乱の時代(その6)<本澤二郎の「日本の風景」(4476)
<死んでしまったような無様すぎる日本の言論界>
2022年危機は、戦後の日本にとって最悪である。言及するまでもなく、300万人の命が消えた侵略戦争を、二度と繰り返さないと誓って誕生した日本国憲法は、日本のみならず世界の宝物である。核兵器の時代においては「ますます光り輝いてきた」と喝破した自民党きっての名門派閥・宏池会の宮澤喜一。その後継者の岸田文雄内閣は、A級戦犯の岸信介の軍拡改憲の政治路線に突っ込んでいる。これに警鐘を鳴らさない言論界の存在こそが、日本危機そのものであろう。
2022年6月15日に閉幕した国会は、無風も無風で、政府が用意した法案が100%成立した。野党らしい野党が存在しない、それこそ戦前の侵略戦争遂行時の大政翼賛体制そっくりである。現に首相自ら人殺しを目的とする軍事費の倍増を、盟主のようなワシントンに発信するだけではなく、欧州・アジアなどでわめいて、それを評価する国民がいるという不思議な日本!
元凶は、皮肉ではなく日本のマスメディア・言論界が死んでしまって、正論を吐こうとしない、正に新聞テレビの成果なのだ。物事を言論界の報道で判断する多くの日本国民は、結果的に再び戦争国家へとのめり込むことを容認していることになろう。ドイツのナチスがワイマールの平和体制を崩壊させたナチズム体制下、侵略戦争を強行したサマを見る思いなのだ。それでも自民党内からナショナリスト・原子力ムラからの叫び声ばかりが聞こえてきている。「乱の時代」の恐怖に、敏感的確に反応しない日本社会でもある。
<世界不況+コロナ不況+戦争不況+円安物価高=政府支持上昇>
昨夜も、7月10日に実施される国政選挙である参院選挙を前提にしたコメントを求められた。唯一権力に屈しない新聞である日刊ゲンダイのS記者が「どうして内閣の支持率、自民党の支持率が下がらないのか。圧勝するような政府与党支持なのか」と質問してきた。
要するに、民主主義が全く機能しなくなってしまった日本社会について、S記者は危機感を覚えて質問してきた。筆者からすると、実に当たり前の取材なのだが、他の新聞テレビは全く違う。読売新聞どころか、公共放送であるNHKは英国のBBCに相当するメディアだが、現実は「読売化」して恥じない。労働組合もあるのに、不思議なことである。国粋主義に徹する危うい政府と与野党にブレーキを踏もうとしない。
NHKは国民からカネをほぼ強制的に集めて、優雅すぎる報道資源を駆使しているのだが、それでも責任を果たそうとしない。もう大分前になるが、息子が運んできた大型の液晶テレビを廃品業者に贈呈した。最近は駐車中の愛車・スズキ車を、外国人廃品業者が「くれませんか」と声をかけてくる。仰天するしかない。以前からずっと購読してきた朝日新聞をやめた。朝日も反権力新聞をやめてしまい、読売化してしまった。
現在の日本を世界大不況が襲い、続くコロナ疫病で経済活動は止まってしまった。それでもフクシマ放射能隠しの4兆円賭博五輪の強行で大金を失った。そこでバイデン戦争が始まった。バイデン父子のウクライナ攻略は、副大統領時代からであることも分かってきた。ウクライナの生物兵器研究所を米国防総省が支援していたことも。
友人は今図書館から借りてきたジョン・ダワー「戦争の文化」を読んでいる。日米戦争が起きる以前に「日本占領」の図面を準備していたワシントンに驚愕していた。筆者はまだ読んでいない。拙著「アメリカの大警告」(データハウス)は、読売新聞の改憲案とワシントンの因果関係を追及したものだが、友人から「図書館にない」との連絡が入った。
アベノミクスによる超円安路線の日銀・黒田東彦総裁を連日、こき下ろす元自民党本部職員から、今朝も電話があった。悪は何枚もの防護服を着る。個人情報だけではない。特定秘密保護法だけでもない。新たに侮辱罪の厳罰も。「戦前の治安維持法レベル。言葉に注意するように」と指摘すると、彼は「いつでも豚箱に入る覚悟がある。黒田や安倍だけではない。国権の最高機関の長・細田のスキャンダルは前代未聞。それでも議長席をおりない。それを退治しようとしない新聞テレビも崩壊している」と激しい口調をやめない。
<「権力に屈するな」「岸政治に妥協するな」の宇都宮徳馬さん>
昨日久しぶりに声を聞いた東京・多摩地区の公団住宅に住むM子さんは、毎日blogを見てくれる。その都度、ほめてくれる。理由は「歯切れがいい」と。しかし、侮辱罪で狙われると逃げることも出来ない。安倍のように気楽に嘘をついたり、身軽にプーチンと会ったりすることが出来ない。
言論の自由を封じ込める日本など全く想定しなかった反骨ジャーナリストも打つ手なしだ。困ったものだ。
朝起きると、耳元で恩師・宇都宮徳馬さんの声が聞こえてくる。「権力に屈するな。悪しき権力に屈するな」と。彼に仲人をしてもらい、保証人にもなってもらい読売新聞に入社した渡辺恒雄氏も、老いると昔を思い出しているだろう。
<近現代史を教えない戦後教育+国策電通に支配される新聞テレビ>
多少とも歴史や日本国憲法を知る者にとって、直感的に2022年は最悪の年であることが分かる。しかし、現役の新聞人や大学を出たばかりのテレビ記者は、我々とは違うだろう。単純にウクライナのゼレンスキーを善人と評価して、報道している。「戦争は悪だ。双方とも悪魔だ。背後で糸を引く真犯人も」とは決して思わないだろう。
歴史、特に近現代史を知らない若者や憲法を学んでいない記者は、今の日本危機について寛容なのであろう。ナショナリズムの潮流に身を任せ、中にはのめり込んでしまっているのであろうか。戦前の治安維持法のような法体系にも、気付かないのかもしれない。
反骨の言論人出でよ!と繰り返し声を上げるしかない。
2022年6月16日記(東芝製品・サントリー・トヨタ不買運動の会代表・政治評論家・日本記者クラブ会員)
<button id="article-clap-button">拍手する
</button>
2
コメントを書く