穴村久の書評ブログ

漫才哲学師(非国家資格)による小説と哲学書の書評ならびに試小説。新連載「失われし時を求めて」

ハンフリー・ボガード

2010-04-07 09:16:16 | ミステリー書評

三つ数えろ、マルタの鷹、カサブランカとボガードのDVDを三枚持っている。いずれもモノクロだが。

最近、三つ数えろ、とマルタの鷹をもう一度見たので印象を。いずれもミステリーの原作の映画化だ。

三つ数えろ、は邦題でチャンドラーの大いなる眠り(ビッグスリープ)の映画化。この邦題はいただけない。それと原作とはめちゃくちゃに違う。悪いほうに違う。出だしはちょっとキレがあったが、すぐにだれる。これはだめだ。小説はいい。これはマルタの鷹より大分後の作品だが、ボガードの演技も劣化しているようだ。画像ももとのフィルムが大分劣化していたようでDVDでおこした画像もぼけている。それだけ、当時から評価が低くて、フィルムの保存もおろそかになっていたのではないか。

マルタの鷹はダシール・ハメットの同題の映画化。筋は原作に忠実だ。それよりも驚くのは映画として完成している。ある意味では原作以上の傑作ともいえる。原作を読まなくてもこれだけで十分独立している。筋は原作に忠実だがそんなことは関係ない。画像もいまなお鮮明である。

カサブランカ、これは芝居の映画化らしい。再見していないが、記憶では画像も不鮮明で、映画としても並みという印象だったが。物の本によると、この映画は不朽の名作ということになっている。ついでに、カサブランカも再見するつもりなので、感興がわけば、あとでアップするが、どうかな。

三つ数えろ、で驚くのはチャンドラーがよくこの映画を認めたな、ということだ。彼はシナリオライターあるいはシナリオ添削者として数年間ハリウッドとかかわった人間だけになおさら不思議な気がする。彼の作品はほかにも数作映画化されているが今に残る映画はないようだ。彼の小説はもともと映画にならないような個性があるのかもしれない。

それに比べるとハメットは、たしか影なき男だったかな、は芝居(映画?)としても大成功したと言うし、芝居、映画という他メディアとも親近性があるのかもしれない。

ある人によればハメットのセリフが映画向きという(そうとばかりは言えないと思うが)。そうするとチャンドラーは地の文が命ということか。二人の前身にも関係があるようだ。

チャンドラーはシリアスな元詩人、ハメットはメッセンジャー・ボーイから始めた元探偵。