タイトルに「女性のための」という頭がついているこの本は、温泉教授、松田忠徳氏が書いたものだ。
彼の主張は、新聞、雑誌などで何度か読んで知っていたが、今回、1冊の本にまとまったものを読んだのだが、温泉が身近なものになっているだけに興味が持てた。
彼は、湧出量が多い源泉から引いた湯を、そのまま掛け流し、決して水を加えて薄めたり、塩素を混ぜて成分を換えたりしていない温泉こそが、本来の地球の恵みなのだと言う。
しかし、現在は、あたかもブランド品を売るように、温泉本来の泉質よりは、こ洒落た浴室や客間を作って客引きをする温泉宿が多く、残念だと言っている。
確かに私も今まで多くの温泉に入った経験をしているが、その多くにはプールの様な塩素臭があった事を記憶している。
彼に言わせると、それは温泉ではなかったのだ。
源泉からの取水量が少ない所は、大抵、循環させている。酷い所では、湯船から溢れた湯や洗い場の汚水まで循環させているらしい。その場合、湯の衛生状態を保つためには、塩素で殺菌せざるを得ないのだという。
それなのに、建物が近代的だとか、部屋が綺麗だとか、食事が美味しいというレベルで、私を含めた多くの人が温泉を選んでいる事を嘆いているのだ。
彼は、歴史的にずっと男性の遊び場だった温泉が、今は女性の癒しの場になっている。だから、これからの温泉をリードして行くのは女性の手にかかっているのだと言う。
確かに家族でも友人同士でも、最後に温泉宿の決定権を持つのは女性になってきているかも知れない。
もう一つ、最近大流行の「足湯」についても書かれていた。
足は体の中では汚い部分だ。その足を不特定多数の人間が浸ける湯は、相当汚い湯になっている筈だ。わざわざ「足湯」なんか作らなくても、風呂に足を入れれば足湯はできると言っている。
私は、「足湯」の多くが地域の人達や旅行者への温泉組合のサービスで、ほとんどが無料だから人気があるのだと思う。
先月行った道後温泉にも足湯があったが、大勢の人が訪れる場所だけに、衛生状態がどう保たれているのか気になった。
この本を読んで、これからの私の温泉選びが変わりそうだし、急に本物の温泉に行きたくなった。