まずポジション・レポルト 文庫二巻五合目あたり:
この小説を強く押す人がある。一巻目を読んで、あるいは、と思った。
二巻目になり、まもなくだれる。大長編でどこでもだれないというのはなかなか難しい。もちろん他の村上作品でも例外はないが、比較的波が少ないのが彼の特徴であった(私が読んだかぎりでは)。
この作品でダレが目立つというのは逆に「鳴る」ところがかなり高いということの結果ということもある。
この小説はオカルト小説であり、ファンタジー小説である。セックス・マジック小説である。このことは作品の評価に取っては中立的でプラスでもマイナスでもない。
冒頭の話に戻るが、「ボク」が空き家の枯れ井戸に入る所である。非常にまずい、下手である。
一人称小説(ボクの語り)であるから、第三者の長い長いモノローグや手紙で処理するところが多い。三人称小説なら会話や、彼らが視点(ナレイター)になるところをすべて独白でやっつける。
そして一巻ではこの独白部分がいいんだね。それと彼の作品にしては「家族」に触れるところが増えている。主として第三者の独白としてだが。
あるプロの評論家からの「マタ読み」なんだが、最初この小説は1、2巻でおわりだったが、尻切れとんぼなので大分時間をあけて第三巻が発表されたという。村上作品は語りの過程を賞味するもので、どの作品も結末はとってつけたようなものだ。ねじまき鳥もここまで読んだ限りでは「結末」なんてつけるのは難しそうだ。
結末をつけるのは容易だが、程度の高い結末をつけるのは困難だ、という意味である。
突飛ですが、ベートーベンの第九みたいなものだね。結末がつかなくて法華の太鼓みたいなチカチカドンドンのリフレーンが延々と続く。