80ページほどの作品だが脳に障害のある夫を支える女性のモノローグ的記述でほぼ間然とするところなく、一つの心象風景を描き切っている。障碍者の保険と彼女のパート収入に寄生する母と弟のおぞましくも喜劇的な描写は絶品である。
芥川賞受賞作というが受賞作品の内では上位にくるだろう。
この人の作品では小川氏がもっと高い点をつけている作品が二つほどあって、最初はそれを読もうと思ったが、本屋になかった。彼女(ですよね)はあまり売れない作家なのかもしれない。あるいは改版時期の端境期にあるのかも。この作品も奥付をみると2015年1月初版とありあまり売れていないのかもしれない。