず、中立的立場で平和維持をはかる。


ブータン王室は、国民から尊敬され、「立憲君主制」移行の際はみんなが反対した。
2006年、第5代国王ジグミ・ケサルは、各地を訪れて「民主主義」の大切さを訴えた。


人口約70万人の多民族国家
宗教、文化の違いから難民が出て国際問題となっている。
就労人口の約6割が農家。小規模な地域自給自足型の農業に従事している。


文字と言葉
「ゾンカ」は公用語。だが、英語、ネパール語のほうが多い。文字はチベット文字。


卒塔婆

日本のお墓にたてる「卒塔婆」の上に書かれているのはインド系文字のひとつで「悉曇(しったん)文字」。
日本では「梵字(ぼんじ)」と呼ばれる。仏教とともに中国を経由して伝わった。
写真の文字は上から空、風、火、水、地、その下は1文字で阿弥陀如来を表している。

「ブラーフミー文字」

ブータン、インド、ネパール、スリランカ、タイ、カンボジア、ラオスなどは、すべてブラーフミー文字が起源


*********************************世界が注目したGNH「国民総幸福量」

政府は2005年、初めて国勢調査を行い、「あなたは今幸せですか?」という問いに、国民9割以上が「幸せ」と回答した/驚
ブータンの「GNI(国民総所得)」は43万8400円。これは世界214カ国中134位。
36位の日本は284万2400円と比べると1/6未満。
第4代シンゲ国王が「国民の幸福」を目指し、経済成長よりも、伝統的な文化、環境に配慮した結果。


背景には仏教の価値観がある
「GNH委員会」はGNH推進のための組織。次の視点から政策を立案している。

1.公正で公平な社会経済の発展
2.文化的、精神的な遺産の保存、促進
3.環境保護
4.よい統治

国土に占める森林面積の割合を60%を以上に保つと定めた。
絶滅危惧種の「オグロヅル」が飛来する谷には、電線を引かずに暮らし、今は地下ケーブルで送電している。

その他、次のような具体的な政策を行っている。



しかし、近年、若い層が都市に流れ、農村の人手不足などが生じている。

2005年から2年に1度、1人あたり5時間をかける聞き取り調査(!)で、約7000人のデータを集めて、分析している。

[質問内容の一部]
・自分の健康に満足か?
・どれくらいお祈りや瞑想をするか?
・水や土の汚染などが近所にあるか?
・過去1年で何日ボランティア活動をしたか?
・近所の人をどれだけ信用しているか?

ブータンのGNHは世界中に波紋を呼んだ。
多くの人は、幸福度はお金や経済成長とともに上がると考えてきたが、実際は、物質ではなく、
精神的な豊かさを求めることで幸福度が高まるという憲法をうたう国を知って驚き、強い関心を寄せた。

2006年、イギリスの社会心理学者エードリアン・ホワイトが全世界、約8万人に調査を行い、
ユネスコ、WHO等の資料を分析し、「世界幸福度マップ(World map of happiness)」を発表。




(富/財÷欲望)=幸福度
分母の「欲望」を小さくすることで幸福度が上がるというのが仏教の考え方。
日本は2008年「国民生活白書」で、他の先進国とは考え方が異なることが分かった。


「GDP(国内総生産)」の上昇にともない生活満足度が下がっている。経済成長と国民の満足度は正比例しないと判明した。
(その割に、毎日のように「GDP(国内総生産)」のニュースが流れるね。古い考え方はなかなか捨てがたいんだな


[幸福度が高い理由]
1.農業で自給自足している
2.治安がよい
3.先進国や物質文明の情報から隔離されている

ブータン人の多くは「他人と比較する」習慣がない。
他人が持つものに「うらやましい」という感情を持たない。
しかし観光客とともに、海外の情報が入りこみ、若い層を中心に「物質主義」が広がった。


*********************************ブータンの衣食住

 
民族衣装は、男性は「ゴ」、女性は「キラ」とよばれる着物

伝統的な建物は3DK


1階外壁全面+2階の一部が土壁で、ほかは木造が基本。
木材は、ヒマラヤゴヨウという松がほとんど。
屋根は板ぶき、上に人の頭くらいの大きさの石が置かれている(なぜ?
首都には、近年、新建材を使った近代的な建物も増えた。


料理は世界一辛い!?
 
ブータン料理には、「トウガラシ」を使うのが特徴/バター茶美味しそう!

マツタケがとても安く売られ、トウガラシと一緒に炒めて食べる。


*********************************ブータンの娯楽

テレビは国営放送が2チャンネルのみ
2012年、電気は国土の80%に普及。


映画館

都市部には、レンタルビデオショップ、映画館が4ヶ所。ほとんどインド映画だが、ブータン映画も見かけるようになった。

サッカー人気のきっかけは?
2002年、FIFAワールドカップ。カリブ海の小さな島でキックオフされたのは、
FIFAランキング202位のブータンと、203位のモントセラトの世界最下位決定戦!
実は、オランダの広告代理店が、自国が出場できない悔しさから思いついた企画だったが、世界中から注目され、取材がくる盛況ぶりだった。

映画『アザー・ファイナル』


伝統的な祭り「ツェチュ」

各月の10日、その月にあたる出来事の法要が行われる。

国民に人気の「ダツェ」(伝統的なアーチェリー)



*********************************世界遺産の指定はいらない

歴史的、宗教的にも重要な建築物が多いが、「世界遺産」はひとつもない
「ブータンは国全体が世界遺産だ」とも言われる。
観光産業が発展すれば、大金となる。しかし、お金やモノが人々を豊かにするのではないと考え、観光産業をよしとしない。
観光地となることで、心の拠り所である宗教施設がかき回されることを嫌っている。

日本は「観光立国」を唱え世界からの観光客をどんどん受け入れている。
「白川郷」などは、「世界遺産」に登録され、登録前の2~3倍に観光客が増えたが、
一部の観光客が住民の日常生活に立ち入るなど問題も起きている。


今後、観光をさかんにしたいという考えから、2012年、「ワンデュ・ポダン・ゾン」が世界遺産へ登録申請された

そのゾンで、2012/6/24、火災が発生。建物は全焼した
火事の原因は、電気系統のショートだという。

「タクツァン僧院」

僧侶が修行する僧院のため、隔離された場所にある


*********************************ブータンの教育



ブータンの教育のカギは、教師の育成にあるといわれる。
教師は、ただ知識を教える人ではなく、将来を担う子どもたちの手本になる人格者でなければならないとされている。

数学教師が読む本の最初のページには、こう書かれているという。
「あなたは、数学を教えるために教壇に立つのではない。ブータンの将来を担う人間をつくるために教壇に立つのだ」


英語教育
国際的感覚を身につけるため、言語の違いで国がバラバラにならないために、小学生から英語で授業している。
国民の約4割は字が読めない。学校の数が少なく、2時間以上かけて歩いて通う子どももいる。


教育制度
小学校が6年、前期中学校が2年、中期中学校が2年、ジュニアカレッジ2年、合計12年間。
公立学校の授業料は無料。

・識字率:59.8%(2011)
・初等教育就学率:94%(2010)
・乳児死亡率:40/1000(2008)



アグネス・チャンさんは2012年訪問。「幸せの国」にも小学校に通えない子どもがいると知った。

「人々の97%が幸せ、83%が生活に満足していると感じているのは、
 苦労も幸せのうちだ、と考えているせいなのかもしれない。
 昨日よりも今日、今日よりも明日、と希望がもてることが[幸せ」感覚を支えていると感じました」(アグネス・チャン


*********************************小さな多民族国家の問題点

宗教、言語などから大きく3つのグループに分けられ、少数民族もいる。

「ドゥクパ」人口の約8割。チベット系民族。
「ンガロップ」西部に住み、「ドゥクパの文化」とは、この民族の文化を指す。
「ツァンラ」東部に住む。
「ネパリ」南部山ろく地帯に住む。19Cに労働者としてネパールから移住してきた。

政府はドゥクパ文化への「同化政策」を強化した(ムリに統合しなくても、いろんな文化があってもいいのでは?
1990年、南部で大規模なデモがおこり、政府は弾圧・国外追放を行ったため、
約13万人が難民となったと予測される。これは全人口の1/5。「南部問題」


難民キャンプで不便な生活を強いられている

ブータンも、現実には、民族問題、所得格差、貧困問題がある。

 
地方では農業が多い/首都では住宅の建設ラッシュがおきている


町ではジーンズなどで歩く若者も多い

現金収入を得る人と、そうでない人との経済格差、土地の不足で価格が急上昇、
首都周辺の土地の所有者は大きな富を得て、地方から出てきて職につけない若者が増えた。
建設工事等の肉体労働はやりたがらず、インドからの移民労働者が行っている。


モノを持つ人と持たない人
 
携帯電話屋/コンビニ(セブンて・・・

モノと情報の格差の拡大は、今後の社会問題の火種となっている。


*********************************ブータンと日本

ブータンの人々は、日本人に好感を持っている。顔立ちが似ていて、主食が米など類似点が多いため。
1971年、ブータンが国連加盟に申請した際、日本は率先して支持して以来、交流がはじまった。
1988年、日本から「青年海外協力隊」を派遣し、産業開発支援、電話網の整備などを行った。

ダショー西岡
農業専門家の西岡京治は、国交が始まる前の1964年、海外技術協力事業団(現・国際協力機構)から派遣され、農業開発に尽力した。
外国人として初めて「ダショー」(ブータンの爵位)を与えられた。


外交関係樹立25周年
東日本大震災後初の国賓としてジグミ・ケサル国王、ジツェン王妃が訪日した。


震災から1年後の2012/3/11にも、国による式典が行われた



追。
池上彰さんて、松本市出身なんだ!驚
『週刊こどもニュース』が好きで、よく見てたな。説明がとっても分かりやすくて。

コメント

『新版 環境とリサイクル6 紙』(小峰書店)

2014-12-20 14:28:24 | 
『新版 環境とリサイクル6 紙』(小峰書店)
半谷高久/監修 江尻京子/指導 本間正樹、大角修/文 菊池東太/写真

以前読んだ『環境とリサイクル10 うめたて処分場』と同シリーズ。
新版とはいえ、2003年初版なので、また状況は変わっているだろう。いい方向に変わっていてほしいなあ。

紙や文具など「読み書き」に関することには普段から興味があるので、この本に書いてあることを全部吸収したい
ゴミ問題は、個人はもちろん、大量に作る工場から変えないと意味がない。

すべての紙が、また紙として生まれ変わって欲しいけど、紙としての寿命があることも分かったし、
「再生紙」と書かれていても、品質を保つために、ある程度のバージンパルプを混ぜてあることも知った。

紙が森の木から作られていることを、まずたくさんの人たちに改めて知ってもらいたい。
個人的な願いとしては、今後、紙の原料には、どうか杉を使ってもらえまいか?/祈×∞


【内容抜粋メモ】
紙は、610年に朝鮮半島から来た曇徴(どんちょう)という僧が作り方を伝え、和紙に受け継がれている。

******************************生産量と消費量

2001年、日本国内でつくった紙は3073万トン。これはアメリカに次いで2位。
国民1人あたり、1年間に約250kgの紙を使用した。
1960年、産業が発達、暮らしが豊かになるにつれ消費量が増えた
紙袋、紙パックなど、簡単に捨てられる紙製品が増え、紙ゴミも増えた。

統計上、紙は2種類に分かれる。「薄いシート状」と「厚い板紙」。
生産量は増えたが、この2種類の割合は40年間ほぼ変わっていない。

  
国内の紙の生産量の変化/世界の紙の消費量


使い道


******************************紙の原料はパルプという木のセルロース繊維

 
パルプ/電子顕微鏡でみたパルプ

木を分けると2種類~「針葉樹」と「広葉樹」
どちらもパルプの原木となる。繊維の性質が違うので使い分ける。
「針葉樹」繊維の長さ3ミリ前後。破れにくい。
「広葉樹」1ミリ前後。

パルプにする2つの方法
1.「チップ」=「化学パルプ」


2.木材をすり砕く=「機械パルプ」変質・変色しやすい。大量につくれるので新聞紙・週刊誌になる。

「バージンパルプ」木材から新しくつくったパルプ
「再生パルプ」古紙を再生したパルプ

日本は、アメリカに次いで世界第2位の生産国だが、国内では原料が足りないため輸入している。


輸入したチップの山

 


******************************紙をつくる工程

「上質紙(化学パルプ100%。本に使う)」の場合
1.「パルパー」水でパルプの繊維をほぐす
2.「レファイナー」繊維をもむ(紙を強くする)
3.「混合箱」すべりを良くするため、粘土、染料等を混ぜる
4.「抄紙機(ショウシキ)」水を漉す
5.「プレス」薄くする
6.「ドライヤー」乾かす
7.「カレンダー」アイロンをかけて艶を出す
8.「ワインダー」巻き取る


******************************汚水処理

1トンの紙をつくるのに、100トンの水が必要


製紙工場の廃液で汚れた海@静岡県富士市田子ノ浦港(1973)悪臭、有害ガスが発生し、生物が住めなくなった
(なぜ、こんなになるまで放っておけたのか、ヒトの鈍感さ、貪欲さにゾッとする

とくに問題なのは、木材からパルプをつくる際の廃水
再生紙をつくる際も、繊維くず、薬品が混ざる。
これまで、再生パルプの漂白剤に塩素系薬品を使っていたため、「ダイオキシン」発生の危険があった。
そのまま川、海に流さないために「浄化装置」を設けている。

汚れを沈殿させて、脱水し、焼却炉で燃やす→灰をレンガの材料にする
有害物質を規定量以下にしてから川に放流する


凝集沈殿装置


******************************本のつくりかた


印刷工場

大量印刷のはじまり
1450年、グーテンベルグが印刷機を発明。
新聞の発行が盛んになり、18C、蒸気機関を利用した機械印刷が発明された。(ケーニヒ&バウアー)
「輪転印刷機」が発明された。


製紙工場でつくった紙は、用途別に工場に送り、加工する。
本は、カバー、表紙、本文等によって別の種類の紙を使っている。
カバーは傷みやすいため、プラスチックフィルムを貼る。

 
本の部分名称/とじ方

「製本」
製本で余った紙は質がいいので、ほぼ再資源化している。
しかし、針金、ボンド、布、プラスチックフィルム、インクを取り除く手間がかかる。


******************************紙パックのつくりかた


紙パックの製造工場

紙パックは昭和30年、牛乳びんの代わりにアメリカから伝わった
用紙は、ヒバ、エゾマツ等の丈夫な紙に、プラスチックフィルムを何層も貼り合わせてある。

1.商品名などを印刷
2.原紙にポリエチレンフィルムを貼る
3.切る
4.組み立てる
5.中身を入れる
6.口を貼り合わせる


******************************古紙のゆくえ


古紙回収業者のトラック

2000年、古紙は58%回収されたが、残り48%は?
東京都で「燃やすゴミ」の半分は紙類。資源ゴミも混ざっている。
トイレットペーパー、ティッシュ等、回収できないものもあるので、65%が古紙回収の限界と言われる。

 
燃やすゴミの内訳/世界の古紙回収率


オフィスの紙ゴミ
FAX、コピー等の「OA機器」で使う紙、封筒など、会社では大量の紙を使う。
専門の回収会社と契約してリサイクルしている。


古紙は「回収古紙」と「産業古紙」の2種類
「回収古紙」家庭と町から出る古紙
「産業古紙」新聞社、印刷会社、製本屋上、大きなデパート(!)、市場等から出る古紙


「製紙会社」が買い取る古紙の値段(2000年)
上質:1kgあたり50円
雑誌:1kgあたり5~6円

「回収古紙」は質がバラバラで、回収の手間がかかり、値段も安い。
昔は「ちり紙交換」という業者が地域を回っていたが、値段が下がって消え、今は市町村が税金で回収、ボランティアが回収して業者がひきとっている。


古紙問屋に積み上げられた紙


「回収古紙」のゆくえ
家庭→集団回収→直納問屋(古紙問屋)→製紙会社
家庭→一般買出人(ちり紙交換)→直納問屋→製紙会社
商店街・市場→専門買出人→直納問屋→製紙会社


******************************紙のリサイクル方法


古紙から「パルパー」で取り除いたゴミ

紙や紙製品をつくる時つかった粘土、針金、ボンド、布、プラスチックフィルム、インク(漂白剤を使う)を取り除かなければならない。

1.「パルパー」古紙を水でほぐす。1本のロープにひっかかったゴミをとりのぞく。


2.「クリーナー」ゴミを除く。


3.「スクリーン」まじりものを漉しとる。

4.「フローテーター」インクをとる。


5.「洗浄機」
6.「抄紙機」再生パルプで紙をすく
7.「カッター」
8.「白水回収装置」カスを回収して、板紙の芯に利用。

板紙、ダンボールには、バージンパルプを貼って見栄えよく仕上げるものもある。


再生処理するほど質が落ちる
「再生パルプ」:板紙、ダンボール、トイレットペーパーの材料に。
「再生紙」:再生パルプ+バージンパルプと混ぜる。

繊維の短いものは弱い紙になる。手間をかけると値段が高くなるのが問題。


******************************古紙の資源化をすすめるには

紙の再生は3回ほどが限度
ダンボール用の板紙の原料は90%が古紙だが、10%はバージンパルプを使用している。
OA用紙、本は、バージンパルプを多く使う。

回収段階から、質ごとに分別することが重要。

「ブライト70」
破れにくい、見た目がよくないと、多くの人に使ってもらえない。
少し白さをおさえることで、不純物をのぞく手間がラクになる。


紙の種類→再生品(色紙が再生率が悪いのが意外/驚 「茶模造紙」て何だろう・・・?


「容器包装リサイクル法」が1997年に適用
パック、ペットボトルなどの再商品化をすすめることを目的につくられた。
牛乳パック、ダンボールは、すでに再商品化されているから対象外。




紙は燃料にもなる/驚
質が落ちた古紙は、燃料にすれば、石油、天然ガスなどが節約できる


古紙の固形燃料


******************************ダンボールの作り方



再生紙の中で、もっとも消費量が多いのはダンボール原紙。その90%は古紙。
古紙の利用法としては、すぐれた製品。80%以上回収し、繰り返し利用する。

1.中芯用の紙に波形をつける
 

2.でんぷんのりをつける(再生を考えて
3.外側の紙(ライナー)を両面に貼る。
4.「プリンター・ダイカッター」で印刷し、折り曲げ線、溝をつくる
5.はりあわせる


******************************トイレットペーパーの作り方

1.古紙をほぐす。バージンパルプを混ぜてやわらかい質を出す。
2.大きなロールに巻く。


3.決まった長さに巻きなおす。
4.カットする。

買う人には「バージンパルプ100%」のほうが喜ばれるので、製本工場から出るはしきれを混ぜている。


******************************森を守る


パルプ用材として植林された森林(岩手)

紙の原料は木材
紙を使うほど、森から木をきっている。「環境破壊」
きった分は植林することが大切。パルプ用には生長の早い「アカシア」「ユーカリ」が多い。

トウモロコシ、ケナフなど、草の繊維を代わりに利用する方法もある。
しかし、植物から上質のパルプをつくるには、まざりものを除く大量の水が必要なので、大量生産には向かない。

砂漠など荒れた土地に植林して森を育てれば、緑豊かな自然にでき、森林破壊しなくて済む

古紙の多い都市こそ、森林資源の宝庫だと言われる。


【本書まとめ】
「再生紙」といっても、古紙だけを原料にしているわけではない。
「古紙再生促進センター」では、「グリーンマーク」をつけられるのは、古紙パルプを40%以上つかったものだけと指定している。
トイレットペーパーは古紙100%、新聞紙、コピー用紙は50%以上。




古紙の値段の下落(1983年→1993年→2002年)
「新聞紙」27円→6~8円→9円
「雑誌」20円→2~3円→5.5円
「ダンボール」25円→8~10円→7円

2002年では、新聞紙を1000kg集めて、製紙工場に運んでも9000円にしかならない。輸送費のほうが高い


外国からパルプなどを安く輸入
古紙の値段が下がったのは、古紙が余ってきたから。新しいパルプのほうが安く紙がつくれる。


古紙リサイクルの利点
1.「焼却灰」が少なくなり、ゴミの量を減らせる埋め立て処分場を長持ちさせる
2.水、エネルギーの節約
3.森林を守る

市町村で、古紙を集団回収する団体に補助金を出すなどしてきた。


古紙利用が広まっている
1.製紙時の古紙利用率が高まった
2.中国などへの古紙輸出量が増えた
3.燃料化など利用法が広まった ※卵・電気製品などの包装材、断熱材、防音材、畜舎や畑のしき具など


紙の新しい原料は?
2000年、世界の森林からパルプ用にきりだされる木は3772万m3。
製紙にもっとも適しているのは「カラマツ」など。

必要なものを作るのは、社会の進歩だが、無駄なものを作るのは、社会の寿命を縮めるだけ。


【関連するHP】
クリーン・ジャパン・センター
全国清涼飲料工業会
古紙再生促進センター など

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『図書館のすべてがわかる本1 図書館のはじまり・うつりかわり』(岩崎書店)

2014-12-20 13:38:10 | 
『図書館のすべてがわかる本1 図書館のはじまり・うつりかわり』(岩崎書店)
秋田喜代美/監修

『本屋さんのすべてがわかる本』(ミネルヴァ書房)と同じシリーズかと思ったら違うのね。似てる

図書館のはじまりを知る前に、まず文字の起源から説明されていて、とても興味深い、勉強になる1冊。

ネットで自由に無料で本が読める時代になったら、本屋はなくなって、著作権もなくなるかも?

文化や教育と金儲けは別物。
自由に想像して、創造されたものが、自由に、等しく、みんなに開かれる時代が早くるといいな。
教育、文化が広がれば、戦争だってなくなるだろう


【内容抜粋メモ】

「図書館」の語源
英語ではlibrary。ラテン語のliber(リベル)からきている。リベル=木の樹皮、本の意。
古代ローマでは、木の樹皮の裏側に文字を書いていた。
ドイツ、フランス、イタリアの語源は、パピルスを意味するギリシャ語の「biblos」(ビブロス)。
日本の「図書館」は、奈良時代の「文庫」「書籍館(しょじゃくかん)」が元。

「ボドリアン図書館」@オックスフォード大学


図書館の歴史は、文字の歴史
地球の歴史は約46億年、人類の歴史は約3万年、文字の歴史は約5000年。
その前は口づてに語り伝える方法しかなかった。

文字でもっとも古いのは、紀元前3000年「メソポタミア文明」から使われていた「楔形文字」。
絵文字から生まれて、約3000年間使われた。


楔形文字

同時期、エジプト文明では「ヒエログリフ」が生まれ、約3500年間使われた(かっちょいいよねえ惚×5000
ヒエロ=神聖、グリフ=彫刻の意。


中国文明では、紀元前1600年頃からの殷王朝時代に「甲骨文字」が使われ、「漢字」に変化した。

甲骨文字


文字で考えを記録する方法
エジプトでパピルス紙の技術が生まれ、各国に広まり、野生のパピルスは不足し、人工栽培が必要になった/驚
代わりに登場したのは「羊皮紙」。小アジア(現トルコ)で生まれ、18C頃まで使われた。

 
パピルス、羊皮紙(羊皮紙は丈夫で柔らかく、両面に文字が書けたが高価だった


紙の発明は中国
蔡倫が105年に発明。それまでは「竹簡」「木簡」が使われていた。
製紙技術は、約700年間、秘密にされ、ヨーロッパに伝わったのは千年後の12C半ば。


竹簡


世界の古代文明と文字
大きな河の流域に古代文明が生まれた。
農業が行われ、人が集まって「都市」となり、王、神官、市民、奴隷などの階級が作られ、「国家」となった→「古代」

「ウル遺跡」@イラク


文字を書いたものを保管する場所が図書館の始まり
古代メソポタミア、古代エジプトに、粘土板やパピルス紙の記録の貯蔵庫があった=世界最初の図書館
建造者が分かっている最古の図書館は、アッシリア(現イラク)、紀元前650年、「アッシュールバニパル王の図書館」。
蔵書約2万点は、現在、大英博物館に保存されている。


アッシュールバニパル王の浮き彫り

「エブラ遺跡」


「アレクサンドリア図書館」は古代最大の図書館
エジプトの支配者らが世界各地から集めた「巻子本(かんすぼん)」を所蔵。
共通語のギリシャ語への翻訳も盛んに行われた。
蔵書を分類する目録もつくった。「西洋の学術図書館の原型」といわれる。
ここで研究した学者らは、さまざまな学問を進展させた。


パピルス紙の巻子本


「ペルガモン図書館」は、「アレクサンドリア図書館」に対抗して造られた
ペルガモン王国で紀元前3C半ば~2C。最大の特徴は、パピルス紙の巻子本から羊皮紙の本にかえていったこと。
パピルス紙はページを何回もめくると破れてしまうが、羊皮紙は2つ折、4つ折にして、「製本」する技術が生まれた。


羊皮紙の本


古代に生まれた公共図書館
当時、本は書き写してしか入手できなかったため、原本がある古代メソポタミア、古代エジプトが学問の中心地だった。
古代ローマ帝国時代は、将軍が戦利品で持ち帰った本を市民に公開するようになった。
暗殺されたカエサルの遺志を継いだ部下が、紀元前39年に公共の利用のための図書館を設立。
学術書のほか、古典文学などもたくさんあった。本が増えると、管理する「司書」「翻訳員」も誕生した。

「ケルスス図書館」は、「アレクサンドリア図書館」「ペルガモン図書館」とともに3大図書館といわれた。


「ケルスス図書館」のある「エフェソス遺跡」には、ほかに神殿、広場、劇場、公衆浴場跡もある。


ピンク色部分は、2C頃のローマ帝国最大領土


中世では、図書館はキリスト教の布教とともに発展した
教会、修道院に図書館ができ、聖書などが「写字生」たちによって書き写された。「写本づくり」
プラトンやアリストテレスらの本が残っているのも「写字生」たちの努力のおかげ。


写字生


『ケルズの書』は、アイルランドの国宝で、世界でもっとも美しい本といわれる「彩色写本」

「ザンクト・ガレン修道院図書館」
約16万冊を所蔵。今もひらかれている/驚


大学図書館、貴族図書館の誕生
12~13C、修道院図書館は衰退し、ヨーロッパ各地に「大学図書館」が設立された。
学生らは教授から本を借りて勉強していたが、大学の規模が拡大したため。


高価なため、1冊ずつ鎖でつながれていた/驚

パリ大学、オックスフォード大学には大図書館、小図書館があった。
小図書館には、比較的価値の低い本、写しがたくさんある本が並べられた。

13~14C、王侯貴族や大領主らが競って豪華な本を集めて個人図書館をつくったのが「貴族図書館」。
フランスの「王立図書館」は、今の「フランス国立図書館」の前身。


グーテンベルクが活版印刷術を発明!
金属に字形を刻んだ活字を並べて、インクをつけた機械にかけ、一度に大量の本が印刷できるようになった。
これは「羅針盤」「火薬」とともに「ルネサンス三大発明」の1つと言われる。


活字

→人々に本の貸し出しが可能になり、各地に図書館がつくられた。


「会員制図書館」が広まる
16~18C、一般市民への貸し出しがはじまる。
「会員制図書館」をはじめたのは、アメリカのベンジャミン・フランクリン。
討論クラブで、もちよった本を共有しはじめ、「フィラデルフィア図書館会社」を設立→今日の「公共図書館」に発展


「フィラデルフィア図書館会社」


「コーヒーハウス」@イギリス

17半ば~18Cに流行した「コーヒーハウス」では、有料で本を借りる「会員制図書館」の先がけとなる。
女性は立ち入り禁止


「公共図書館法」の成立
アメリカ(1848)、イギリス(1850)に成立した法律が「公共図書館」の誕生のきっかけ。「ボストン公共図書館」
19C終わりには「児童室」もつくられたv


「ピッツバーグ・カーネギー図書館」の「児童室」

「カーネギー図書館」(1919開館)は、今は博物館となっている
カーネギーは、誰もが無料で利用できる図書館こそ「自学自習」の場で、機会均等を保障する場と考え、
多額の資金を寄付し、「公共図書館」の発展に大きく貢献した。
「カーネギー図書館」は、2500以上もあり、今も運営されている。


司書を育てる
19C半ばまで、図書館職員は1人で管理していたが、人手不足となり、本の知識、古い本の修理をする人が必要になった。
1887年、コロンビア大学に「図書館学校」を創設。世界初、図書館員を育成した。
つくったのは、「十進分類法」で知られるメルヴィル・デューイ
「デューイ十進分類法(DDC)」をもとに、「日本十進分類法(NDC)」がつくられた。
学校には、若い女性も大勢入学した。図書館は女性が働ける場の代表となった。


開架式と閉架式
「開架式」19~20C、利用者は自由に本を探せるようになった。
「閉架式」以前は、本は書庫に保管され、図書館員がもってくる。
今は、本や資料に応じて使い分けられている。


現在、蔵書数、職員数で世界最大の「アメリカ議会図書館」


よみがえった古代図書館「新アレクサンドリア図書館」(2002年開館)
 
古代アレクサンドリア図書館は、戦火で失われた

4つの目標
・世界がエジプトを知る窓になること
・エジプトが世界を知る窓になること
・デジタル時代をリードする研究機関になること
・教育、寛容、対話、相互理解の中心になること

ほかにも、プラネタリウム、美術館、博物館なども併設されている。


電子図書館「ワールド・デジタル・ライブラリー」
「新アレクサンドリア図書館」も積極的に参加している。日本でも「国立国会図書館」が参加。

「ワールド・デジタル・ライブラリー」サイト
ネットを通して、いつでもどこでも貴重な本や資料が閲覧できる/驚×5000


*****************************日本の図書館のあゆみ

日本の図書館の原型は奈良時代に生まれた。
8Cはじめ、国の蔵書を管理する「図書寮」がつくられたが非公開。
8C半ば、有力貴族の石上宅嗣は、自分の屋敷に「芸亭(うんてい)」という文庫をつくった=日本最初の公開図書館


「芸亭(うんてい)」跡地


鎌倉時代の武士の文庫「金沢文庫」(現・横浜市)
鎌倉幕府滅亡後は、隣接する「称名寺」に管理された。

1602年、徳川家康が、江戸城内に「富士見亭文庫」を開設。当時は武士、役人に利用が限られていた。


江戸時代の「貸本屋」
読み書き、そろばんを教える「寺子屋」が急速に広まったことから、
本などを有料で貸し出す商売が人気となり、貸本は庶民の娯楽となった。


「書籍館(しょじゃくかん)」から「図書館」へ
西洋式の近代図書館を日本に紹介したのは、福沢諭吉。明治5年。湯島聖堂(!)に設立して公開された。
明治30年。「帝国図書館」が開設→戦後、昭和22年「国立図書館」と改名→「国立国会図書館」→「国立国会図書館支部上野図書館」

「通俗図書館」が明治半ば、各地に開設された。
明治後半、「図書館令」が公布され、たくさんの公共図書館が設立された。(有料)


戦後の図書館はアメリカの影響を受けた
第二次世界大戦後、GHQが民主化政策を進めた。
教育制度改革を担当したのは「民間情報教育局(CIE)」。
昭和20年「CIE図書館」が東京に開設。その後、全国23館になった。


大阪「CIE図書館」のストーリーアワー(おはなし会)


昭和25年「図書館法」公布
今日の図書館制度の基盤がつくられた。1.「開架式」2.無料で利用可能


公共図書館の数の増加


「移動図書館」
日本初の「移動図書館」は、昭和23年、高知県立図書館の「自動車文庫」といわれる。


日野市立図書館「ひまわり号」では、児童書もたくさんあった(懐かしいなあ!


「学校図書館」の歴史
「学校図書館」の先進国アメリカでも20Cに入ってから重要視された。
日本中につくられたのは、昭和28年に「学校図書館法」が定められてから。
2003年からは、「司書教諭の設置」も決められた。


昭和28年に開館した芳林小学校の図書館

つくられた経緯にはGHQの報告書があった。
「1人の教師が1冊の教科書で教えると、思想教育が起きる可能性がある。
 子どもたちが多様な意見や主張を学べるようにするには、多くの本から学べる環境を整えなければならない」

戦前のような思想統一の予防、民主主義を育てるために重要と考えられるようになった。


日本の「児童図書館」の歴史
公共図書館の「児童室」「児童コーナー」も含まれる。
日本で初めて設けたのは、明治36年の「山口県立山口図書館」。その後増えた。
しかし、満州事変から戦争が長引き、図書館は経費削減・人手不足となり、最初に「児童室」が閉鎖された


「家庭文庫」
戦後、ふたたび「児童室」「児童コーナー」が増えて、1960年頃から一般人が自宅に児童書を集めて、地域に開放する活動が各地で広まった。

「東京子ども図書館」発足(1974)
日本初の児童書専門の私立図書館。

1980年代には、「児童室」「児童コーナー」の設置率は8割を超える。

「国際子ども図書館」一部開館(2000)(意外に最近だったんだ/驚 ここに住みたい!
日本だけでなく、世界中の児童書を集め、展示会なども行っている。
「第二資料室」は「帝国図書館」の建物を模している。

【ブログ内関連記事】
町歩き@上野(国際子ども図書館)


「子どもの読書活動の推進に関する法律」(2001公布)
4/23は「子ども読書の日」と定められた。


児童文学者・石井桃子の「かつら文庫」
「家庭文庫」が増えたきっかけは、石井桃子著『子どもの図書館』。「ポストの数ほど図書館を」と唱えた。
今は「東京子ども図書館」が活動をひきつぎ、毎週土曜に開室している。
石井桃子の翻訳書には、『熊のプーさん』、『ちいさなうさこちゃん』(ミッフィー)、『ピーターラビットのおはなし』などがある/驚

 
「かつら文庫」

村岡花子さんに続き児童文学の礎を築いた、石井桃子さんのことばと生涯に感動の1冊


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