メランコリア

メランコリアの国にようこそ。
ここにあるのはわたしの心象スケッチです。

絵本『三つの金の鍵 魔法のプラハ』 ピーター・シス/作 柴田元幸/訳 BL出版

2021-11-06 13:56:35 | 
「作家別」カテゴリー内に追加します






先日、練馬美術館で見に行ったピーター・シスの絵本を
近所の図書館で調べて借りられるだけ借りてきた


ピーター・シスの闇と夢@練馬区立美術館(10.10


まずは展覧会のポスターにも使われていた『三つの金の鍵』から読み始めたら
今回借りた中で一番濃かった!

表紙からストーリーに入るまでの
地図やらイラストからもう
とんでもなく手間暇かかって描かれている/驚×5000







柔らかいタッチの絵は『はてしない物語』の挿絵を思い出した
所々スタンプと思われる絵が
ペタペタと違った色合いでランダムに押してあって
手描きと混ざってフシギな効果が出ている







翻訳はエドワード・ゴーリーの柴田さんで、同じくBL出版から
柴田さんの大好きな世界観の絵だよねって思ったら
プラハではオカルトが盛んって
私のアンテナにも引っかかるわけだv



激しい嵐で熱気球がさらわれるという出だしは
私の大好きなヴェルヌと同じ

プラハに着いて、子供の頃に住んでいた家までたどり着くが
ドアには三つの南京錠がかかっていて鍵がない
そこに家の黒猫がついてこいというように現れる

街もドアも猫の形なのが好きすぎる

猫の形で描かれた迷路になった街並みも
一体どれほどの時間と手間がかかっているか!

展覧会にも迷路に模した絵があって
入口から出口までずっと1枚の絵の前に立って魅入ってしまった



緻密な絵が描かれた紙?に不思議な線が入っている
描いた後に跡をつけたのか、制作方法が気になる
まるで時空の歪みのような効果を生んでいる






今朝見たなつみさんの動画に出てきた「数秘術」
最近やっているゲームのキャラストに出て来た「ゴーレム(人造人間)」の話

リンゴを食べながら読んでいたら
リンゴまでストーリーに出てきてリンクしまくり!!
ちょうど読むタイミングでウチにやって来たんだなv



最後、我が家の扉を開けると
お母さんが温かいご飯をつくり
お父さんと子どもが食卓につく
とても懐かしい風景に涙がこみ上げた

私の子ども時代は、家庭の温かい思い出は淡いけれども
制限された国に生まれたシスには
温かい家族、親戚、友だち、街の思い出がたくさんあることが伝わる
それを愛娘、次世代の子どもたちに伝えたいという想いが溢れている



私は図書館で借りる派だけど
この1冊は何度観ても観きれない程
毎回新たな発見があるだろう

ストーリーも、読むタイミングによって
新たな気づきが無限にあるだろう

宝物になる1冊




「プラハは魔法と伝説の街」柴田元幸
なにを描いても独特の幻想性を醸し出す
闇と夢の絵本作家ピーター・シス

(ここから展覧会のタイトルがついたのか?



ピーター・シス
1949年 チェコ生まれ
1982年 アメリカ移住
コールデコット・オナーブックを受けた「星の使者」ほか

(紹介文をカバーから切り取って、最後のページに貼ってある
 図書館では本が傷まないように周りをビニールテープ?で保護するから
 外したカバーはどうしているのだろう???




【内容抜粋メモ】

(愛する娘マデリンに宛てた前文からもう感動

この手紙を読めるようになる頃には、もう21世紀になっているだろう
新世紀のニューヨークで生まれたお前は
チェコ語なんて全然喋れないかもしれないし
この美しい惑星の中のもっと違った場所のほうが好きかもしれない

けれどもお前はいつの日かプラハの街に入っていくことだろう
父さんが昔遊んでいつかなくしてしまったおはじきをいくつか見つけるかもしれない
父さんが子供の頃聞いたのと同じ鐘の音をお前も聞くだろう

リルケが言った

わが母プラハを 私はその奥まで 心の奥まで知っている
その心はいつもどこまでも深い秘密を隠している
この古い家並みには 多くの秘密が潜んでいるのだ

ところで年寄りの黒猫たちを怖がることはない
あれはただの猫の皮をかぶった、妖怪かもしれないからね
(笑










ストーリー:
嵐で吹き飛ばされて着いた街は、どうやら生まれ育ったプラハ
でもどこを見ても誰もいない












自宅前に着くと南京錠が3つかかっていて鍵がない
家の黒猫がついてきてというように先を行く






2人はどうやら城に向かっている
なにを見ても1つ1つが昔の記憶を生々しく思い出させる







子どもの頃に大好きだった図書館に入る
本でできた図書館員が書棚から出て来て
金の鍵が1つ付いた巻紙を渡す










そこに書かれているのは、子どもの頃に聞いた物語

「ブルンツヴィーク」
カレル橋はプラハ橋とも呼ばれていた
言い伝えでは、皇子ブルンツヴィークの奇蹟の剣が隠されていて
いつの日かボヘミアが滅亡の危機になった時
敵を打ち負かしてくれるという

ブルンツヴィークはいつか自分と母国のためになる
宝物を探して旅に出る

船に乗り、翡翠の山に着く
誰一人生きて帰れぬ山と気づく

巨鳥ノフが騎士の馬の死骸を運び去る
ブルンツヴィークは馬の姿になり運ばれる






ノフは馬を子どもたちに食べさせる
ブルンツヴィークは変装から飛び出して逃げる

竜と獅子が壮烈な闘いをしていて
劣勢の獅子を助けると
それ以来ずっとついてきて
様々な危険な場面で救ってくれる







黒い魔法使いに出会い、獅子がその気をそらし
剣の力を浴びたため、しっぽが2本になる

魔法使いに勝ち、花嫁が現れる

今もなお、ブルンツヴィークと友の獅子は橋の上で見張りに立っている







子どもの頃に遠出して遊んだ庭に着く
そこの花と果物が皇帝となり
やはり金の鍵が付いた巻紙を渡す
そこに書かれた物語を読む












「ゴーレム」
皇帝ルドルフ2世の庇護を受けて
プラハは学芸、錬金術、オカルトの中心地となった

ゴーレム神話は数多いが
最も有名なのは「プラハの賢者」ユダ・レーフ・ベン・ベツァレル師が
プラハのユダヤ人を護るために作ったゴーレムの伝説

プラハのユダヤ人街はゲットーと呼ばれ
一帯が壁に囲まれ、門からしか出られなかった

指導者ラビ・レーフはカバリスト(秘術に通じた人)としても有名で
ユダヤの民の涙と夢からゴーレムを作った






ゴーレムは人々の夢を映し出したが
それを与える力がないと悟り
額にシェム(口にしてはならぬ神の名を刻んだ魔法の石)を据えると
ゲットーに住むみんなに粥を作ってやった

毎週金曜日の日没に、ラビはゴーレムの額からシェムを外して
安息日に働かせないようにした

ところがそれをうっかり忘れて教会へ行った






もっと粥を食べたいと思っていた男の子は
ゴーレムに粥を作れと命じたが止め方を知らないため
粥は外まで溢れた

ラビは民を率いて、ゲットーで一番高い墓地に逃れた






その後、ゴーレムはどこにも見当たらない
教会の屋根裏に隠れているという人もいる


有名な時計台に着く
壁から神話のロボットたちが出て来て
リーダーの男爵が3つ目の鍵を渡す












「ハヌシュ」
カミュ『魂の死』の抜粋

アストロラビウムという素晴らしい天文時計は
地元ではオルロイと呼ばれ、ハヌシュによって作られた

天空での地球、太陽、月の交わり、4つの時間帯を同時に示すことができた






1時間ごとにぜんまいじかけの人形たちが出てくる
「虚栄心」「死神」「けちん坊」「トルコ人」(!)の人形劇
十二使徒が練り歩く

ハヌシュは時計職人にして発明家
タイムマシン、ロボット、アンドロイドなどを作った(!

街の広場の時計制作を依頼すると
機械でありながら、精緻な有機体
ほとんど生き物のよう

みんなに披露され、世界一美しい時計と評される

一部の人が「もし彼が他の町にもっといい時計を作ったら?」と心配し
その夜、覆面の男たちが家に入り、彼の目を潰してしまう(!
ハヌシュは血を流して死ぬ






ある夜、奇妙な機械が時計台に消えていき
機械じかけの目が、心に暗い秘密を抱えた男たちを探し
何もせずただ見ていた人々を探すようになる










僕は思い出す
美しい春の季節
イースターエッグ
子羊の形のケーキ
そして青い、青い空

これからもずっと、たくさんの人がここを通っていくのだろう








いろんな時代に
一瞬の凍りついた永遠の一秒のなかに囚われた
タイムトラベラーのように

僕がそんな日々に永遠の別れを告げた
ずっとまえの日の記憶

もう二度と目にすることはないと思いながら
だれも、なにも、
ぼくを待っていないんじゃないかという気になる







再び家に戻り、3つの鍵で扉を開く






母さんの声が聞こえる
「ピーター 手を洗いなさい もうご飯よ」

「マデリン、さあ、手を洗いにいこう ご飯だよ!」









鍵は保護と用心の象徴
歴史上ずっと訪れる人に
街の鍵を渡すならわしが続いてきた

特別な客には2つの鍵を
とりわけ特別な客には3つの鍵を







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