5/29(土) 14:21カンテレ「報道ランナー」
第4波で重症患者が「病床数を上回る事態」に
新型コロナウイルスの感染拡大第4波で、大阪府では、重症患者が確保した重症病床を超える初めての事態に陥りました。
【動画で見る】大阪の医療危機なぜ?キーパーソンが語る「実情」
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取材をすると大阪のコロナ対策のある誤算が見えてきました。
【大阪府・吉村洋文知事】
「今これだけ病床がひっ迫している中で感染が再拡大すれば対応できない状況になってきます。そうなってからでは遅い」
緊急事態宣言の再延長を国に要請した大阪府。
背景には、苦い経験があります。
新型コロナウイルス感染拡大の第3波のピークが過ぎた今年2月時点で、大阪府が確保していた重症病床は、224床。
しかし、その翌月から始まった第4波で初めて確保していた病床を重症患者が上回る事態になったのです。
かつてない医療危機は、なぜ起きたのか。
大阪府のコロナ対策のキーパーソンである健康医療部の藤井部長に話を聞きました。
想定以上に膨らんだ「重症患者」
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【大阪府健康医療部・藤井睦子部長】
「400人を上回る重症患者が発生する想定をしていなかったのかと言われれば、それは想定していなかった」
大阪府では、コロナ患者の症状によって受け入れる病院を分ける方針を取りました。
重症の患者を治療するのは、高度な医療に対応する設備がある大学病院など。
中等症の患者は、呼吸器内科などがあるなど、地域の比較的大きな病院。
軽症や無症状で、基礎疾患がない人などは、ホテルや自宅で療養してもらうことにしました。
しかし、重症病床がいっぱいになったことで、影響は全体へと広がっていったのです。
この時に、重症患者を受け入れていた病院は、どうなっていたのか。
第4波は…重症化のスピードが速い
大阪医科薬科大学病院。
人工呼吸器や人工心肺装置・ECMOでの治療が必要な重症患者を受け入れています。
4月、大阪府からの緊急要請を受け、10床から14床に増やしましたが、ベッドは常に埋まり、空けばすぐに別の患者が入ってくる状態でした。
第4波では、これまでとは明らかに違う点がありました。
【大阪医科薬科大学病院・南敏明病院長】
「重症化のスピードが速い。いったん重症化したら1~3波に比べて非常に治るのに時間がかかる」
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症状が回復するのに時間がかかり、病床をなかなか空けることができなかったと言います。
さらに、変異ウイルスは重症化するスピードが早く、自宅で入院を待っている間に症状が悪化した患者が、次々と運ばれてきました。
【南 病院長】
「今まである程度中等症の病院で輸液されて、それでも肺炎が良くならないという形で運ばれてきたというのでなくて、来た時からさらにワンランク進んだ重症な状態でくる患者も多い」
早めに入院し、適切な処置を受ければ、重症化を防げる可能性が高まりますが、一体なぜ、できなかったのか。
4月22日時点で、大阪府では軽症・中等症患者に確保している1798の病床に対して入院していた患者は1436人。
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なぜか2割にあたる300床以上が空いていました。
病床に余裕あっても…人員が不足
堺市の耳原総合病院。
軽症や中等症の患者のみ20人ほどを受け入れていました。
しかし、大阪府は、重症病床がいっぱいになったため、患者が重症化しても転院させずに、治療を継続するように要請します。
【看護師】
「酸素ボンベもらっていいですか?」
【看護師】
「サーチ(酸素飽和度)いくつですか?」
【看護師】
「90!」
重症化した患者は、病院の集中治療室ICUで治療を継続しましたが、中等症患者の4倍ほど看護師が必要でした。
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重症化した患者の治療を続けた結果、人手が不足し、中等症病院も患者を受け入れることができなくなったのです。
――Q:中等症の病床は実際に(大阪府が)発表していた病床数よりも、実数は少なくなっていた?
【大阪府健康医療部・藤井睦子部長】
「はい、そういう認識です。中等症患者を1人とってもらうのと、重症患者を1人治療継続してもらうのは、そこにかかるマンパワーが全く違うので、多くの中等症病床が運用できなくなることが起こっていた」
感染者のうち、入院できた人の割合は、4月27日時点で、全国最低の10.5%まで低下。
自宅で療養している人は、最大で1万8000人を超えました。
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【藤井部長】
「結果として入院していただける患者の割合が非常に低くなってしまったということで、早期に治療していただくことで重症化を防ぐ循環を生むのが、本来は重要だった」
病床運用での「新たな構想」も
重症化を防ぐアプローチが足りなかったと説明した藤井部長。
今後どのような備えが必要かはこれから協議すると話しながらも、中等症から重症まで一体で治療する病院を増やす構想を明らかにしました。
【藤井部長】
「中等症までしか診れませんという病院になると、そこで挿管対応が必要かというのは重症病院での判断になる。重症病院に転院してもらったが結果として挿管せずに治療が可能だったという事例もある。そこが同じ院内だったら連携して一体的に運用していただけるということで今後重要な機能になると思っている」
ただ、大きな病院にさらなる負担がかかるため、どこまで協力を得ることができるのか、そして、どこまで病床を増やすことができるのか、まだ見えていません。
これまでの教訓を生かすためには、多くの課題をクリアする必要があります。
カンテレ