昭和57年初版 昭和62年再版 藤原宰太郎/訳 中島河太郎/監修
表紙デザイン/岩尾収蔵 表紙・口絵・挿絵/伊藤展安
※「ジュヴェナイルまとめ」カテゴリー内に追加します
【注意】
トリックもオチもネタバレがあります
極上のミステリーなので、ぜひ読んで犯人当てをしてみてください
無実なのに牢屋でのんびりしている主人公もすごいけど
死刑まであと6日しかないのに、随分呑気な捜査だな
他の探偵や刑事なら寝ないで、依頼された日から動くだろうに
それとも子ども用に書き換えてこんなふうに緩くなったのか?
身近な人間が真犯人かもって思いながら
身近な人間に探偵をさせるっていうのも変な話
数日経ってからアリバイを聞いたりして
後半はクレーン探偵がスラスラと謎解きをするのが不自然なくらい急展開
【内容抜粋メモ】
登場人物
証券会社社長ロバート・ウェストランド
共同経営者のボルストン 浪費家
共同経営者ウッドベリー 信用ならない
支配人スプレイグ
秘書ブレンチーノ
召使のシモンズ
婚約者エミリー・マーチン
従弟のウォートン 怠け者の遊び人
ヒンクルシュタイン弁護士
アメリカ一の私立探偵クレーン
シカゴ市警察のストローム警部
ジョー・ペトロは盗品買いのギャング
マニー・グラント 宝石どろぼう
■死刑7日前の夜
証券会社社長ロバート・ウェストランドは、妻を銃殺した罪で
右の独房の殺人狂バレチャ、左の独房にいるギャングのコナーズとともに
土曜の午前0時1分に電気いすにかけられる運命
バレチャが自死を図って失敗したのを見て、死ぬのが急に怖くなり
コナーズが教えてくれたヒンクルシュタイン弁護士に取り次いでもらうため
シカゴ刑務所長に1万ドル払って交渉をつける
見知らぬM.Gという人物からジョー・ペトロの所へ行けば
事件当夜のアリバイを証明してやると書いてある手紙を2週間前にもらったことを
ヒンクルシュタインに話す
妻とは以前から別居状態
通いのお手伝いが朝行くとドアが開かずに
共同経営者のボルストン、管理人でドアを開けたら銃殺されていた
部屋は密室状態、合鍵は2つしかなく
1つは死体のそば、もう1つはウェストランドが持っていた
ウェストランドはテニスをしていた時に逮捕された
自分の軍用拳銃ウェブレイが犯行に使われた
その夜、婚約者エミリー・マーチンから妻から罵られたと電話があり
憤慨して妻のアパートに行くと、エミリーに会ったことはないと言う
ケンカして、その後帰宅した
エミリーは叔父夫婦と暮らしており、廊下に電話があるが
電話はかけていないと証言
妻の下に住むシャトル夫婦が12時20分頃に銃声を聞いた
妻の遺産はウェストランドに入る
ウェストランドが死刑になれば
エミリーに2/3、召使のシモンズ、従弟のウォートンに遺産が入る
これらの証拠を覆すか、真犯人を捕まえるしか、死刑を中断させる方法はないため
アメリカ一の私立探偵クレーンを呼ぶ
コナーズ:ジョー・ペトロは盗品買いのギャングで、ヤクザの一味だ
■死刑5日前の朝
もう1人の共同経営者ウッドベリー、秘書ブレンチーノらが特別面会室に集まる
ヒンクルシュタイン:
5日で解決するのは不可能
あなたたちにも探偵になって、捜査に協力してもらいたい
日に1度、ここに来て報告しよう
ペトロに聞くとM.Gとはマニー・グラント
モンマルトというナイトクラブで会う約束をする
ウェストランド:
妻を殺して、罪を着せたのだから
真犯人は身近にいるやつに違いない
エミリーらがモンマルトに行くと、2人組の男がいきなり発砲して男が死ぬ
名前を聞くと、アリバイを証言するはずのグラントだった
■死刑4日前の朝
ボルストンは事件当日は夏時間に切り替わる日で
ウェストランドは夏時間、シャトル夫妻は標準時間で答えていたことを明かす
それでもウェストランドの疑いは晴れない
なにか思いついた支配人スプレイグは
明日、話すと言ってなにか調べ始める
クレーン探偵は、ショーウインドーの奥で
ボルストンにネクタイを選ぶエミリーを見て不審に思う
ウェストランドの拳銃は書斎の引き出しに入れてあり
誰でも盗むことができる
ウェストランドの部屋のカギはエミリーも持っている
クレーン探偵はウェストランドを逮捕したシカゴ市警察のストローム警部を訪ねる
その途中、車から機関銃で撃たれて、そばにいた黒人男性が怪我をする
■死刑3日前の昼
クレーン探偵は身近な人たちのアリバイを調べる
ウォートンは家で寝ていたが、ウェストランドに会う約束があり事務室で待っていたら
ボルストンから事件のことを聞いた
ウッドベリーとブレンチーノはナイトクラブのパーティーに行っていた
スプレイグがひき逃げされて死に、また捜査は行き詰る
ストローム警部は無実の男を電気いすに送ったら寝覚めが悪いと捜査に協力する
クレーン探偵はペトロを脅すと、グラントの仇をとるために機関銃で撃ったと話す
グラントは当夜アパートに盗みに入って、ウェストランドを見た
その時、妻はまだ生きていた
クレーン探偵はエミリーが住む叔父夫婦の家に電話局の職員が2回来て
そのうち1回はニセだと調べる
エミリーは引き出しの中に母の結婚証明書があるのを隠す
■死刑2日前の朝
クレーン探偵がシャワーを浴びている時にヒンクルシュタインが来て
鼻歌は聞こえなかったと話して、なにかひらめく
ウェストランド夫人の持ち株に盗品が混ざっていた
数年前、銀行が強盗に遭い、盗まれた株券の一部で
それを売りさばいていたと思われる
ウェストランド:エミリーから電話があった時、滝のような音を聴いた
クレーン探偵はタクシー運転手にラ・サール街とアダムズ街を
何度も往復させて、25分以内で行ける道を聞くと
高速道路の下を通るコースがあり、そこからスパナをシカゴ川に投げ入れる
次は潜水夫を雇い、電磁石で鉄製のものを探してくれと頼むと
ウェストランドの軍用拳銃ウェブレイが出てきて
事件のものかをライフルマークから検査してもらう
同じタイプの銃を売った者がいないか電報を出すと
セントルイス市の銃器店から連絡が来る
盗品の株券は60万ドル以上の高額にのぼり
ウェストランドの銃は妻殺しのものでないと分かる
銃器店に向かったクレーン探偵は店主に写真を見せて真犯人を知る
試射場に弾が残っているため、雨降る中、粘土から弾を1発見つけるたびに
100ドル出すと言うと、若い店員らは張り切って作業にあたる
■死刑前夜
刑務所長室に全員を集める
ロス検事に説明して、納得したら州知事は死刑を延期すると約束
ウェストランドは電極をつなぐため、髪のてっぺんとすねが剃られている
盗んだ株券のことはまったく知らないと否定
銃器店の店主は関係者の中から銃を買ったのはボルストンと証言
その弾が事件に使われたものだと判明
株券のことを疑ったウェストランド夫人を射殺
シモンズに電話してから銃を盗んで、川から捨てた
その際、家のカギはエミリーから借りた
電話の声はエミリー自身
ボルストンとエミリーは結婚していた
結婚証明書はエミリー自身のもの
浴室からかけたため、滝のような音で声が消されて叔父夫婦まで聞こえなかった
スプレイグは帳簿を調べて犯人に気づいて殺された
密室の謎はカンタン
ボルストンが管理人らと一緒に入り、気づかれないうちにテーブルに置いた
■死刑執行当日
コナーズとバレチャは1人ずつ電気いすにかけられる
神父が聖書を読む
神よ 恵をたれたまえ
聖なる予言者よ 彼のために祈りたまえ
■解説
ジョナサン・ラティマー
1906年生 『シカゴ・トリビューン』紙の記者をしながら本書を発表
原題は『霊柩車へ突進』
つづけて翌年『モルグの女』の2作品で大成功した後、映画のシナリオ作家になる
作品の少ない作家
本書の2年後、ウィリアム・アイリッシュが『幻の女』を書いた
本書のアイデアをそっくり真似して、日本ではそちらが有名
表紙デザイン/岩尾収蔵 表紙・口絵・挿絵/伊藤展安
※「ジュヴェナイルまとめ」カテゴリー内に追加します
【注意】
トリックもオチもネタバレがあります
極上のミステリーなので、ぜひ読んで犯人当てをしてみてください
無実なのに牢屋でのんびりしている主人公もすごいけど
死刑まであと6日しかないのに、随分呑気な捜査だな
他の探偵や刑事なら寝ないで、依頼された日から動くだろうに
それとも子ども用に書き換えてこんなふうに緩くなったのか?
身近な人間が真犯人かもって思いながら
身近な人間に探偵をさせるっていうのも変な話
数日経ってからアリバイを聞いたりして
後半はクレーン探偵がスラスラと謎解きをするのが不自然なくらい急展開
【内容抜粋メモ】
登場人物
証券会社社長ロバート・ウェストランド
共同経営者のボルストン 浪費家
共同経営者ウッドベリー 信用ならない
支配人スプレイグ
秘書ブレンチーノ
召使のシモンズ
婚約者エミリー・マーチン
従弟のウォートン 怠け者の遊び人
ヒンクルシュタイン弁護士
アメリカ一の私立探偵クレーン
シカゴ市警察のストローム警部
ジョー・ペトロは盗品買いのギャング
マニー・グラント 宝石どろぼう
■死刑7日前の夜
証券会社社長ロバート・ウェストランドは、妻を銃殺した罪で
右の独房の殺人狂バレチャ、左の独房にいるギャングのコナーズとともに
土曜の午前0時1分に電気いすにかけられる運命
バレチャが自死を図って失敗したのを見て、死ぬのが急に怖くなり
コナーズが教えてくれたヒンクルシュタイン弁護士に取り次いでもらうため
シカゴ刑務所長に1万ドル払って交渉をつける
見知らぬM.Gという人物からジョー・ペトロの所へ行けば
事件当夜のアリバイを証明してやると書いてある手紙を2週間前にもらったことを
ヒンクルシュタインに話す
妻とは以前から別居状態
通いのお手伝いが朝行くとドアが開かずに
共同経営者のボルストン、管理人でドアを開けたら銃殺されていた
部屋は密室状態、合鍵は2つしかなく
1つは死体のそば、もう1つはウェストランドが持っていた
ウェストランドはテニスをしていた時に逮捕された
自分の軍用拳銃ウェブレイが犯行に使われた
その夜、婚約者エミリー・マーチンから妻から罵られたと電話があり
憤慨して妻のアパートに行くと、エミリーに会ったことはないと言う
ケンカして、その後帰宅した
エミリーは叔父夫婦と暮らしており、廊下に電話があるが
電話はかけていないと証言
妻の下に住むシャトル夫婦が12時20分頃に銃声を聞いた
妻の遺産はウェストランドに入る
ウェストランドが死刑になれば
エミリーに2/3、召使のシモンズ、従弟のウォートンに遺産が入る
これらの証拠を覆すか、真犯人を捕まえるしか、死刑を中断させる方法はないため
アメリカ一の私立探偵クレーンを呼ぶ
コナーズ:ジョー・ペトロは盗品買いのギャングで、ヤクザの一味だ
■死刑5日前の朝
もう1人の共同経営者ウッドベリー、秘書ブレンチーノらが特別面会室に集まる
ヒンクルシュタイン:
5日で解決するのは不可能
あなたたちにも探偵になって、捜査に協力してもらいたい
日に1度、ここに来て報告しよう
ペトロに聞くとM.Gとはマニー・グラント
モンマルトというナイトクラブで会う約束をする
ウェストランド:
妻を殺して、罪を着せたのだから
真犯人は身近にいるやつに違いない
エミリーらがモンマルトに行くと、2人組の男がいきなり発砲して男が死ぬ
名前を聞くと、アリバイを証言するはずのグラントだった
■死刑4日前の朝
ボルストンは事件当日は夏時間に切り替わる日で
ウェストランドは夏時間、シャトル夫妻は標準時間で答えていたことを明かす
それでもウェストランドの疑いは晴れない
なにか思いついた支配人スプレイグは
明日、話すと言ってなにか調べ始める
クレーン探偵は、ショーウインドーの奥で
ボルストンにネクタイを選ぶエミリーを見て不審に思う
ウェストランドの拳銃は書斎の引き出しに入れてあり
誰でも盗むことができる
ウェストランドの部屋のカギはエミリーも持っている
クレーン探偵はウェストランドを逮捕したシカゴ市警察のストローム警部を訪ねる
その途中、車から機関銃で撃たれて、そばにいた黒人男性が怪我をする
■死刑3日前の昼
クレーン探偵は身近な人たちのアリバイを調べる
ウォートンは家で寝ていたが、ウェストランドに会う約束があり事務室で待っていたら
ボルストンから事件のことを聞いた
ウッドベリーとブレンチーノはナイトクラブのパーティーに行っていた
スプレイグがひき逃げされて死に、また捜査は行き詰る
ストローム警部は無実の男を電気いすに送ったら寝覚めが悪いと捜査に協力する
クレーン探偵はペトロを脅すと、グラントの仇をとるために機関銃で撃ったと話す
グラントは当夜アパートに盗みに入って、ウェストランドを見た
その時、妻はまだ生きていた
クレーン探偵はエミリーが住む叔父夫婦の家に電話局の職員が2回来て
そのうち1回はニセだと調べる
エミリーは引き出しの中に母の結婚証明書があるのを隠す
■死刑2日前の朝
クレーン探偵がシャワーを浴びている時にヒンクルシュタインが来て
鼻歌は聞こえなかったと話して、なにかひらめく
ウェストランド夫人の持ち株に盗品が混ざっていた
数年前、銀行が強盗に遭い、盗まれた株券の一部で
それを売りさばいていたと思われる
ウェストランド:エミリーから電話があった時、滝のような音を聴いた
クレーン探偵はタクシー運転手にラ・サール街とアダムズ街を
何度も往復させて、25分以内で行ける道を聞くと
高速道路の下を通るコースがあり、そこからスパナをシカゴ川に投げ入れる
次は潜水夫を雇い、電磁石で鉄製のものを探してくれと頼むと
ウェストランドの軍用拳銃ウェブレイが出てきて
事件のものかをライフルマークから検査してもらう
同じタイプの銃を売った者がいないか電報を出すと
セントルイス市の銃器店から連絡が来る
盗品の株券は60万ドル以上の高額にのぼり
ウェストランドの銃は妻殺しのものでないと分かる
銃器店に向かったクレーン探偵は店主に写真を見せて真犯人を知る
試射場に弾が残っているため、雨降る中、粘土から弾を1発見つけるたびに
100ドル出すと言うと、若い店員らは張り切って作業にあたる
■死刑前夜
刑務所長室に全員を集める
ロス検事に説明して、納得したら州知事は死刑を延期すると約束
ウェストランドは電極をつなぐため、髪のてっぺんとすねが剃られている
盗んだ株券のことはまったく知らないと否定
銃器店の店主は関係者の中から銃を買ったのはボルストンと証言
その弾が事件に使われたものだと判明
株券のことを疑ったウェストランド夫人を射殺
シモンズに電話してから銃を盗んで、川から捨てた
その際、家のカギはエミリーから借りた
電話の声はエミリー自身
ボルストンとエミリーは結婚していた
結婚証明書はエミリー自身のもの
浴室からかけたため、滝のような音で声が消されて叔父夫婦まで聞こえなかった
スプレイグは帳簿を調べて犯人に気づいて殺された
密室の謎はカンタン
ボルストンが管理人らと一緒に入り、気づかれないうちにテーブルに置いた
■死刑執行当日
コナーズとバレチャは1人ずつ電気いすにかけられる
神父が聖書を読む
神よ 恵をたれたまえ
聖なる予言者よ 彼のために祈りたまえ
■解説
ジョナサン・ラティマー
1906年生 『シカゴ・トリビューン』紙の記者をしながら本書を発表
原題は『霊柩車へ突進』
つづけて翌年『モルグの女』の2作品で大成功した後、映画のシナリオ作家になる
作品の少ない作家
本書の2年後、ウィリアム・アイリッシュが『幻の女』を書いた
本書のアイデアをそっくり真似して、日本ではそちらが有名