政府は福島第一原発の放射能汚染水に溜まった「トリチュウム」などを、ALPS(多核種除去設備)でも除去できないまま海水で薄めて、その『処理水』を海に放流する事を決め、先日8月24日から実行し出した。今後30年間放流する予定だという。
国連機関の「IAEA」は、安全だとしてこれを容認した。
これに対して「中国」の反発は強く、日本からの海産物の全てを「輸入禁止」にするという措置を決定した。また、中国の一般人から日本への非難や嫌がらせ電話が東京電力や予想外の場所にも殺到しているという。
また、国内の漁師や漁業関係者の多くは、海産物の放射能汚染がこの先も起きないのか、風評被害によって海産物が売れなくなると困る、果たして子、孫の代まで漁業を続ける事ができるのか、という不安感を強く抱いていると報じられている。
これに対し政府は、「損害は賠償する。」と言い、予算を計上している。
一方、研究者の一部は長年の放出は、設備の老朽化や予想外の事態を招きかねないとして、政府の対応を非難している。
私自身は消費者の一人として、放流のニュースがでた時から、政府が言うところの「科学的根拠」に不信感を募らせている。
「トリチウム」の半減期は12年と言うが、ALPSで除去できない放射能の中には、分解するための年数がひどく長く掛かるものがあり、海洋でバクテリアやプランクトンなどの微少生物がその汚染水を吸収した場合、その微少生物を餌にして生きている小型魚介類(アジ・鰯・サンマなど)の体内にその物質が入ると、汚染物質はその体内で濃縮される。さらにその小型魚介類を餌とする中型魚介類(マグロ・鰹・ぶりなど)の体内では更に濃度が濃くなり、それを餌とする大型魚類(シャチ・サメなど)の体内ではもっと濃度が濃縮されるという。
こうした放射能汚染物質の「食物連鎖」が起きて生物の体内に長くとどまると、その生物が内部被曝し、癌などを発生する可能性が指摘されている。(ハワイ大学のロバート・リッチモンド教授)
私は、特に魚介類を多食する日本人や東南アジアの人々への今後の影響を危惧している。個々の魚類の遊泳生息海域が不明な物もあることを考えると、日本近海の海洋地域だけが問題だとは言えないだろう。
しかし、政府はこの「食物連鎖」には全く触れず、「国際的な安全基準値以下に薄めるから大丈夫だ。」と言うだけだ。これで政府が言う「科学的根拠」は本当に十分だと言えるのだろうか。
私は今でも、有機水銀などの重金属の濃縮が問題視されているぶりやマグロなどの中型~大型魚は、なるべくたまにしか食べないようにしている。「食物連鎖」によって人間(私)の体内でさらに汚染が進む事が心配だからなのだ。
政府にはもっと漁民や国民の不安な声を聞いて、『処理水』の海洋放出を再検討して欲しいと強く思う。