穴村久の書評ブログ

漫才哲学師(非国家資格)による小説と哲学書の書評ならびに試小説。新連載「失われし時を求めて」

オールド・スポートを頻用する監督の意図

2013-06-21 20:16:02 | 書評
印象的には原作よりかもオールドスポートという台詞が多出すると書いた。

その理由を考えた。トムが聞きとがめたように当時1920年代のアメリカでもOSは聞き慣れない言葉だったようだ。

ギャツビーはイギリス・オックスフォードでおぼえたと言ったらしいが、イギリスでも一般的に通用していたことばかどうか疑わしい。

参戦した兵士に特典として終戦後オックスフォードへの短期留学を認めたのをギャツビーは利用したと言っているが、そこでたまたま耳にしたOSをこれはイギリスの上流階級の若者が使う言葉だとGが思って、はばをきかそうと使ったのだろう。

つまり成り上がり者のGが上流階級の青年ぶるために使ったのだろう。卑賤な出の女がざあます言葉を不自然に真似るように。

これが原作者のフィッツジェラルドの意図だとすると、映画監督もやがて奪冠されるカーニバルの王Gの「成り上がり者の上流ぶりを強調」するためにこの言葉に原作以上にアクセントをおいたのかもしれない。