「城」ポジションリポート388ページ。カフカの制作態度なんだが、長編では初稿、再稿、まあ最終原稿と普通は行くと思うんだが、特に長編ではね。カフカの長編というと、「失踪者」、「審判」と「城」だと思うが、これはカフカ研究者に聞かないと分からないが、失踪者と審判は、その纏まり方から判断すると、初稿に手を加えていたらしい。城は伝えられている執筆経緯からすると、初稿の行き当たりばったりで中断したらしい。
そう思えば、わかりにくくて当然である。荒唐無稽なのはしょうがない。無理して理屈をつけて感心することは滑稽かもしれない。城は「とりつく島がない」というのが正直な感想だと思うが、それを分かったように自己流に解釈するのはどうかと思う。今日ちとインターネットを浚って感想文を読んだが、えらい肯定的な文章が散見するので驚いた。もっとも専門家ではそう断定的に肯定する人はいないようだ。もっとも訳者は別だ。訳者には訳者の仁義があるだろうからね。
執筆途中で中断した経緯からして、あまり評価できないと思う。カフカの様な作家は粗原稿を彫琢していって完成するのが本来だろうからね。
その理由はこれまでいくつか理由を述べた。どこに問題意識があるのかフレームアップされていない。きわめて平板、冗長、退屈な作品である。