◆「カネと土地が動けば、景気が動く」ということは、「カネと土地を動かすことができれば、景気を押し上げることができる」ということを意味している。
これは、いわゆる中曽根康弘首相が、竹下登蔵相(「ポスト中曽根」を担い首相)、金丸信元国土庁長官(後の自民党幹事長。副総裁、副総理)の「3人」と財界人7人」の計10人の仕掛け人がチーム編成して推進して現出させた「バブル経済」が、実証してみせた。
米国レーガン大統領は、日本に「低金利政策を推進するよう」圧力をかけ、これを受けて、中曽根康弘首相は、金融機関に貸し出しを積極的に行うように「尻叩き」した。このため、金融機関は、企業経営者、とくに不動産業者に土地・建物の不動産を担保に、低金利でどんどん融資を行った。
企業経営者、とくに不動産業者は、この資金で、株式や不動産に投資したのである。それに個人は、自分の住んでいる土地付き住宅を担保に、「住活ローン」を組み、貸付け資金を株式や不動産に投じた。この結果、株価が高騰し、地価も高騰し、景気は、史上空前の大活況を呈したのである。
このバブル経済を崩壊させたのは、大蔵省が1990年4月1日に断行した
不動産業者に対する融資をストップする「総量規制」だった。これがあまりにも行き過ぎたために、不況が25年にもわたって続いてしまった。
◆しかし、経済をバブル化させることなく、「カネと土地を動かす」経済運営を上手に行っていくことができるならば、安定した景気政策を推進できるはずである。そのためには、ともかく、「カネと土地を動かす」ことが、先決である。このことに、日本のメガバンクが、ようやく気づいた。
ロイターが6月 7日、三菱UFJフィナンシャル・グループ などメガバンクで住宅ローン金利の引き下げ競争が突然始まったと報じたのである。
やはり、日本銀行の黒田東彦総裁が、「異次元の大胆な金融緩和」を断行していても、この資金が、金融機関止まりで、日本企業の90%以上を占める中小、中堅、零細企業に流れていき、さらに個人にまで浸透していかなければ、経済、景気を押し上げる結果を生み出すことはできない。
この意味で、三菱UFJフィナンシャル・グループ などメガバンクが住宅ローン金利の引き下げ競争を始めたのは、実にいい傾向である。
次なる問題は、中小、中堅、零細企業が、新規事業や新規研究開発、新製品開発にどれだけ「投資マインド」を高めるかだ。それには、何と言っても「潤沢な資金」が必要である。それをメガバンクはじめ、金融機関が、どれだけ支援できるかだ。
◆さらに、あえて言えば、アベノミクスの成長戦略第3弾が、あまりにも、大きな失望感を多くの企業経営者や投資家、あるいは、国民に与えてしまった。それは、この成長戦略第3弾によっても、安倍晋三首相が、これからの「国家ビジョン」と「新国家建設のため基本的な戦略(道筋=工程、手段、方法)を示していなかったことが、原因だった。景気のいい言葉を並べてはいたけれど、具体性がまったくなかったのである。早い話が、口先だけの「アドバルーン」にすぎなかった。ナポレオンがリーダーとは何かについて言った「夢を配る人」にすらなり得ていない。これでは、「アベノミクス」どころか「アベノリスク」であり、危険極まりない経済運営となるのは、確実である。
最大の欠点は、「カネと土地を動かす」役目の黒土交通相に、不適任者が就任していることだ。公明党では、黒土交通官僚を動かすことは不可能だからである。
【参考引用】
ロイターが6月 7日午後5時57分、「〔アングル〕メガバンクで勃発の住宅ローン金利引き下げ競争、きっかけは日銀の貸出支援制度」という見出しをつけて、以下のように配信した。
「 [東京 7日 ロイター] 三菱UFJフィナンシャル・グループ などメガバンクで住宅ローン金利の引き下げ競争が突然始まった。背景にあるのは、日銀による金融緩和策。銀行に対する貸出増加の圧力が高まる中、すでにダンピング競争で採算割れ状態とされる住宅ローン戦線で火の手が上がった格好だ。最初に矢を引いたのは三井住友銀行。今週に入って、固定型3年の住宅ローンの最優遇金利をこれまでの年1.5%から0.6%に引き下げた。この動きに慌てたのが、三菱東京UFJ銀行と、みずほ銀行。6日になってそれぞれ同水準に引き下げる方針を表明した。『当初その計画はなかったが、三井住友の動きに追随せざるを得なかった』と、ライバル行幹部は打ち明ける。三井住友の引き下げ幅は、過去最低水準。それを可能にしたのが、日銀が昨年導入した貸出増加支援制度だ。4半期ごとに国内貸出を増やした銀行に対して、日銀が低利で一定金額を融資する。2013年1―3月が初めての適用となり、三井住友銀は同4半期の貸出が前四半期の2012年10―12月を上回ったため、日銀から0.1%で資金を調達できることになった。今回は、この資金の一部を住宅ローンに充当する。このため、上限1000億円で打ち切る。一方の三菱UFJとみずほの原資は、日銀のヒモ付きではない通常の調達資金。両行とも、上限を期限や金額で区切っており、実質的に住宅ローン10+ 件のキャンペーンとも受け取れる。『リテール戦略の一環。需要喚起につながることを期待する」(三菱UFJ広報)とする。しかし、『通常の調達資金を原資に、この貸出金利だと採算割れは間違いない』(銀行アナリスト)という水準だ。もともと、住宅ローンの世界で、3年固定を選ぶ利用者はごく少数で『数%にも満たない』(銀行関係者)。目先の3年では採算割れに陥ったとしても、その後の長期ローンへの切り替えや、給与振り込み口座の獲得、投資商品販売による手数料収入など、『総合採算』での収益化が銀行の弾くそろばん勘定だ。日銀の異次元緩和は、銀行に対する貸出増のプレッシャーを日増しに強めている。『こういう状態の中で、静観の選択肢はあり得ない』(メガバンク企画部)という本音も垣間見える」※Yahoo!ニュース個人
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