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アガサ・クリスティー探偵名作集 21 『ABC殺人事件 上』 アガサ・クリスティー/著 岩崎書店

2022-08-21 14:37:10 | 
「ジュヴェナイルまとめ」カテゴリー内に追加します


2000年初版 各務三郎/訳 安藤由紀/挿絵

【注意】
トリックもオチもネタバレがあります
極上のミステリーなので、ぜひ読んで犯人当てをしてみてください










本当は『オリエント急行殺人事件』のほうを先に読みたかったけれども
図書館に行ってみたらなかったから
もうひとつの有名な作品を借りてきた

他の出版社では1冊にまとめられたものもあり
きっと面白いと確信があったから
同じ児童書とはいえ上下巻のほうを選んだ

最初に挿絵を見たときあまりにラフでちょっとがっかり
後ろを見たら2000年て新し過ぎたな
昭和初版のジュヴェナイルでアガサのシリーズはないのかなあ?

でもストーリーはやはりどんどん引き込まれていく
今で言う犯人像を想像して行くやり方は『羊たちの沈黙』のプロファイリングを思い出した

犯人は自信たっぷりにポワロに対して挑戦状を送る

全く関係ない人達をABC順に殺しているように思われるが
上巻の半分まで読んで私なりにも推理してみた

ポワロが被害者が美人かどうかを気にしていたので
『羊たちの沈黙』同様、最初のきっかけは
女性に対する何かの恨みで1人をターゲットにした犯行で

精神異常者の連続殺人に見せかけるために
他の関係ない人たちを殺していると思えた

これまで出てきた登場人物の中で一番意外だと思われるのは
精神科医?
とても自信家の若い刑事?
謎の美女の秘書?

でもまだまだ序盤なのなので、後半が楽しみすぎる


【内容抜粋メモ】







第1の挑戦状
1935年 数年ぶりに南アメリカからイギリスに戻ったヘースティングスは
引退した(!)ポワロを訪ねると1通の殺人予告の手紙を見せる

白い便せんに活字体で「6月21日 アンドーバーを警戒せよ ABC」などと書かれている

警視庁には毎日こんなのが届くからイタズラだと笑われた







アレキサンダー(A)・ボナパルト(B)・カスト(C)といういかにもな名前の
謎の男がいきなり出てきて、最初は意味が分からない

予告の日、小さいタバコ屋のアッシャー夫人が後ろから殴られて殺された

ポワロ:これが始まりだ

夫はアルコール依存症 行方不明 いつも金をせびりに来ていた
カウンターの上にABC列車時刻表がアンドーバーで開かれたままふせてあった

金は盗まれていない
アルコール依存症者にはこんな活字体は書けない

凶器は重いステッキか棍棒

姪メリー・ドロアーの証言
アッシャーは弱気でこんなことは出来ないと否定

向かいの八百屋主人の話を聞く

ポワロ:
イギリス人は正面から聞かれると口を閉ざす性格がある
私が尋ねて、君が反対意見を言えば、彼らの口は軽くなる

タバコ屋に寄った客のリストを作る警部
最後に夫人に会った客、死んだのを知らずに帰った客に尋問しても何も出てこない

アッシャーは容疑者としてすぐ捕われるが犯行を否定




ポワロは犯人について考察する
自信家、強い個性、激しい劣等感を持つ男
周りが言う精神異常者の仕業という意見は最初から否定する



第2の挑戦状
指定されたのは「7月25日 ベクスヒル海岸 ABC」






捜査に精神科医のソンプソン博士も加わる

次はBで始まる名前が被害者となる可能性が高いが
夏休みで海岸は観光客で混む

25日早朝、ベクスヒルの海岸でエリザベス・バーナードが殺された
レストラン「ジンジャー・キャット」のウエイトレスで若い美人
凶器は彼女のベルトで首を絞められた
ベクスヒルのページが開かれたABC鉄道案内が置かれていた

ロンドンでタイピストをしている姉ミーガンの証言
妹には不動産会社に勤めるドナルド・フレーザーというBFがいる
妹は派手な性格で、誘われるとすぐにデートに行くため
ドナルドはひどくやきもちを妬いていた
2度ほどひどいケンカをして、「殺してやる!」と脅したこともあった

ドナルドの証言
GFとセント・レナードへ行くと言っていたが
信じられずあとを尾けたが来なかった


たちまちマスコミが騒ぎ出す

ポワロ:
手紙を公開すれば、たくさんの情報が得られる
犯人は自分の犯罪が有名になって喜ぶでしょうね

公表しなかったら、また殺人は続く
A~Zまでか たぶんGかHくらいで捕まえられるでしょう

Cの段階で捕まえます
犯人はそのうち決定的な失敗をやらかす

この連続殺人事件で重要なことは1つ
きっかけ(動機)は何かということです


夫を死刑にされた女が、裁判の立会人を1人ずつ殺した事件があった
共通点がなかなか見つからず連続殺人となった

犯人は優しい
この手紙がなければ、アッシャーやドナルドが捕まったはず

結局、まだ公表は控えることに決まる



第3の挑戦状
「チャーストン 8月30日 ABC」

書かれたのは8月27日、届いたのは30日の夜!
ホワイトホース荘宛てだが、ポワロの家はホワイトヘヴン荘

カーマイケル・クラーク卿が日課の散歩中、後ろから殴られて殺された
中国美術品のコレクター
死体のそばにはABC鉄道案内が置いてあった

ポワロ:共通点があるはずなのに、あまりに身分が違いすぎる

弟フランクリン・クラークの証言
兄嫁の夫人はがんで長くない
8月のチャーストンは海水浴客で混む

カーマイケルの秘書で北欧系の美女ミス・グレー
夫人の世話をしている







アレキサンダー・ボナパルト・カスト




「チャーストンに殺人狂が現れた!」

「犯人はあなたの町にいる!」

などと書かれた新聞を読む男にベンチで話しかけられる

カスト:
僕は戦争に行ったお蔭でダメになり
頭がハッキリしない
時々、自分のしていることが分からなくなる



警視庁は公開捜査に踏み切った

新聞にはヘースティングスが話してないことまで記事にしてあり怒ると

ポワロ:
喋ったことと正反対の記事が載ることもある
でもそれを読んで、犯人がうっかりボロを出すかもしれない

犯人はある目的で人を殺し続けてきた
もう1つの犯罪が起きるのは間違いない

これまでは運が良かった
腕のいい釣り人は魚の好きな餌を知っている
私はその餌を犯人の前にそっと出す

事件関係者は、自分が重要だと思ったことしか話さない



特別捜査隊
フランクリンは被害者の友人や身近な人で捜査隊を作る提案をして
特別捜査隊としてポワロのアパートに集まったのは
ソーラ、ミーガン、メリー、フランクリン、ドナルド






ポワロ:
犯人はあらかじめ犠牲者を選び、土地を選び、殺人の時間も決めているはず
パズルの1片が集まれば1枚の絵になる

それぞれが事件前後の話をする

ポワロはジンジャー・キャットのウエイトレスや
タバコ屋の近所の子どもたちから話を聞くよう捜査隊に指示する

ソーラはロンドンで働きたいと願っていること
兄嫁がポワロに会いたがっていることを伝えるフランクリン





アガサ・クリスティー作品と解説 各務三郎
ポワロは清潔好き、秩序と整頓が生活信条

最後の『カーテン』で病死するが(すごいネタバレ!)
作者が主人公の探偵を死なせるケースは稀
ポワロの死亡記事は新聞・雑誌に載るほど世界で有名になっていた

イギリス紳士とは反対の性格、派手なうぬぼれ屋がユーモラスで
エルキュール(大男ヘラクレス)という名前も良かった

クリスティーが有名になったのは『アクロイド殺人事件』
奇想天外なトリックがフェアかアンフェアかで論争となった

(読んでみたいな



アガサ・クリスティー探偵名作集 22 『ABC殺人事件 下』 アガサ・クリスティー/著 岩崎書店
につづく


コメント

アガサ・クリスティー探偵名作集 22 『ABC殺人事件 下』 アガサ・クリスティー/著 岩崎書店

2022-08-21 14:37:09 | 
「ジュヴェナイルまとめ」カテゴリー内に追加します


2000年初版 各務三郎/訳 安藤由紀/挿絵

アガサ・クリスティー探偵名作集 21 『ABC殺人事件 上』 アガサ・クリスティー/著 岩崎書店



【注意】
トリックもオチもネタバレがあります
極上のミステリーなので、ぜひ読んで犯人当てをしてみてください



上巻では、いかにも怪しいABCを頭文字とした名前の男が出て来る
これは犯人が読者に分かっている上で
事件が進むタイプの小説なのか?

下巻前半では、この特別捜査隊の中に犯人がいる?
と思ったがポワロ同様動機がまったく分からない

真犯人と動機が分かると、なるほどシンプルだと分かるが
そのトリックを見破ったポワロは引退してなお素晴らしい探偵ぶり!
クリスティの文才にも舌を巻いた



【内容抜粋メモ】

ポワロが“かん高い声”で歌い出す場面は笑っちゃうww

黒髪が好きな時もある 金髪だって好きになるさ
(エデンからスエーデンをまわってきた金髪だよ)


(ソーラのことだよね?


クラーク卿夫人の看護婦の証言
美術品の競り売りがあるたびにクラーク卿はグレーと出かけていた


クラーク卿夫人の証言
痛み止めのモルヒネのせいで頭がハッキリしないが
事件当日、見知らぬ男と玄関で話していたのを見た

クラーク卿夫人は2人の仲を疑っていて
今回の事件後グレーをクビにした







第4の挑戦状
「9月11日 ドンカスター ABC」

警察は大捜査網を張るが、当日はセントレジャーの競馬で大混雑が予想される

ポワロは犯人のモンタージュ写真を作ってみようと提案
グレーが事件当日、靴下などを売り歩く元軍人のセールスマンと話したことを思い出した
ミーガンもアッシャー夫人のためにセールスマンから新しい靴下を買った

グレー:メガネをかけて、ボロボロのオーバーを着ていた 目立つ顔じゃない

ポワロ:連続殺人事件の犯人は“目立つ顔”ではありません!



カスト
宿屋のマーベリー夫人はカストの顔色があまり悪いため心配する
娘のリリーも心配する

カスト:私は決めたことは最後までやり通します

チェルトナムに行くと言って出かけたが
リリーのBFトムはカストが落とした切符を拾い
ドンカスター行きとあったため、ABC殺人犯なら面白いねと話す



ポワロ:
人殺しは見事な計画だけでは成功しない
運が必要だが、犯人はそれに気づかない
運は私たちに向いてきたと思いますよ


カストがホテル「黒い白鳥」に戻ると
服のそでが血で濡れ、ポケットから血のついたナイフが出て来て驚く

洗面所で血に染まった手を洗っているところに女中が来て
手を切ったとウソをつく


映画館で床屋のジョージ・アースフィールドが殺された

目撃者レドベターの証言
被害者につまづいたフリをしてかがんだ時に殺したに違いない
大男、日焼けした顔で、はげていたようで・・・

ロジャー・ダウンズ校長の証言
眠っている男の足が邪魔で声をかけたが返事がなく倒れた
慌てて係員を読んだ

犯人は名前がDの校長を狙って
背格好の似ている床屋と間違えたのかもしれない

ホテルの女中の証言
お客にお湯を持って行ったら、手を洗っていて真っ赤だった
事件のことを聞いて警察に来た 部屋に行くと誰もいない
庭から出たと言う人がいる

ホテルの宿泊人名簿のサインはABC
部屋に置いた箱の中身は絹の靴下

トム・ハーティガンの証言
GFリリーの母がやってる下宿屋に1年以上住んでるカストさんは
セールスマンをしているらしく、事件の日は3回とも同じ場所に行っている
新聞に載った人物がカストさんにソックリ

リリーはカストのはずがないと、声を変えて下宿屋に電話し
カストの妹と名乗って、刑事が行くから逃げるように言う

カストは部屋を出るが、どこへ行けばいいのだろう?




カストの行動
部屋に挑戦状と同じ便せん、ABC鉄道案内があった
靴下のセールスマンで、玄関の傘立てから凶器のナイフが出てきた

カストには動機がないとひっかかるポワロ

その後、カストは自分から警察署に入り、倒れて失神した
てんかん症状があると分かる
殺人は否認している

ソンプソン博士:
アレキサンダーはアレキサンダー大王から
ボナパルトはナポレオンからつけられた名前

ポワロはヘラクレスからつけられた
自分の名前にふさわしい相手を選んだのでは?(w

鉱山技師ストレンジの証言
7月24日の夜から翌朝までの事件について
2人でドミノゲームをしていた
カストは腕がいい

この事件についてのアリバイはあると分かる



うそはおことわりゲーム




ベクスヒルに特別捜査隊が集められ
ポワロは「うそはおことわりゲーム」をやろうと言い出す
3度ずつ質問し、答える人は2度だけ真実を言わねばならないルール

フランクリンには6月の競馬の帽子の流行はどう思うかを聞く
ドナルドには休みをいつとったか

ソーラにはクラーク卿と結婚するつもりがあったか
グレー:もちろん、NOです

ミーガンには事件を明るみに出すことを願っているか?
ミーガン:願っていません! と言ってみんな驚く

メリーには好きな男性がいるか聞いていないと答える



カストとポワロの面談

カスト:
母は私を愛していたため、こんなくだらない名前をつけた
母は私に失望して死にました

戦争には行って良かった 戦友は本当の友だち
私は役に立つと分かった

頭をヤラれて発作が起きるようになり
店員になって、私だけ給料が上がらず生活が苦しくなった

ポワロ:
代理店ではあなたを雇っていないと言った
タイプライターの字はそれぞれ特徴がある
指示する書類はあなたの部屋のタイプライターで打たれたものです


(これって以前やってたゲーム『アルプス殺人事件』で知ってる!
ゲームで遊んでみた まとめ

カスト:
店員だった頃、ドミノで友だちになった男を覚えている
私の手相を見て、死ぬ前にイギリスで最も有名になる
死刑になるとも言っていた


ポワロ:
あなたは人を殺したのが分かっているが
なぜそんなことをしたのか分からないのでは?



動機の真相

ポワロ:
多分、ABCはハンサムで女性を口説くのが上手いはず
エリザベスのベルトを褒めて、ふざけて首に回して絞めつけた

カストは有罪だと思い込んでいる
罠にかけられた哀れな犠牲者の1人ではなかろうか

ニセのアリバイは見破られやすいから殺人狂を生み出した
大富豪クラーク卿の場合、財産相続の夫人は死にかけている

ABCはフランクリン・クラークなのです(!!!

あなたは財産が欲しかった
そしてソーラさんを愛していた

ソーラさんは損得を考える女性
チャンスがあれば飛びつくし、結婚して子どもが生まれれば
永久に財産を受け継げなくなる

(大体、推理小説の動機って相続なんだな


まず、カストの名前で靴下を代理店に頼み
ABC鉄道案内と一緒に送る
指示のリストをタイプライターで打って、それも送る

1人目にアッシャー夫人を殺した
2人目のエリザベスは安全のため1日前に殺した

3人目こそ狙っていた殺人
挑戦状は遅れて配達されるよう、わざと住所を間違えた

だがこのまま誰もカストに気づかないと困る
そして4人目の男を刺して
カストの袖で血を拭いて、ナイフをポケットに入れた

てんかんのために自分の行動が分からなくなったカストは
自分がやったと思うようになった

あなたの部屋に殺人に使った鉛をつけたステッキがありました
タイプライターからあなたの指紋も出ました


フランクリンは小型ピストルで頭を撃とうとしたが空砲
ポワロは腕のいいスリを雇って、銃から弾丸を抜いて戻した

「うそはおことわりゲーム」でフランクリンは最初の手紙を出した時
ロンドンにいたことをうっかり喋った

タイプライターの指紋の話は誘導のウソ


カスト:ある新聞が100ポンドで事件の体験記を買いたいと言うんです!

ポワロ:
500ポンドと言いなさい
体験記はできるだけたくさんの新聞に売りなさい
ついでに少し休んだらいかがですか?








アガサ・クリスティー作品と解説 各務三郎
物語にのめりこみつつ、推理を働かせるのがミステリーの一番の楽しみ

本書は、連載当時、読者の推理を呼びかけた
クリスティー自身も気に入っていたトリック

研究家によると、本書は中東のシリアで書かれた
クリスティーは旅行が好きで
考古学者の夫マックスの発掘にたびたび同行していた

クリスティー:
砂漠で書くのは楽しい
電話、オペラ、家事、庭いじりなどから離れられる




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