夏の疲れが出る今日この頃。子供たちを合宿に連れて行って、夜は殆ど眠れず、来年は合宿はお断りしたい、朝のコーヒーも飲めない。疲れのピークだ。つらい・・と、思いながら、これって修行かもしれないと思った。
修行が足りませんわ。朝夕少し涼しくなって、布団は暑いし、かといって何も着ないのは足首が冷えるし、ぐっすり眠るには冷え取り靴下が良いような気がした。足首がほっこりするといい具合だ。
娘が、おとうさんにと言って、何枚も買ってくれて、殿は冬中これをはいて寝ていた。寒い時は何枚も重ねていた。
さて、今日は指のある絹の靴下を穿いてみようと指を入れていたら、少し大きめなので、これは殿のだなあと指を最後まで入れたとき、右の小指が何か固いものに触った。靴下の指をひっくりかえしてみると、ぼろぼろの小指の爪が出てきた。爪ごと洗ってしまって気付かなかった。
ずっぽりと、小指全部が取れたようだ。身体だけがぼろぼろではなかったのだ。わたしは泣いた。この頃、忙しくしていて殿のいないことが気にならないほどくたくたになっていた。ここで待っていたのね。物理的にもういない殿の破片がいた。生きていたら「わー、汚い。」とか言ってしまいそうなぼろぼろの爪だ。
愛しくて愛しくて泣けた。その爪を小さな骨壺に加えた。
会社の後輩の〇ちゃんが言った。「人は2回死ぬんだって聞きました。1回はその人の身体がなくなること。もう1回は、その人を思う人がいなくなった時。」
忙しくして、いないことに慣れようとしていた。へろへろになって頭をぼんやりとしたら逃げることができる。そんなふうに麻痺させていると、なんとなく日々が過ぎていく。だからと言って癒されない。
爪は言った。「おまえは、やっぱりつめがあまいなあ。」