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観客席で思ったこと ~200文字限定のスポーツコラム~
 



<パリ・オリンピック雑感 2024/8/12>
帰国後、案の定、あまりの蒸し暑さに体調を崩し、1日半ほど、ほとんど食事をとれず寝転がっているうちに、パリ・オリンピックが閉幕してしまった。ただ、時差ボケもあり眠れないので、女子ゴルフの山下美夢有の健闘、男女バスケットボール決勝でのフランスの大健闘、そして長く退屈だった閉会式は観ていた。それについては後にするとして、大会全体に対する感想を記しておきたい。
ぼく自身は、国内でも現地でも、競技観戦が主だったため、今大会の「開かれたオリンピック」の特徴であるオリンピアンと市民がふれあうイベントなどは、ほとんど見ていないし、体験していない。そのうえで、報道などを見て素晴らしかったと思うのは、有観客でできたことに加えて、その観客・市民がよりオリンピック・ムーブメントに参加できる、観客・市民が主役になれる場、演出を巧みにつくり上げていたことだ。各競技場でのスタジアムDJ、各所のファンゾーン、オリンピアンと触れ合える「チャンピオンズパーク」、そしてオリンピックコースをオリンピック期間中に走れる「みんなのマラソン」など。特に、「みんなのマラソン」は、男子マラソンが終わった後、その日の夜に同じコースを、10km、フルマラソンに約4万人の一般市民ランナーが走った。そして、その数時間後に、女子マラソンをおこなっている。この大胆な企画と運営能力には驚きとリスペクトしかない。
今大会のもう一つの主役はスマホだった。閉会式会場に入ってきた各国・地域の選手は、みなスマホを掲げていた。メダルセレモニーでは、スタッフが選手にスマホを渡し、自撮りを促していた。それを含めて、選手が撮った、選手しか撮れない画像や動画がSNSにあふれた。観客が撮った画像・映像はニュースよりも臨場感にあふれていた。いずれも、ひと昔前なら、著作権などで大騒ぎになっていたはずだ。また、観客にとっては、スマホは命綱でもあった。観戦チケットはスマホのなかにある。観戦の日まで、あと何日とリマインドが送られてくる。競技場への案内、様々な情報が続々とアプリに更新される。交通機関のチケットも同様だ。スマホが苦手なんて言っている場合ではない。
リアルとデジタルの両面で、これまでのオリンピックから大きな変化をみせたパリ大会だった。クーベルタンが創った「近代オリンピック」は、クーベルタンの後輩によって「シン近代オリンピック」へと、新たなフェーズに入ったといえるのではないか。パリの革命を、ロスがどう引き継ぐのか、興味深い。そして、トーマス・バッハIOC会長の後任(来年3月のIOC総会で決定予定)のリーダーシップにも注目したい。


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