ジジ・グライスとドナルド・バードによる双頭コンボ”ジャズ・ラブ”については、過去にも何度か取り上げました(コロンビア盤「ジャズ・ラブ」、RCA盤「ニュー・フォーミュラズ・フロム・ザ・ジャズ・ラブ」)。クインテットは他にも4つの作品を様々なレーベルに残していますが、今日ご紹介するのは1957年2月27日と3月7日に吹き込まれたリヴァーサイド盤です。ここではジジ・グライスが単独リーダーになっていますが、バードももちろん参加しています(ジャケット写真右上)。他のメンバーもついでにジャケ写で紹介すると、左上のダンディな髭の御仁がアート・テイラー(ドラム)、左下の眼鏡くんがウェンデル・マーシャル(ベース)、右下がウェイド・レギー(ピアノ)、中央はもちろんジジです。
全6曲。スタンダードが2曲、メンバーのオリジナルが4曲です。ジャズ・ラブのラブはLoveではなく、Lab(実験室)のことですが、だからと言って小難しい実験音楽を演奏するわけではなく、基本的にハードバップです。ただ、1曲目のスタンダード”Love For Sale”は少しひねりを加えており、冒頭のテーマをゆったりアンサンブルで奏でた後、転調してジジとバード、レギーが急速調のアドリブを繰り広げ、さらにテイラーの長尺のドラムソロを挟んで、最後に再びテーマアンサンブルという展開です。2曲目”Geraldine”はレギー作のバラードですが、一風変わったミンガス風のメロディです。3曲目”Minority”は作曲家ジジの代表作で後にビル・エヴァンスやキャノンボール・アダレイも取り上げた名曲です。本作が初出ではありませんが(初演はクリフォード・ブラウンの「パリ・セッション」)、ここでの演奏も見事です。4曲名”Zing! Went The Strings Of My Heart”は演奏される機会はあまり多くありませんか、魅力的な旋律を持つスタンダード曲で、ここでも軽快なハードバップに仕上がっています。5曲目"Straight Ahead"とラストの"Wake Up!" はどちらもジジ作で前者はブルース、後者は軽快なバップです。パーカー直系のアルトを聞かせるグライス、ブリリアントなバードのトランペットはもちろんですが、録音の少ない夭折のピアニスト、ウェイド・レギーも存在感を発揮しています。