昭和52年初版 昭和57年第2刷 矢野浩三郎/訳
デザイン/山本卓美 イラストレーション/桜井一
※「ジュヴェナイルまとめ」カテゴリー内に追加します
【注意】
トリックもオチもネタバレがあります
極上のミステリーなので、ぜひ読んで犯人当てをしてみてください
ジョルジュ・シムノン
1903年 ベルギー生 11歳で作家を目指すが、15歳の時、父が病気で倒れて中退
書店店員、新聞記者など転々とした
全作品は450冊と言われる
これで「文研の名作ミステリー」シリーズは全部制覇した
シムノンは『死を呼ぶ犬』でも読んだ
メグレ警視は地道に捜査していくタイプ
口数は少ないが人情派
いつもコメリオ判事にせきたてられているなあ
【内容抜粋メモ】
登場人物
ヘンダーソン夫人
ジョゼフ・ウルタン 元花屋の配達人 死刑囚
ウイリアム・クロスビー ヘンダーソン夫人の甥
ヘレン 妻
エドナ・ライヒベリ 夫妻の友だち
シャン・ラデック 医学生
メグレ パリ警視庁司法警察局の警視
デュフール 部下
ジャンビエ 部下
リュカ 巡査部長
コメリオ 判事
「死刑囚第11号」
もらった手紙通りに夜の2時に死刑囚ウルタンは脱獄
手紙をさし仕入れたのはメグレ警視
殺人現場にはウルタンの足跡、血のついた指紋などがいたるところにあったが
逮捕した際、ウルタンは犯行を否定し続けた
何も盗まれたモノがなく、なにかひっかかる
泳がせたら共犯者にたどり着くのではないかと思ったため
メグレ警視:あの男は頭がおかしいか、無実だ!
影でコメリオ判事、刑務所長とともに見ている
部下のデュフール、ジャンビエ刑事が後を追う
「サン・クルーの殺人事件」
ヘンダーソン夫人とメイドが無残に刺殺された
ウルタンは「シタンゲット」という酒場で死んだように眠る
部下を張らせて、メグレ警視は向かいのホテルから望遠鏡で見張る
「新聞社に届いた手紙」
ウルタンは警察によって脱獄させられたという手紙が届いた
左手で書いたため、筆跡鑑定はムリ
使われた便せんはクーポールという喫茶店のもので
毎日お客で混雑している
ウルタンはデュフールが刑事だと気づくと
水さしで頭を殴って逃走
デュフールは大けがを負う
コメリオはメグレ警視の責任を問い
10日以内に真犯人を逮捕出来なかったら辞職すると約束する
筆跡鑑定のプロ、ムルス:
これを書いたのは、知能は高いが異常な人間
重い病気にかかっていて、自分でも知っている(なぜそこまで分かる?!
「赤い髪の男ラデック」
赤く長い髪の変わった男がヨーグルト1杯でねばっている
ヘンダーソン夫人の甥クロスビー夫妻が入ってきて
友人のエドナ・ライヒベリを紹介する
クロスビーは金遣いが荒く、ヘンダーソン夫人の死後
遺産をもらって、さらに派手な暮らしぶり
その店にウルタンも来て、赤毛の男がキャビアのサンドイッチを頼み
無銭飲食で捕まる
バーテンに尋ねるとジャン・ラデックという名前で
毎日店で1杯の飲み物などで粘り
店のガラス箱に手紙を入れるようにしてある
警察で調べると優秀な医学生
釈放して部下に尾けさせるが巻かれる
ウルタンはナンディにある実家に帰り、家畜小屋に入る
メグレ警視はクーポールでラデックと再会
新品の札を見せびらかし、ヘンダーソン夫人殺人事件についてべらべらよく話す
ラデック:そもそも捜査の出発点が間違っていたんだ
「ジョルジュ五世ホテル」
クロスビーがここで百フラン札を換金していたのを見る
メグレ警視がウルタンの実家に着くと
ウルタンは首を吊って自死を図っていた
小屋にいるのを見つかり、父に出ていけと言われたショック
「サン・クルーの別荘」
メグレ警視は事件の現場をもう一度見ようと戻る
人の気配を感じて追うと、逃げ場をなくしたクロスビーが頭を撃って自死
ラデックは尾行していたジャンビエとともに
ペリカンというバーで飲んだくれていた
メグレ警視はもう一度、事件を全部ノートに書き出して再考する
ラデック宛ての郵便がM.Vという名に最近来ていたことが分かる
クロスビーからもらった札束が入っていたと思われる
メグレ警視はラデックを尾け、ともに行動すると
また事件についてべらべら喋る
クロスビーは多額の借金を抱えていた
ヘンダーソン夫人が亡くなれば遺産がもらえると待ち望んでいた
まる3日も尾けながら、ラデックの話には興味なさそうにしていると
イライラして、新聞売りのおばあさんに
歌って踊ったら大金をやるなどと言い出して周りとモメる
クロスビー夫人は、ウルタンが寝泊まりしたシタンゲットに来て
何か探している様子で怪しいから後を尾けてみようと提案するラデック
シタンゲットでは目当てのモノがなかったらしく
次はサン・クルーの別荘に入り、凶器らしきナイフを隠し持って出て行った
また殺人が行われたかもしれないと示唆するラデック
別荘を一緒に見に行こうと誘い、エドナが生きているのを見て
ラデックはメグレ警視を銃で撃つが空砲で逮捕される
「10万フランで引き受けた」
ラデックは負けを認めて、あっさりと殺人を自白
メグレ警視:
犯行のヒントは本人が話してくれた
目的もなく、ただ人殺しをするために殺した
彼は子どもの時から自分を天才だと思っていた
数分見ただけで弱点を見抜く特技があった(!
いつか有名になって金持ちになれる
だが、医学生になり、母と同じ脊髄の病気と分かり夢が崩れた
しかも、母は彼の成功を見ずに死んでしまった
ラデックは世の中を憎んでいた
クロスビーが友人に叔母を殺してくれたら10万フラン出すと言うのを聞いて
「10万フランで引き受けた」と書いた手紙を無名で渡した
ウルタンに1晩で大金が稼げる仕事があると騙して現場に行かせた
ラデックが殺した死体を動かし、足跡や指紋を残したまま部屋から逃げた
逮捕されたら死刑になる
だが、僕が必ず助けてあげると約束
メグレ警視が出した手紙がラデックからだと思い脱獄
だがクーポールでウルタンを見たラデックは怖くなって
無銭飲食でわざと捕まった
この完全犯罪を知るのは本人だけ
誰も賞賛してくれない
誰でもいいから話したくてたまらず、メグレ警視に挑戦した
クロスビーが別荘に行くよううながしたのもラデック
クロスビー夫人とエドナにも手紙を出して、2人が憎み合い
別荘でかちあうよう仕向けたのもラデック
それを見越して、メグレ警視は2人に事情を話して
手紙の指示通り動くよう言った
ラデックの銃から弾を抜いておいたメグレ警視が勝った
ラデック:
僕を死刑にしてください
前にドイツで立ち会った時、落ち着いていた死刑囚が急に泣いて
「お母さん!」と叫ぶのを見て、自分もそうなるか興味がある
「処刑の朝」
ラデックの死刑執行にメグレ警視も立ち会うよう本人に頼まれて行くと
堂々としていたのに、地面の氷で滑ってひどく転ぶ
ラデック:
しくじっちゃったな・・・
警視さんは、家に帰れば、奥さんが待っているのでしょ?
暖かいコーヒーをわかして
メグレ警視はその朝、家には帰らず、警視庁の自分の部屋に行き
ストーブの火をめちゃくちゃにかきたてた
■解説
本書はメグレ警視シリーズ中で代表的な作品の1つと言われる
ある批評家はこのシリーズを
「誰が殺したのかを当てるのではなく、なぜ殺したのかを探る小説」と言った
デザイン/山本卓美 イラストレーション/桜井一
※「ジュヴェナイルまとめ」カテゴリー内に追加します
【注意】
トリックもオチもネタバレがあります
極上のミステリーなので、ぜひ読んで犯人当てをしてみてください
ジョルジュ・シムノン
1903年 ベルギー生 11歳で作家を目指すが、15歳の時、父が病気で倒れて中退
書店店員、新聞記者など転々とした
全作品は450冊と言われる
これで「文研の名作ミステリー」シリーズは全部制覇した
シムノンは『死を呼ぶ犬』でも読んだ
メグレ警視は地道に捜査していくタイプ
口数は少ないが人情派
いつもコメリオ判事にせきたてられているなあ
【内容抜粋メモ】
登場人物
ヘンダーソン夫人
ジョゼフ・ウルタン 元花屋の配達人 死刑囚
ウイリアム・クロスビー ヘンダーソン夫人の甥
ヘレン 妻
エドナ・ライヒベリ 夫妻の友だち
シャン・ラデック 医学生
メグレ パリ警視庁司法警察局の警視
デュフール 部下
ジャンビエ 部下
リュカ 巡査部長
コメリオ 判事
「死刑囚第11号」
もらった手紙通りに夜の2時に死刑囚ウルタンは脱獄
手紙をさし仕入れたのはメグレ警視
殺人現場にはウルタンの足跡、血のついた指紋などがいたるところにあったが
逮捕した際、ウルタンは犯行を否定し続けた
何も盗まれたモノがなく、なにかひっかかる
泳がせたら共犯者にたどり着くのではないかと思ったため
メグレ警視:あの男は頭がおかしいか、無実だ!
影でコメリオ判事、刑務所長とともに見ている
部下のデュフール、ジャンビエ刑事が後を追う
「サン・クルーの殺人事件」
ヘンダーソン夫人とメイドが無残に刺殺された
ウルタンは「シタンゲット」という酒場で死んだように眠る
部下を張らせて、メグレ警視は向かいのホテルから望遠鏡で見張る
「新聞社に届いた手紙」
ウルタンは警察によって脱獄させられたという手紙が届いた
左手で書いたため、筆跡鑑定はムリ
使われた便せんはクーポールという喫茶店のもので
毎日お客で混雑している
ウルタンはデュフールが刑事だと気づくと
水さしで頭を殴って逃走
デュフールは大けがを負う
コメリオはメグレ警視の責任を問い
10日以内に真犯人を逮捕出来なかったら辞職すると約束する
筆跡鑑定のプロ、ムルス:
これを書いたのは、知能は高いが異常な人間
重い病気にかかっていて、自分でも知っている(なぜそこまで分かる?!
「赤い髪の男ラデック」
赤く長い髪の変わった男がヨーグルト1杯でねばっている
ヘンダーソン夫人の甥クロスビー夫妻が入ってきて
友人のエドナ・ライヒベリを紹介する
クロスビーは金遣いが荒く、ヘンダーソン夫人の死後
遺産をもらって、さらに派手な暮らしぶり
その店にウルタンも来て、赤毛の男がキャビアのサンドイッチを頼み
無銭飲食で捕まる
バーテンに尋ねるとジャン・ラデックという名前で
毎日店で1杯の飲み物などで粘り
店のガラス箱に手紙を入れるようにしてある
警察で調べると優秀な医学生
釈放して部下に尾けさせるが巻かれる
ウルタンはナンディにある実家に帰り、家畜小屋に入る
メグレ警視はクーポールでラデックと再会
新品の札を見せびらかし、ヘンダーソン夫人殺人事件についてべらべらよく話す
ラデック:そもそも捜査の出発点が間違っていたんだ
「ジョルジュ五世ホテル」
クロスビーがここで百フラン札を換金していたのを見る
メグレ警視がウルタンの実家に着くと
ウルタンは首を吊って自死を図っていた
小屋にいるのを見つかり、父に出ていけと言われたショック
「サン・クルーの別荘」
メグレ警視は事件の現場をもう一度見ようと戻る
人の気配を感じて追うと、逃げ場をなくしたクロスビーが頭を撃って自死
ラデックは尾行していたジャンビエとともに
ペリカンというバーで飲んだくれていた
メグレ警視はもう一度、事件を全部ノートに書き出して再考する
ラデック宛ての郵便がM.Vという名に最近来ていたことが分かる
クロスビーからもらった札束が入っていたと思われる
メグレ警視はラデックを尾け、ともに行動すると
また事件についてべらべら喋る
クロスビーは多額の借金を抱えていた
ヘンダーソン夫人が亡くなれば遺産がもらえると待ち望んでいた
まる3日も尾けながら、ラデックの話には興味なさそうにしていると
イライラして、新聞売りのおばあさんに
歌って踊ったら大金をやるなどと言い出して周りとモメる
クロスビー夫人は、ウルタンが寝泊まりしたシタンゲットに来て
何か探している様子で怪しいから後を尾けてみようと提案するラデック
シタンゲットでは目当てのモノがなかったらしく
次はサン・クルーの別荘に入り、凶器らしきナイフを隠し持って出て行った
また殺人が行われたかもしれないと示唆するラデック
別荘を一緒に見に行こうと誘い、エドナが生きているのを見て
ラデックはメグレ警視を銃で撃つが空砲で逮捕される
「10万フランで引き受けた」
ラデックは負けを認めて、あっさりと殺人を自白
メグレ警視:
犯行のヒントは本人が話してくれた
目的もなく、ただ人殺しをするために殺した
彼は子どもの時から自分を天才だと思っていた
数分見ただけで弱点を見抜く特技があった(!
いつか有名になって金持ちになれる
だが、医学生になり、母と同じ脊髄の病気と分かり夢が崩れた
しかも、母は彼の成功を見ずに死んでしまった
ラデックは世の中を憎んでいた
クロスビーが友人に叔母を殺してくれたら10万フラン出すと言うのを聞いて
「10万フランで引き受けた」と書いた手紙を無名で渡した
ウルタンに1晩で大金が稼げる仕事があると騙して現場に行かせた
ラデックが殺した死体を動かし、足跡や指紋を残したまま部屋から逃げた
逮捕されたら死刑になる
だが、僕が必ず助けてあげると約束
メグレ警視が出した手紙がラデックからだと思い脱獄
だがクーポールでウルタンを見たラデックは怖くなって
無銭飲食でわざと捕まった
この完全犯罪を知るのは本人だけ
誰も賞賛してくれない
誰でもいいから話したくてたまらず、メグレ警視に挑戦した
クロスビーが別荘に行くよううながしたのもラデック
クロスビー夫人とエドナにも手紙を出して、2人が憎み合い
別荘でかちあうよう仕向けたのもラデック
それを見越して、メグレ警視は2人に事情を話して
手紙の指示通り動くよう言った
ラデックの銃から弾を抜いておいたメグレ警視が勝った
ラデック:
僕を死刑にしてください
前にドイツで立ち会った時、落ち着いていた死刑囚が急に泣いて
「お母さん!」と叫ぶのを見て、自分もそうなるか興味がある
「処刑の朝」
ラデックの死刑執行にメグレ警視も立ち会うよう本人に頼まれて行くと
堂々としていたのに、地面の氷で滑ってひどく転ぶ
ラデック:
しくじっちゃったな・・・
警視さんは、家に帰れば、奥さんが待っているのでしょ?
暖かいコーヒーをわかして
メグレ警視はその朝、家には帰らず、警視庁の自分の部屋に行き
ストーブの火をめちゃくちゃにかきたてた
■解説
本書はメグレ警視シリーズ中で代表的な作品の1つと言われる
ある批評家はこのシリーズを
「誰が殺したのかを当てるのではなく、なぜ殺したのかを探る小説」と言った