穴村久の書評ブログ

漫才哲学師(非国家資格)による小説と哲学書の書評ならびに試小説。新連載「失われし時を求めて」

警察と仲のいいマーロウ

2013-01-06 07:26:53 | 書評
湖中の女が卓絶して他の作品と隔絶しているのは、マーロウが警察に協力的なことだ。

依頼人の秘密をペラペラと聞かれもしないのに話してしまう。他のマーロウものにはないものだ。

依頼者は警察に頼みたくないから私立探偵に頼む。マーロウは警察から脅迫、暴行を受け、探偵免許の取り消しで脅かされても抵抗すして依頼人の情報を守る。そういう場面がチャンドラーの小説の売りの要素なんだがね。

湖中の女は何から何まで卓絶しておるわい。

一言で言えばマーロウのキャラがたっていない。映画化してもマーロウを画面に登場させられない、カメラアイとして以外には。

話の進め方から、意図的に協力的になっているとの強弁もなりたつが、こういう小説を書くこと自体が、小説そのもののキャラを消していることになる。