中学校、高校の教員に採用されるためには、厳しい競争を勝ち抜かなければならない。全国で教員採用に強い大学はどこか。「大学ランキング2018」(朝日新聞出版)から、上位大学の顔ぶれと、その特色を紹介する。
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中学校、高校の教員は、専門教科ごとの採用になるので、得意分野を持つ大学が上位にくる。
国語=国学院大、二松学舎大、大東文化大
数学=東京理科大
理科=東京理科大、岡山理科大、東京農業大
英語=関西外国語大、名古屋外国語大、京都外国語大
美術=女子美術大
体育=日本体育大、大阪体育大
一時代、国語教師は国学院大、数学教師といえば東京理科大の出身が多かった。いまでもその伝統は生きている。関西外国語大は最近3年間(2014〜2016年)で小・中学校、高校教員に232人採用された。うち、英語教師が203人いる。
中学校教員は、国立大学の教員養成系単科大学が強い。一方、高校教員は、主要5教科(国語、数学、理科、社会、英語)を教える免許が取れる、人文社会系、自然科学系学部がそろう日本大、早稲田大が強い。
今年8月、文部科学省の有識者会議は、国立大学の教員養成系学部に対し、定員削減や他大学との機能集約、統合の検討を求める報告書案を示した。少子化による公立小・中学校教員の需要半減、をその理由にあげている。
ならば、たとえば首都圏では、千葉大、埼玉大、群馬大、宇都宮大、横浜国立大、茨城大の教育系学部をぜんぶ東京学芸大に集約させるか。または、どこかの キャンパスを借りて「関東教育大」をつくるか。千葉大+茨城大、埼玉大+群馬大+宇都宮大、横浜国立大+東京学芸大とブロックで分けるか――。これらは、 10年前の国立大学再編で提案された例である。
その一方で、私立大学はここ10年のあいだ、教員養成系の学部・学科をたくさんつくって きた。「官」と「民」それぞれ正反対ではあるが、マーケットの論理から教員養成が語られるばかりで、学校現場の実情が大学にフィードバックされていないよ うに思う。たとえば、いま、教師の過重負担が大きな問題になっている。労働時間が長いため毎年のように過労死が報告される、あるいは多忙で疲弊し早期退職 者が増えているなか、ほんとうに「教員の需要半減」と言えるのか、疑問である。
国立大学の教員養成系学部の再編が進めば、このランキングも大きく様変わりするだろう。
※データは大学通信調べ(2016年実績)
(文/教育ジャーナリスト・小林哲夫)
中学校教員志望の受験生は参考にして下さい。