ハードバピッシュ&アレグロな日々

CD(主にジャズ・クラシック)の感想を書き留めます

ドナルド・バード&ペッパー・アダムス/アウト・オヴ・ジス・ワールド

2024-04-22 20:47:58 | ジャズ(ハードバップ)

本日はドナルド・バードとペッパー・アダムスの双頭クインテットによるウォーリック盤をご紹介します。以前ブルーノート盤「アット・ザ・ハーフノート・カフェ」でも取り上げましたがバードとアダムスは同じデトロイト出身と言うこともあって仲が良く、共演作は10枚を超えます。特に1958年から1961年にかけては双頭コンボを結成し、多くの名盤を残しました。ただ、本作については発売元がウォーリックと言うマイナーレーベルなために長らく廃盤となっており、知る人ぞ知る作品となっています。ただ、内容は充実しています。特筆すべきは本作があのハービー・ハンコックのレコーディング・デビュー作と言うこと。シカゴ出身のハンコックはこの時弱冠20歳。バードにその才能を見出され、デューク・ピアソンの後任としてコンボに加わりました。バード、アダムス、ハンコック以外のメンバーはレイモン・ジャクソン(ベース)、ジミー・コブ(ドラム)です。

内容ですが1961年3月という時代背景もあり、ハードバップを基本フォーマットとしながらも60年代らしい空気感も感じさせます。違いを生み出しているのはやはりハービー・ハンコック。透明感のある洗練されたピアノはそれまでのバップ期のピアニストとは一線を画しています。収録曲ですがタイトル曲の”Out Of This World”や”I'm An Old Cowhand”と言った有名スタンダードも悪くないですが、私がおススメするのは”Theme From Mr. Lucky"と”It's A Beautiful Evening"の2曲。どちらも当時の流行曲でいわゆる定番スタンダードではありません。前者は「ミスター・ラッキー」というテレビドラマの主題歌で、映画音楽の巨匠ヘンリー・マンシーニの作品。ドライブ感溢れる演奏でバードとアダムズが快調にブロウした後、ハンコックがシャープなソロを聴かせてくれます。後者はナット・キング・コールが前年に発表した「ワイルド・イズ・ラヴ」に収録されていた美しいバラード。ここではアダムスの代わりにヴァイブのテディ・チャールズが参加。バードの美しいトランペットの音色とハンコックのたゆたうようなピアノソロが聴く者を夢見心地にさせてくれます。それ以外ではバードの自作曲である叙情的な"Bird House"や熱きファンキージャズ"Curro's"も良いです。ブルーノート等と違って録音があまり良くない(ややくぐもった音がする)のが玉にキズですが、内容は文句なしの名盤と思います。

 

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